ある日、何事もなかったかのようにいなくなるということ
健康診断で、自分の体の内に「異常が認められるので、医療機関を受診してください」と淡々と書かれた文章を見つけて、少しだけ動揺している。
今週から検査、そこから治療に向かう。
この数年、死についてずっと考えていた。死について書いていた。
動揺しつつも、どこか冷静に捉えているところもある。
僕が「生きていること自体が奇跡ですよ」と友達が言う。
ちょっと面白くて、何人かの友達にそれを呟く。
ある友達は「あなたが生きている奇跡を楽しませて貰ってます」と、
また面白いことを言われる。
長年の友達も「まあ、そうだな。生きてることが奇跡だよな」と感慨深げに呟く。
それについては、ある女の子に託した私小説めいた中編にほぼほぼ描かれている。
先週は青山真治さんの訃報があった。いちばん新作を楽しみにしていた映画監督だった。ちょうど「花様年華」からウォン・カーウァイの「恋する惑星」や「天使の涙」を観かえそうとしていたところで、青山真治さんの「シェイディー・グローヴ」も観なおそうかなと(Helplessではなく)、その並びで入っている配信サイトのマイ・リストに追加していたところで、友達が「スパイの妻」を観たって言っていたので、「空に住む」をリコメンドしたところでもあり、訃報を聞いた時には、やはり動揺して、すぐにひとりになった。「Helpless」は確かに衝撃だった。例えば、ウォン・カーウァイや、タランティーノのように。それに「eureka」だって、日本の映画史の中でも何年たっても傑作として語り継がれるだろうけれど、僕にとっては、「東京公園」と「空に住む」、あるタイミングで青山真治さんの作品がどこか脚本に特化してシフトしていった(というのは素人の感想だけれど、演劇を手掛けているというのを聞いていたのもあって)、その二本が特別な作品で、いまはただ、寂しい。
久しぶりに親友とお茶した。かつては同じイベントを28回もやった彼とも、ずいぶんと久しぶりに二人きりで話して、いままでよりもこれからの話をたくさんした。彼との出会いがすべての始まりだった。たくさんの懐かしい話をした。だけれどこれからの話の方が多かったのが嬉しかった。例えばそのイベントの1回目が「ドライヴ・マイ・カー」で音楽を担当している石橋英子さんのAOIという即興トリオのもので、そこからもう10年ほど経つのかな?あっという間だった気もするし、それでも音楽が鳴っている時の記憶は、いまでも目を瞑れば容易に蘇ってくる。正確には蘇ってくる景色もあるし、一言呟かれただけで思い出せることもあれば、もう決して語られることのない、どこかに浮いたまま戻って来やしないけれど、確かにそこにあった気持ちってものもあるだろう。
BEDTOWNというそのイベントが蒔いた種はそれでも確実に、いつかの未来、確かな魔法を呼んで、また鳴り響くのだろうし、BEDTOWN主催の三人も今までとは違った形で、関わっていくのだろう。
僕は僕で、アクセスの話をしたし、それはいま考えている50歳を目処に起業したいという、別の友達に言わせれば「でっかい夢ができたなあ」というその夢をいかに現実に落とし込んでいくかを、ゆっくりと考えている。アクセスの話はまた別の機会に書きたいのだけれど、例えば僕はいまはリタイアしているけれど、ずっとDJをしてきて、いまはじゃあそこにアクセスできる、例えばクラブに行く、ライブハウスに行く、そうした選択肢があるひとに向けてだけじゃなく、そうじゃないひとに向けてどうやって音楽を鳴らそうか、そんなことをいま考えている。それは経済的な話でもあるし、ある方のフレーズ「特権」にも繋がって来るし、同時に僕の中では、DJの機材が揃えられていて、ブースやステージが用意されている中で、DJをやることにいまはまるで興味がなくなってしまった。それは「音楽は何の為に鳴り響けば良いの?」というある天使の問いかけに対する、僕なりに考え続けてきたことのある断片かも知れない。
去年末、初めてTHA BLUE HERBのワンマンライブに行ったこともやはり大きかった。ライブ前、恵比寿で時間を潰す為にふらふらしていたら、BOSSとすれ違った。バス停に「人種差別なんかいらない」とタギングされているのをカメラで撮ったあとだったからなおさら、ただすれ違っただけで、そして獰猛な彼の眼を見て、ぐっと来た。ライブ自体も本当に素晴らしいものだった。思えば、「ONLY FOR THE MINDSTRONG」を聴いてからもう20年が経つ。ようやく、ようやく観たライブ。あそこからまた色々と変わっていくんだろう。
久しぶりに会ったその親友と出会った時から変わらずに音楽の話をたくさんして、近頃あまり話していなかったことがやはり共有されているんだな、とも思った。彼の娘ふたりが踊る動画に、彼女たちが成人するまでは生きていたいな、とも思う。
ある日、いつものように何もないようなふりをして笑いながら、いつものように何もないようなふりをして生きて、ふと何事のなかったかのように消えていくその日まで、まだやるべきことがある。それは途上で終わってしまうかもしれない。後悔もたくさんしながら、いつか潰えてしまうのかもしれない。だけれど、「ここが地球でいちばん空に近い場所だよ」に行きたいし、「いままでのすべてが未来で待っている」し、「ことばの前ではひとはうそをつけないの。だから注ぎださなきゃ、好きだって」(「」のなかは最近、夢で降ってきた言葉だ)。
久しぶりの更新。ちょっと文章が乱雑になってしまった。
読んでくださった方、ありがとうございます。
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