ひとりぼっちのくろ_3
「ここでお別れだ。頑張れよ、くろ」
ホーホは、窓辺にくろを降ろした。すると、その子の憂鬱な表情はみるみる笑顔になり、瞳がキラキラ輝いた。
「わぁ…どうしてここに子猫がきたの?ううん、なんだっていい。前から猫を飼いたかったんだもん!」
その子がくろをそっと抱きしめ、部屋に入れるのを見届けて、ホーホは飛び去った。
その子はアイという名前で、くろにミルクをくれたり、夜は一緒に眠った。
アイは、くろに「よぞら」という名前をつけた。
「よぞら、すき。だいすき」アイは一日に何回もそう言いながら、くろを撫でた。
くろは、自分が猫だというだけで、こんなにやさしくされたのは初めてだったので、不思議な気持ちだった。
アイの家で暮らすようになって、くろはお腹を空かせることはなくなった。
それなのに、なぜか、日に日に元気がなくなってきた。
アイは、くろを決して家の外に出してくれなかった。
「だめよ、外にでちゃあぶないんだから!」
人間にとっては、それは理由があることだったが、くろにとっては理不尽だった。もともと、外で暮らしていたので、どうしても外に出たかった。
(つづく)
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