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燕子花を観てたら「マティス 自由なフォルム」に行きたくなった
みずみずしく光る緑のなかで、一層目を惹く紫。
先週、根津美術館にて庭園の燕子花とあの金屏風を駆け込み鑑賞したことから、一連の鑑賞がはじまった。
「リズム」をちょっぴり理解
根津美術館には初訪問。毎年この燕子花の屏風の会期に間に合わず残念な思いをしていたのだが、職場の上司が「あれは行ったほうがいい!」と何度も言っていたので、今年こそはと訪問日のスケジュールを死守した。
会期終了間近ということもあり、会場は密。ただ、客層が非常に良く来場者同士が互いを気遣っていたためか、満足いくまで滞在できた。
やっと尾形光琳の《燕子花図屏風》の前に立ったとき、琳派がどういうものか説明もできないのに圧倒され、近づいたり離れたりとしばらくとどまった。
《梅図刀掛》などほかの作品にも、モチーフ同士の配置だったり、繰り返されたりすることによって生まれる「リズム」の心地よさがあった。
というか、「リズム」があると言葉にするのは難しいが、やっと腹落ちしたような気がした。
ガラスケースの向こうの襖や掛軸に咲く花々を眺めていると、なんとなく次に行きたい展覧会が想起されたりもして。
ミュージアムショップのポストカードは、この日の気づきを忘れたくなくて燕子花図の「部分」を購入した。
なんでこんな需要にぴったり当てはまる素敵なポストカードを販売にピックアップできるんだろうか。
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加えて訪問当日は清々しい五月晴れ。庭園の燕子花が池に映り込んで揺れる様子や、帰りに改めて目を留めた根津美術館のロゴの「リズム」も、より味わい深かった。
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そしてマティスへ
なんの因果か、尾形光琳のおかげで鑑賞欲が抑えられなくなったのは、「マティス展」である。
燕子花を観た翌週、国立新美術館で開催中の「マティス 自由なフォルム」へ。
昨年東京都美術館の「マティス展」で彼の作品を拝んでから、おおよそ1年ぶりの再会だった。
そのときには《金魚鉢のある室内》などの油彩画に目が行き、切り絵は正直そこまで理解が及ばなかったのだが、今回はむしろ切り絵が目当て。
尾形光琳の燕子花や梅に通じるものがあるはずだ。前回のもやんとした記憶を塗り替え、何か新しい感覚を得たい。
こちらも当日は混んでいたが、人が流れるところと滞留するところが明確だった。そのため、鑑賞順序を調整するなどしてひとつひとつの作品をちゃんとセンターで観ることはできた。
《ダンス、灰色と青色と薔薇色のための習作》は、全ての動きが繋がっているような感覚。
楽しみにしていた《ジャズ》ではしなやかさ、躍動感に加えて、やはり色彩に元気づけられる。思い返せば、2023年のマティス展のサブタイトルは”The Path to Color”だったっけ、、、。
《ポリネシア、海》は2種の青と類似のモチーフから、海の動きを感じられた。
平面的な図柄のなかには、どれも「動き」が、「リズム」があったのだ。
最後はロザリオ礼拝堂の再現。
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絶え間なく形を変えて動き続ける色と光に魅入っている人が(私も含め)たくさんいた。この変化を擬似体感できる展示があったのは良かった。
つながる鑑賞体験
当初は自分のなかで全く無関係だった展覧会が、なんとなくの思いつきから、ちょっとした発見や「好き」の拡大にもつながった。
また、マティスについて調べているうちにこんな組曲も発見。
もっと色んな鑑賞にチャレンジしたいな。