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巡る春に想いを寄せて

いつもの待ち合わせのベンチ

少しだけ早めに来て君を待つ

桜並木をゆっくりと歩いてくる君をファインダー越しに眺めたいから

遅くなってごめん!と謝る君に私も今来たところだよと笑ってシャッターを何度も切る

ファインダー越しに眺める君は少し不満顔

舞い落ちる桜の花びらが君の髪を飾って神秘的だから またシャッターを切る

もう撮らないでって言いながら手でバツを作って撮影禁止にされるまで君を撮っていたのも今となっては懐かしい想い出

あの頃の私は君の事が好きすぎてカメラを構えていないと平静が保てなかったんだよ

今は想い出が沢山詰まったベンチにひとり

桜舞う景色をファインダー越しに切り取っている

愛してやまない被写体を失っても

桜は美しいから私はカメラを構える

美しく儚い桜が涙を誘うから

ファインダーが霞んでシャッターが切れない

今だけは幼い恋を想って涙するのだ

そのうち桜を見ても君がいる景色を想い出さなくなるのだろう

フィルムに収めたふたりの春の景色は永遠を刻むけれど

愛しい君の声や仕草を少しずつ忘れて

君への想いも時が消し去っていくのだ

あの春景色笑いあったふたりが空に溶けていくを眺めながら

私は笑って手を振った

さよなら幼い私の恋心

もう君に逢いたいなんて想わずに私は前を向いて歩いていくよ

さよなら君を大好きだった私

もう過去は振り返らない

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