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恋がしたくないわけじゃない 第4話 シャンパンで乾杯
「失礼します。
珈琲お持ちしました」
「沙奈有難う。
ランチの予約どこだった?」
「タベルナでしたよ、麻希さんのお気に入りの…」
「そう、それなら個室を6人で予約してランチビュッフェのアルコール有りのコースにして、別でシャンパンとケーキも頼んどいて。
勿論、翔馬君には内緒でね。
今日はお祝いだから飲むわよ!
みんなに仕事は午前中で終わらせるように伝えといて!」
麻希は、パソコンのキーボードを高速で打ちながら合間に珈琲を飲み幸せそうに微笑んでいる。
「翔馬君に聞かれると不味いので、ここで電話しますね!」
沙奈は、満足そうに珈琲を飲む麻希を眺めながらタベルナに電話をかけた。
「13時に6人で予約した海堂ですが個室空いてますか?
はい、大人6人です。
それと、ランチビュッフェのアルコールドリンク付き2時間コースに変更してもらいたいのですが…
メインはお肉で、お願いします。パスタは渡り蟹のクリームソースがあればそれとトマトソース系のものを…
ピザは、必ずクワトロフォルマッジを入れてください。
コース以外に、軽めのシャンパンと天使のフロマージュをホールでお願いします。
では、後ほど伺いますので宜しくお願い致します」
無事に個室の予約が取れてホッとする沙奈である。
「沙奈…
有難う!渡り蟹のクリームソース頼んでくれて。
クワトロフォルマッジと天使のフロマージュは翔馬君の為なんでしょ?
流石、沙奈だわ。
細やかな気遣いが出来る秘書って最高ね。
沙奈を引き抜いて良かったわぁ。
あの会社を辞める時に、沙奈とチーフを引き抜いてきた過去の私を褒め称えたい気分よ」
麻希は、珈琲を飲み干して肩をグルグルと回した。
「麻希さん…
秘書室で1番下っ端だった私に目をかけてくれたのは麻希さんだけでしたから…
独立する時に誘って頂いた事、本当に感謝しています。
あの会社にずっといたら今頃、無理やり専務の愛人にされていたかもしれません」
「沙奈は可愛らしいし、気が利くし…癒し系だからねぇ。
傍に置きたくなる気持ちは十分理解出来るよ。
あの殺伐とした空気の中で、沙奈が淹れてくれる珈琲や紅茶を飲める時間だけが幸せだったもの。
麻希さん、珈琲どうぞって言いながら微笑む沙奈にどれだけ癒された事か!
沙奈は重役フロアの癒しの聖女って呼ばれていたのよ」
「麻希さん…
私…麻希さんに一生ついていきます!」
「何言ってんの?
沙奈は、翔馬君が気になって仕方ないクセに!
サッサとくっついちゃいなさいよ。
今夜決めたらいいわ!
シャンパンとケーキはテイクアウトしなさいな。
そっか、沙奈と翔馬君が付き合うなら私は結婚式でスピーチしたいなぁ…
その前に…結婚式プロデュースさせてよ?」
「麻希さん…
ちょっと気が早くないですか?
私と翔馬君は、まだ付き合ってないんですけど…」
「ふふふっ。
沙奈!私には未来が見えるの!
紗奈は、素直な気持ちを翔馬君にぶつければいいだけよ?
さぁ、早く仕事を終わらせてランチまでに戦闘服に着替えときなさいよ?」
「はい!
麻希さん、沙奈は戦闘モードに入ります」
麻希さんの中では、沙奈と翔馬が付き合って結婚する未来が見えているようだ。
翔馬君って、麻希さんに気があると思うんだけどなぁ…
私には同僚として、優しいだけのような気がするし…
けど、チャンスは逃がさない!
麻希さんが私の為にチャンスをくれるなら私はそれに乗りたい。
沙奈は、ランチ前にロッカーに入れてある勝負服に着替えてメイクも完璧に仕上げる為に仕事を早く終わらせる事にした。