未来はまだ
夜勤明けのある朝、天気は良くて風が優しく吹くなか、ほかのスタッフに頼まれて、会社の敷地内の雑草を抜いては集めていた。
ほかに二人のスタッフと。
夜勤明けでへろへろの僕は、つまらない冗談を言いながら、雑草を抜いていく。
虫と爬虫類の話をしながら、僕は苦手だなぁと言いながら、カマキリ以外の虫が好きだという女性スタッフは、いきなり、はいっ!と雑草の根を抜いて、僕に渡す。そこには虫の卵がついていて、ひぇっ!と声が出てしまう。笑う二人。
僕が島根出身って言うと、島根弁、出ないですね、と言われる。友達いなかったからね、話す機会がないよね、と言うと、もう一人が、それ、笑っていいのか、わかんないと笑う。
ではあるけれど、僕がいつか放課後等デイサービスを立ち上げたいと言うと、女性スタッフが、そこで働いてみたいなあと言う。
嬉しかった。少なくとも彼女の目には、僕の支援の仕方は、それだけ魅力があるのかな?と少しだけ上気する。
それから、自発って言葉を教わったりする。
そこにいた二人はきっともう忘れているだろう、自分にだけは大切な記憶がまたできた。
飲みが続いていて、久しぶりに先輩のうちに行き、子供二人に会ってくる。
ちょうど、先輩が阿佐ヶ谷のお店で、イベントをした翌日で、阿佐ヶ谷のそのお店は10年以上前、DJをしに行った。
いまも覚えてる、DJブースから三人組がお店に入ってきて、掘りごたつがその時にはお店の小上がりにあって、一人の女の子が僕に手を振る様や、その三人と朝まで話した記憶。
いまのそのお店の写真を先輩に見せて貰う。
その小上がりがステージになっている。
亡くなった子と会った場所ね、と先輩が言う。
そうね、なんて話しながら、
子供たちとカルタをする。
トトロカルタ。
お姉ちゃんが夏の不機嫌から、かなりずっと落ち着いて、よく笑ってる。
姉妹二人で、僕をおっさん、おっさんといじりながら、やっぱり笑ってて、それはそれで幸せな景色だった。
たぶん先輩と出会って初めて、レコードをあげる。
デヴィッド・ボウイの「ハンキードリー」。
地球でいちばん美しい男性だよ、と言う僕に、
お父ちゃんはテテ好きじゃん!と言う長女。
奥さんと姉妹が寝たあと、少し先輩と音楽を二人で聴く。
そうやって相手の記憶には残ってないようなことを(好きな相手なら)よく見て、覚えようとしてる。
未来はまだどう転がっていくか、知らない。
だから楽しみだな、とようやく思えてきた。
だからってわけじゃないけど、ついつい奮発して、靴を買った!。ゆっくり、だけどしっかり歩くために。