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ゲームでしか得られない感動があると主張する一方で、自己紹介で趣味がゲームと告げる難しさについて

「趣味はなんですか」って聞かれた時に、ゲームですって答えるのはなかなか勇気がいる。
思えば私はさりげなくそれを隠して生きてきた。趣味なんて無難に答えておけばいいと思っていた。
でも新しく入った職場の人たちが良い人そうだったので、私は勇気を出して清水の舞台から飛び降りてみたのだ。

「ゲームです。ゲームやって泣いたり笑ったりしています」
すると女性の上司が、嬉しそうに答えてくれた。
「私もゲーム好きだよ!ドラクエが好きなんだ~」
「!!」
同志がいる!勇気を出して良かった!
私はギアを素早く入れ替え、間髪開けずに聞いた。
「そうなんですね!ビアンカ派ですか?フローラ派ですか?」

国民的ゲームのドラゴンクエストは長寿シリーズで、今はⅪまで発売されているが、シリーズの中で一番有名だと言えるのがドラゴンクエストⅤ天空の花嫁だと思う。
当時皆がびっくりしたシステム「結婚」が取り入れられているのが特徴で、幼馴染のビアンカと、ぽっと出のお嬢様フローラのどちらかと結婚できるのだが、私は断然ビアンカ派で、結婚した後に旦那がフローラ派だと知った時は卒倒しそうになった。
つまりビアンカ派かフローラ派かという問いは、ドラクエファンなら基礎中の基礎。私としてはジョブくらいのパンチのつもりだった。この質問から相手がヘビーゲーマーかライトゲーマーか、徐々に見分けて行こうという作戦である。

「???あ~ごめん、わかんないや!」
「?!!!!!」
衝撃だった。

私は今まで大した知識もないくせに、ゲーマーなんて名乗るのはおこがましいと思っていた。ガッチマンさん(私が好きなYoutuber)くらいの玄人じゃないと、ゲーマーなんて名乗ってはいけないと思っていた。
それなのに結婚システムも知らない分際で、ドラクエ好きと口にするお前って一体?
話を聞くと、彼女はドラクエⅩ、つまりオンラインのドラゴンクエストをメインにやっているらしく、シリーズ物は知らないということだったが、カウンターパンチくらいのショックを私は受けた。

このように同じタイトルゲームでも、プレイしている種類によって溝は深い。
一口にゲームと言っても、多種多様であるうえ、最近は基本プレイ無料で課金によって収益を得ているゲームが幅を利かせており、スマホで簡単にいつでもどこでもプレイできたりする。そうなるともはやシステム上別物である。

趣味がゲームと言うと、こんなことを言われたこともある。
「真面目そうなのに意外ね」
どういう意味だろうか?私は真面目だが、真面目はゲームをしないとでも言うのだろうか。
ゲームをプレイする人間は、自堕落かつ不真面。仕事も行かずトイレも行かず、ペットボトルにおしっこしてるとでも言うのだろうか。

良い子はゲームをしてはいけない。
ゲームは不良のもと。
そういう時代は確かにあったと思う。最近ではゲーム依存なんてのも問題になっている。
でもアルコールも少量なら体にいいが、飲みすぎれば毒であり、依存症に陥れば最悪死が待っている。
結局は受け取り側の問題なのだ。

ゲームは悪くない。
アルコールも悪くない。
ただ、心に問題があって、上手に遊べなかっただけだ。

ゲームでしか得られない感動がある。
これはゲーム会社に勤めていた友人の元カレが言った言葉だが、私も大きく同意する。

私を含め、大多数の人は、小さな枠組みの中でしか生きられない。毎日仕事に行って、ご飯を作って食べ、眠ってまた起きて仕事に行く。
でもゲームはその枠組みを大きく超えた体験ができる。本を読むのとも映画を見るのとも違う。
圧倒的に「体験」なのだ。

ライフイズストレンジは、時間を巻き戻す能力が突然宿った女子高生の話である。
時間が戻せれば、何だってできる。話している最中でも、何度も巻き戻して会話のパターンを試せるし、事故に遭うはずだった人も救える。
もしあの時○○だったらなぁと思うことが誰だって一つや二つあるだろう。このゲームは自分の手でそれを試せるのだ。でも時間を巻き戻してやり直していくうち、主人公は思いもしない未来へと辿り着いてしまう。
私は呆然とした。
過去の不幸な出来事に固執していても、何にもならないのだ。
どんな格言を聞くより、私は身をもって体感して知った。実際に時間を巻き戻してみないとわからなかったと思う。
私が、私として生きている限り、出来ない経験を私はゲームで体験してきた。

だから、私は勇気をもって自己紹介で「趣味はゲームです」と言いたい。
同じゲーム好きでも分かり合えるとは限らないが、第一歩なのではないかと思うのだ。

ただこんな私でも採用活動では「趣味は読書です」と言ってしまった。
反省している。
ちょっとまだそこまでは、ゲームが持つ力を布教しきれていないのである。

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