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食パンの耳


世の中にはなぜか必要とされていないようなものがある。別にこれと言って嫌われているわけでは無いが、大好きだという人が少ないようなものが存在している。

例えば食パンの耳だ。
そもそもどうして食パンの耳は耳というのか。

朝食のトーストにブルーベリージャムを塗りながら思った。

とにかく、食パンの耳が大好きだという人を聞いたことがあるだろうか?
大好きだという人がいたら教えて欲しい。

そんな食パンの耳に私は愛着がある。大好きではないが、食パンの耳には母の優しさを感じるのだ。

幼い頃、友人と公園で遊んでいると母親がおやつだと言って何かをもってきた。
喜んで近づくとそれは食パンの耳を揚げて砂糖をまぶしたものだった。

今考えるとカロリーが恐ろしいが、当時は食感が病みつきになりバクバク食べていた。

あまりものを無駄にしないようにする母のモットーが、そこに表されていた。
食パンの耳も嬉しかっただろうな。

だから食パンの耳を見るとたまに、その時の母の表情を思い出す。
母は他人にも優しい人で、街中で困っている人がいるとすぐに手を差し伸べるような人だ。今まで出会った人の中で母より優しい人は見たことがない。

そんな母の優しさに甘えて、あたってしまったりする自分に呆れることが多々ある。

そんな時は、あの日公園に食パンの耳のおやつをもってきてくれた母の表情を思い出そうと思う。

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