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恋が始まる時 第3話 エスプレッソトニックの泡が消えるまで

「祥君、久しぶりだね。

中々時間が取れなくてゴメンね?

話って何かな?」

やっと会えた歩未さんは、時間がないのか直ぐに本題に入りたそうである。

仕事で忙しいのは聞いているけど、プライベートな時間位は、落ち着いて話したいんだよね…

「歩未さん、元気にしてましたか?

仕事忙しいって聞いてたから連絡するの控えてたんですよ?

久しぶりに会えたんだから、ゆっくりしましょうよ?

このカフェのエスプレッソトニック美味しいんですよ?

きっと歩未さんの好みに合うはずだから試してみてよ?」

僕はメニューを渡しながら、女子からズルいと言われるとびきりの笑顔で歩未さんにアピールしてみる。

「わぁ…エスプレッソトニックを好きだって言ったの覚えてくれていたの?

ありがとう!うれしい!

最近仕事でバタバタしてて、カフェ巡りも全然行けなくて…

エスプレッソトニックも飲んでなかったんだぁ」

「歩未さんが言った事なら何だって、覚えてますって!

僕…

アホだけど、押さえるとこは押さえる男なんで!

ちなみにここ、チーズケーキも美味しいですよ?

まぁ、僕のオススメは固めのプリンですけどね?」

「チーズケーキと、固めプリンって…

祥君、私の好みを押さえてるじゃないの!

とりあえず、エスプレッソトニック飲んでからにするね」

歩未さんは、メニューをひと通り確認した後、嬉しそうに笑ってくれた。

僕の大好きなあの微笑み。

そう…

大輪の薔薇が開く時みたいな、優しく甘い微笑み。

この笑顔に僕はひとめぼれしちゃったんだよなぁ。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

僕は押し付けがましくならないように、言葉を選ぶんだ。

少しでも、歩未さんの心に響くように…

「言ったでしょ?

歩未さんの好みはちゃんと把握してますからね。

忙しい歩未さんに変わって僕がカフェ巡りしていいとこ見つけときますから!」

「ふふふっ…

祥君ったら!

エスプレッソトニックを飲まないとこの店が合格か決められないわよ?」

メニューを確認する歩未さんの表情も、言葉も柔らかくなってきている事にホッとしながらも、好き好きアピールは忘れずに!

これ大事だよね?

表情管理も完璧に!

甘めの笑顔とキラキラした瞳で見つめて歩未さんをその気にさせないとね!

自分の長所を生かしたアピールが大事って恋愛の神様も言ってたし…

今日は疲れている歩未さんを癒して楽しい気持ちにさせるのが僕の使命だ。

ついでに、僕にもっと興味を持ってくれたらいいなぁ…

お気に入りのエスプレッソトニックを飲むのを忘れてしまうくらいに笑わせたら、今日の僕の作戦は成功かな?

会う前は、今日こそ歩未さんの本音を聞き出したいって意気込んでいたけど…

歩未さんの瞳を見ていたら、僕を恋愛対象で見ていない事が丸分かりだったから、今は気持ちは聞かない事にするんだ。

少しずつでいいから、そばに僕がいるのが当たり前になるように…

罠をしかけていくから覚悟しておいて?

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