蝉の声
7月下旬、いつもは電話などない彼から着信があった。
自身のCDアルバムが全国流通に乗ることをきっかけに、
ミュージックビデオの制作が決まった。
ついては、地元で撮影をしたいと懇願。
あまり時間はないので、どこかのいい場所がないか、
地元のフィルムコミッションへ繋いでほしい。
そんな連絡だった。
彼との出逢いは、まだ何者でもない頃のこと。
あれから七年が経つ。
ステージをこなすたび、
曲ができるたび、
仲間が増えるたび、
各地をまわるたび、
人生の節目となるライフステージの『旅』を経て、
成長してきた姿が、自分事のように嬉しく、
そして誇らしかった。
たどり着いたこのMVが、
公開されたのは10月。
満を持して、そういいたいのは、
彼を見つめてきた七年がそう思わせるのだろう。
真夏に旅立つ蝉は、
土の中過ごした七年からはじまる。
終わりなき空に響く蝉の声は、
八日目が来ようと来なかろうと、
儚き命を永遠に歌い続ける彼自身の声なのかもしれない。
蝉:土橋悠宇
あなたに届けたい。