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「知りたい」を忘れない。─「ブータン 山の教室 」─

「ブータン 山の教室」という映画を観た。

スクリーンから、ブータンの山々のにおいや、採れたてのチーズのほろ苦さ、そして、子供たちのにこやかさと、学びへの真剣さがひしひしと伝わってきた。

「知りたい」っていいなぁと思った。

いつからか「知りたい」気持ちは希薄になっていた。自分の専門内のことだけわかっていれば十分生きていけると知った時から、それ以外への興味をあえて捨ててきたのだと思う。

でも、この映画を見たら、小学校のときに平仮名の「あ」をうまく書けた喜びや、孵化するセミの神様みたいな色を思い出して、心の深いところがツンとした。いつまでも、「知りたい」を捨てない生き方をしようと思った。

あと、ひとつ切なかったこと。

主人公のウゲンさんは、大都会である大きな夢を叶えようとしていた。それなのに、親の助言で一時期、ブータンの高い山の奥地で教師として赴任した。

邪険にされながら夢追う都会と、電気すらない山での祈りに満ちた生活。でも、どちらの幸せと不幸も知っているウゲンさんの苦悶の表情を見ていて、辛かった。

どちらも大事で、どちらも尊い。 
でも、どちらにも何かが欠けている。
そして、それを補うのは、いつも自分自身である。

最近、ひょんなことで小学生の時の友達に数人会った。15年ぶり。きれいな緑の多い地元でみんな暮らしていた。

一人暮らしの家に戻り、たくさんの夕焼けに染まるビルを見ていたら、本当はこんな街に住んでいたくなかったかもしれないことにふと気づいてしまった。強く、強く、帰りたい、と思ってしまった。

ウゲンさんは、少し、私でもあった。

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