蟻と葡萄と10月某日
休日。夏のあいだに読めなかった本を読む。好きな作家さんの小説、コピーライターの本。溜めていたドラマを1話だけ観る。好きな俳優さんが出ているやつ。
風がつめたいことに気づく。ヒートテックを引っ張り出す。それでも日が差すとすこし暑く、カフェラテはアイスで飲んでしまう。たぶん一瞬で終わってしまう季節。はかない。
シャインマスカットを買おうとして、逡巡してやめる。代わりに想像する。薄い皮がはじける瞬間、じゅわあとこぼれおちる甘味、そして暴力的な幸福感。いつか、ありったけのシャインマスカットを抱えて帰りたい。机に置いて、満足いくまで永遠と口に運んでいたい。薄緑色の幸福でお腹のなかをいっぱいにしたい。初めてのルーブルはなんてことはなかったわ、と言いたい。
最近はまっている濃いめの野菜ジュースを飲む。すこし原稿を書く。野菜ジュースを飲むと、「ゆるされた」気持ちになる。どろどろとした液体が、紛れもなく身体にとっていいものだと信じているから。
ひさしぶりに蟻をちかくで見た。大きくてたくましくて、しっかり生きていた。私もしっかり生きたいと思った。10月の休日。ハッシュタグ、つれづれなるままに、ひぐらし。