【SS】一生に一度の恋だから(2011/03/03)
竹の花咲く瞬間を、共に見ることのできた二人は……
きっと結ばれる運命だったのね。
それは、五十年に一度の奇跡。
*
一生に二度と見ることは叶わないという、幻のような稀少な一時。
そして私達は、苦難を越えた先に突如として訪れた、いくつもの偶然を重ねたあの日に、出逢った。
これらを引き合わせた力を、運命や奇跡と呼ばずして何と呼べようか……
私は貴女のために、貴女は私のために、生きているのだと思いたい。
そのために生まれて来たのだと信じたいのです。
他者の内に生き甲斐や生きる意義を見いだす幸せや充実感。
貴女が私に与える価値で満たされる、私のこの幸せな心情が、貴女の心までを満たしてゆく。
こうして我々は共に幸せで在り続けることができるのですね。
誰もがきっと、誰かに認められることを望んでいるのでしょう。
そんな特別な誰かと出合った時、その人の生涯は報われて……終生が、救われる。
人間とは複雑なようでいて、単純な生き物なのかもしれません。
最後の最後で救われたなら、それまでどれだけ長く過酷な日々であったとしても、悔やんだ記憶をかなぐり捨てて、生まれてきて良かったと……心安らかにこの世を去る事ができるのですから。
だからこそ私達は、その瞬間を求めるあまり、生き急ぐのかもしれません。
短い一生を、少しでも長く満たされて生きるために、満足な最期ために、日々奔走する。
そして彷徨って、見失い、躓いて、泥にまみれ、傷ついて、血まみれになりながら……それでも走る。
人は愚かな生き物で、脆く儚い生き物……
些細な事に翻弄されては必死に生きる、愛しいものですね。
*
「あなた、また……何か難しいことを考えているでしょう?」
「ほんの少しだけね…」
「あんまり一人で遠くに行かないでくださいな……私は今、此処にあるのですからね」
「ふっ、君の言う通りだ」
「考える事も大切ですけれど、こんな素晴らしい物を前にして……今この瞬間を大事しなくては後悔してしまいますよ?」
「そうだった、勿体ないことをしてしまうところだったね……」
君が側に居てくれる幸せ、目の前の幸運に感謝して、今を大切にしよう。
そして、貴女を全力で愛し続けましょう。
限りある、人生だから……