フラグメンツ1
男は子供の投げる球を受けていた。
彼は友人の子供、彼はぶかぶかのユニフォーム姿で掌を真上に上げるように軟球を投げてくる。
男が球を受け取って、投げ返すと、その球をグラブに当てては弾き、
コロコロと転がって茂みに消えていく球を追いかけていく。
グラブも彼の掌には大き過ぎて、すぐに落ちてしまいそうだった。
茂みの中から見つけた球を、彼が男に投げ返そうとする前に、
男は彼に「手首を使うんだよ」とスナップの利かせ方を教える。
繰り返し、飽きもせずに教える。
その横に、彼の父親が安いジンの瓶を抱えて、ラッパ飲みしている。
彼の父親の脇には、男の恋人がいて、煙草に火をつけたり、消したり、
缶ビールを飲みながら、ふたりを見ている。
「見直しちゃったな」と後で男に呟く。
夕暮れから辺りが暗闇に包まれて、球がついに見えなくなるまで、
キャッチボールは続き、オレンジの街灯ももと、
仲間たちはいつものお店に向かう。
男はやはりぶかぶかの帽子で目元まで隠れた彼と黙って歩く。
その晩、正確には翌日の昼頃、男は夢を見る。
懐かしい顔の女の子が男に手を振る。
「久しぶりじゃん」といって。
彼女の脇に、彼女と手を繋いだ小さな女の子が立っている。
二人は優しく男に笑っている。
彼女の陰に隠れて、少女が手を恥ずかしげに振る。
男は無表情のまま、起きてからも彼女たちを見ている。
気付けば、ものの数分で彼女たちは消えていた。
それから男はしばらく経って、ようやく手元の煙草に火をつける。
お酒の残った口の中はねばつき、水分を求めているが、
周りには飲み物は何もなかった。
ー
久しぶりに小説を書く気分で、始めてみました。
完成するかすら分かりませんが、
ゆっくり書きます。
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