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恋がしたくないわけじゃない 第3話 彼女のお気に入り

「麻希さん、翔馬君おかえりなさい」

爽やかな笑顔と優しい声で出迎えてくれたのは麻希の秘書的な立ち位置である沙奈だ。

「沙奈ちゃんただいま。

後からみんなでランチに出かけるわよ。

翔馬君が初仕事決まったからお祝いよ!

場所は、翔馬君から聞いてね。

12時45分位に出るから準備しておくようにみんなに伝えておいてくれる?

私は、それまで部屋にこもるから珈琲お願いね」

麻希は、急ぎの仕事があるのか、そそくさと社長室へ入っていく。

「沙奈さん、ただいま帰りました。

麻希さんのサポートで何とか商談成立しました。

僕は契約書類を確認してチーフとこれからの事を話し合います。

ランチの店は麻希さんのお気に入りのバルですよ。

お向かいのビルの地下の…

名前忘れちゃったなぁ」

翔馬は、自分が予約した店の名前を覚えていないようだ。

「タベルナの事かな?

渡り蟹のクリームパスタがあるとこでしょ?

ワインも美味しいし、前菜も充実してるよね!

楽しみだなぁ。

今から珈琲淹れるけど翔馬君も飲む?」

沙奈は、麻希が行きつけのカフェで定期的に購入しているオリジナルブレンドを淹れるようだ。

「そうそう、タベルナです!

この前食べたクワトロフォルマッジが美味しかったなぁ。

僕チーズが大好きなんで…

珈琲淹れてもらえるんですか?

嬉しいなぁ。

沙奈さんが淹れた珈琲美味しいから」

「もう!

翔馬君ったら…

元々美味しい豆だから、誰が淹れたって変わんないよ?」と言いながらも、お気に入りの翔馬に褒められ嬉しそうな沙奈である。

爽やかな風貌で気配りも出来て甘え上手な翔馬は、この事務所の女性からはアイドルのような扱いを受けているのだ。

翔馬自体も、その事については把握しており上手く仕事に活かしている。

中々ヤリ手の新人君なのだ。

最近、彼氏と別れたばかりの沙奈は翔馬の事を狙っているらしいのだが翔馬は上手くかわしているようである。

翔馬は、沙奈が苦手というわけではなく…

翔馬には、心に決めた女性がいるのだ。

ただ、その女性にアプローチするには自分のスペックが足りないらしく、今はレベル上げを頑張っている最中なのだ。

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