a mystery of the moon.mix vol.2によせて

ずっとDJをしてきた。生きること以外、暮らしにまつわること以外で、書くことと音楽を聴いたり、映画を観たりすることのほかに、つづいているのはDJだけ。たくさんの夜を過ごしてきた。この夜のために生きてきたんだ!と強く興奮して眠れなくて朝を通り過ぎて昼間になってしまうような。たくさんひとを傷つけて、もうひっそりと死ぬまで静かに暮らしていこう、音楽も聴けなくなるような。それでも少しだけ元気が起こると、やっぱり音楽を欲するし、幸いにしてDJも小さな休み挟みながら、つづけてきた。

月曜日、あるミュージシャンの呟きを目にする。いま世界で起こっている反差別運動についての。それからしばらくタイムラインを眺めて、友達にどうしても今週、mixをレコーディングさせてくれ、とラインし、それから小雨のなか久しぶりに傘も差さずに歩いた。

政治が大きく動き出している。社会が大きく変わり出している。個人的には戦争が始まる前ってたぶんこんな状況だったんだろうな、と思っている。それで感情が自分でもぶれているのがわかる、動揺もしている。

でも差別に対しては、ひとことだけしかない。

僕はあらゆる差別に反対し、あらゆる差別的行為に反対します。

ずっと「最高のブルースDJ」といわれてきた。ブルースは決していわゆる、悲しみや辛さだけの音楽ではない。喜びや怒りもそこにはある。さらにいえば、もっともっと複雑な感情が込められた音楽だと思う。ひとの心を躍らせるだけじゃなく、ひとの身体を踊らせる音楽だと思う。ここにはマディ・ウォーターズもジミー・リードもない。ハウリング・ウルフやJ.B.ハットーはいつか誰かにあげてしまったから、ない。すべてレコードで、針だってぼろっちいもので、そもそも僕はレコードをフロアにあわせてどんどん変えていく、そのために決してきれいに状態を保てないので、ほこりやちりもたまれば、ノイズだって聞こえる。でも、だから、それがいまを生きるブルースに聴こえたら嬉しく思います。

真昼間、さくっとリハーサルを終えて、3時間20分のレコーディング。飲み物も飲まず、僕が聴いてきた、かけてきたブルースをたくさん繋いでいきました。レア盤などもなく、レコードとはいえ一枚千円も出せば手に入るものです。英語がまったくわからない僕には、曲から受けるフィーリングでしかセレクトもできません。でもいま持てる僕をすべてここに注ぎ込みました。いままでのブルースDJのすべてを。レコーディングさせてくれた友人に感謝を。聴いてくださる方に感謝を。ありがとう。僕のヒーローはいなくなってしまったけれど、だから僕は歌い、月に踊る。The Future is still ours,This Night is still young.HERO never comes,so I sing a song of mine.DANCE TO MOON!(適当な英語です)



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