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宇多田ヒカル|ライブレポート

9月1日、Kアリーナで宇多田ヒカルのツアー「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024」の最終公演を見に行った。

あの空間に居合わせた自分は、これから最高の9月、いや、最高の2024年を駆け抜けられるんじゃないかという気がする。
大きな、大きな大きなお守りをもらったような気分のまま、この文章を書いている。

今回のライブは、前回のツアー「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」とは、まったく雰囲気が異なっていた。
セットの感じも、最初の始まり方も、衣装も、本人の様子も、おそらく来場していたみなさんの様子も、ほんとうに何もかも。

みなさんはどう思いましたか?

曲間のMCでは、「今回のライブは本当に楽しめている。友人からも自然体な感じがすると言われた」とお話しされていた。
まるで祝祭のように朗らかな雰囲気が会場全体に溢れていた。

だとすると、私たちは何を祝っていたんだろう。
宇多田ヒカルとその作品を中心に、ライブに集った全員が年月を重ねてこられたこと、今ここにいること、今に至るまでに色々なことを乗り越えられたこと、生き抜いたこと。

過去と未来と今がぜんぶ同じ空間あつまって一人のひととして存在しているんだ、っていうことをひしひしと感じられるような二時間半だった。

帰りに車の中でプレイリストを再生してみると、比較的古い曲の録音時とは歌い方が変わっていることを改めて実感する。
ライブ中の、「あれ、いつも聴いてる音源とは違うぞ」という違和感の正体は、力強さだった。

今回のライブでは、ほんとうに力強く歌い上げられていた。昔の、少年のような軟い声ではなくて、力強くて深みのある声。

月日の流れを感じながら、年を重ねるのはなんてすごいんだろうと涙が出た。良いも悪いもなくて、ただ凄味があるんだった。これだからひとが歌い、作り、生きる意味があるんだと思った。

最近、自分が老いていくのがこわかった。「できることは減っていく、一方で経験は増えていくはず、どうやったらパフォーマンスを落とせずにいられるんだろう」みたいなことをしくしく考えていた。
だけど、本当に恐かったのは、自分が今とは違うものに変化すること、それ自体だったんだと気づいた。

だって、宇多田ヒカルを見てすごく安心したから。
ひとってすごく変化する、思っていることも見た目も身体的な能力も、変わる。時の流れは、そういった変化の一部でしかないんじゃないだろうか。

時間の流れ以外にも、経験することでもひとは変わるし、経験しなかったことでも、きっと変わっている。
そういった変化を受けつづけること、観察し続けることって、なんだか楽しくもあるんだと思えた。

まるでお花のようなドレスを着ていた彼女。七色の色彩をまとって、見る角度によって表情がころころ変わって。

前回のライブからの6年間を早回しで思い出すようなライブだった。宇多田ヒカルが変わらずにいるからこそ、また会えたからこそ、安心して色々な感情に浸れる贅沢なライブだった。

踊っていない時は泣いて、泣いていない時には笑っていた。あの時間自体が、居合わせたひとたちを浄化しているんでは、と思えるような、特別なひと時があったことを忘れずにいたい。

今回のライブでは、前回一緒にライブに行った友達と、また、宇多田ヒカルのライブが見られた。6年前19歳だった私たちは、25歳になった。これから先はどんな時間を過ごそうか。
宇多田ヒカルにも、またいつか会えたらうれしいな!


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