ふたつのハート
最近はずっと、サニーデイ・サービスを中心に音楽を聴いている。
サニーデイ・サービスなら「本日は晴天なり」「SUNNY」「DANCE TO YOU」。曽我部恵一BANDなら「キラキラ!」と「ハピネス!」。曽我部恵一なら「曽我部恵一」「LOVE CITY」「blue」。それにいくつかの編集盤やライブ盤。曽我部恵一プロデュースの松田マヨ「夏」なんかも。
サニーデイ・サービスをはじめて聴いたのは、シングル「NOW」とアルバム「サニーデイ・サービス」で、そこからはリアルタイムでずっと聴いていた。例えばスヌーザーを読みながら。特に「MUGEN」「LOVE ALBUM」はだから、スヌーザーのインタビューやリード文とないまぜになって、記憶が蘇ってくるのだけれども。それはブローディガンって作家についてのちょっとしたスモール・トークだったりする(ブローディガンは大好きな作家になった)。
サニーデイ・サービスが解散して、曽我部さんが「ギター」ってシングルを出した時には友達のうちで聴いていた。そして「成長するってこと」は20代で唯一付き合った女の子とお互いにCDを貸し借りしながら、二人で聴いた曲だったりもする。例えば、「MUGEN」収録の「真夜中のころ・ふたりの恋」が学生時代にカラオケで歌っていたら、友達がその曲を好きだからってMD(!)にコピーして渡したり、彼女からはGRAPEVINEの自作のベスト、しかも一曲ごとの解説付きを貰ったりもした。あるいは「真夜中のころ・ふたりの恋」をベッドタウンって自分がDJで参加しているイベントでDJでかけていた夜のこと。めちゃくちゃに誰もが酔っ払って、手を繋いで踊った晩。はじめてモアリズムにDJとして呼ばれたイベントに曽我部さんがブッキングされていて、ステージ上で曽我部さんが「今日のDJさんは僕に似てますね」と笑顔だった夜。その時に隣にいた唯一長く続いた恋人。曽我部さんとフェスでご一緒した時、曽我部さんがおもむろに「ギター」を歌い出し、いや「テレフォン・ラブ」だったかな、夏の日で、「ギター」を一緒に聴いた、もう亡くなった友達のことを思い、真夏の空を見上げた。それはまるですべてが遅れてきた青春のようで。もう二度とはないだろうと思っていたことが、また目の前で拡がっていった。それは凄く刺激的な、毎日が気の触れるような体験だった。いまはもう記憶の隅っこで、こうしてことばにされるのを待っているか、もしくはもうことばにもされないまま、失われたままなのかもしれない。
そしてまたその遅れてきた青春のあとで、最初に並べたアルバムを中心に曽我部さんの歌を聴くと、凄く艶っぽくてなまめかしい。いまなら、そういまなら「本日は晴天なり」の「ふたつのハート」には心が躍る。「キラキラ!」の「魔法のバスに乗って」にも心躍る。サニーデイ・サービス再結成のライブを見ておいて良かったと心底思うし、青春時代からいまに至るまで曽我部さんの歌を聴いているんだなあと思う。松田マヨは七尾旅人同様、私的初のアシッド・フォーク体験だったりもして。なんとなく、じゃあいまとその青春時代の私的セレクトを書き残しておこうかな。
若かりし頃に聴いた曽我部恵一(サニーデイ・サービス)セレクション
成長するってこと(BEST FLOWER)
真夜中のころ・ふたりの恋(MUGEN)
夜のメロディ(LOVE ALBUM)
魔法(LOVE ALBUM)
ふたつのハート(本日は晴天なり)
Dead Flowers(本日は晴天なり)
I'm a boy(DANCE TO YOU)
魔法のバスに乗って(キラキラ!)
キラキラ!(キラキラ!)
土曜の夜に(LOVE CITY)
おとなになんかならないで(曽我部恵一)
ギター(曽我部恵一)
朝日のあたる街(blue)
春を待つ人(blue)
春風ロンリー(スプリングコレクション)
べただな…。でもまたふらっと曽我部恵一のそしてサニーデイ・サービスのライブを見たい2021年の春。誰かを待つ朝焼けのなかで、メロウな歌を聴いている。