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話し方が9割、さればこそ怪談ライブへ
話し方を気にしたことはありますか。友人が仲違いした時のエピソードなどを聞きながら、「それは話し方が良くなかったんだなあ、言っていることの印象は悪くないのに」と思う時は、多々ある。
そういう時は、「もう少し別の言い方をしていれば問題にならなかったのに」「こっちの言葉を強調しておけば角が立たないのに」なんて、つい仕事柄か言葉の使い方や話し方を検討してしまうことも。
同じ内容でも言葉選びや言い方が、相手をイラつかせる「まきびし」になってしまう。そう考えると、いつも自分の振る舞いが無遠慮でないか、行きすぎていないか、とおそろしくなる。話し方が9割、なんて本、たくさんあるんじゃないかな。
先日、初めて怪談ライブを聴きに行った。怖い話を話すプロの方は怪談師と呼ぶ。子供の頃の絵本読み聞かせのように、次々と怖い話ばかりをするのが、怪談ライブだ。
怪談を聴き始めたのは、仕事中の作業用BGMを探していたときにyou tubeでたまたま流れてきたのがきっかけだった。この作業用BGMをなんにするか、というのが、私の場合は仕事のモチベーション、ひいては出来栄えに大きく影響する。
集中したい時は無音なのだが、疲れ始めていたり集中しなければいけないのにできなかったりするときは、ジブリのピアノバージョン(切羽詰まっているときに聞く音楽なので、歯医者などで流れているとドキッとする)、通常の作業の時はKPOPなどなど。
流し聞くためになるべく日本語ではない音楽を選んでいたんだけれども、ある時、どうにかこうにか今日中にやり切らなければいけない作業があった。
でも椅子に座っているのも辛いくらい気が向いてこない。そこで、面白い話を聞きながら作業をしたら気がまぎれるのではないかと思いついた。
作業も話を聞くのも、全部中途半端になるのではないか?という正しすぎるご指摘は傍に置いておく。これは、作業が辛いけれども絶対にやり切らないといけない時に生み出した、とりあえず椅子に座ってパソコンに向かって見るための強硬策なんである。そして、怪談を作業用BGMにするのはどうだろう?と思い立った。
you tubeのおすすめのままに色々きいていた中で、これは!とビビッときた怪談師の方がいた。深津さくらさんだ。深津さんは、個人のyou tubeチャンネルこそ開設されてはいないのだけれど、色々なチャンネルに出演されていた。
なんと言っても声がやさしく、おっとりされていて、そしてとてもこわい。深津さんの怪談の中で、「ゴリラ」というお話が特に素晴らしいので、ぜひきいてみてほしい。
そして、これまで声だけでしか知らなかった深津さんが怪談ライブをやるらしいということで、夏休み気分(休暇はないので、本当に気分だけ)も手伝って勇気を出して行ってみた。
静岡PARCOで開かれた怪談ライブでは、深津さんが所属する「おばけ座」のワダさん、伊勢海若さん、チビル松村さんの怪談も聞くことができた。
それが、これまでyou tubeで見聞きしていたのとは、全然感じられ方が違うんである。こわい、とか、面白いとか感じる前に鳥肌が立つ場面がいくつもあった。
そして改めて、深津さんの語り口に惚れ惚れとした。
怪談ライブを拝見してから、次のインタビューでは深津さんみたいにしゃべってみたらどうだろう、と妄想する日々だ。マイナスイオンが出ている感じるの、あのお話しの仕方。インタビュー現場で応用できたら無双できる気がする。
時間と進行の舵取りに追われて、毎度毎度、もういい加減慣れただろうという今でさえも、ワタワタしてしまう自分。もし深津さんみたいに話せるようになったら、きっともう少し、ゆとりを持って進行できる気がするし、現場のみなさんにもマイナスイオンを供給できるに違いない。
殺伐としがちなインタビュー現場だからこそ、ゆったりしていて、それでいてわかりやすい、深津さんみたいな話し方ができたら。
植物とか、水辺を見ているときのような、落ち着いた気分になるんである、深津さんの語りは。言葉のうつくしさとこわさと、語るひとの技術というのを体感した1日だった。ああ、早く深津さんのように話せるひとになりたい。