【五温目】辛くても苦しくても、楽しい時も、いつだって世界は色鮮やかだ
社会人はじめての土日
生理痛がピークを迎えていた。腹痛、だるさ、眠気。重力が普段の1.5倍と言えば伝わりますか。身体が重くて動かない。普段だったら絶対に外には出ないけど、社会人1週間の気晴らしがしたくて堪らなかった。外に出ないと気が済まなかった。きっと一日こんな感じだろうなと申し訳なさをたっぷりと持ちつつ、彼に車を出してもらって、迎えにも来てもらって、「さくらがみたい」一言でドライブに出かけた。
だるさと眠気の波が数時間おきくらいにやってくる。いつもだったら身を乗り出してのドライブも座席を倒して外を眺める。なんだか体調がすごく悪い人みたいで嫌だっけど、まあ悪いのだから仕方ない。彼にはいつもみたいにはしゃげなくて申し訳なさが積もっていくけど、それなりに楽しんでいた。
そして山中湖まで車を走らせてくれた。早く免許取ります。ごめんなさい。ありがとう。
湖って波がほとんどたたない。ずっと静寂が続く。その静けさにほっとする。普段生きる世界がうるさすぎるんだ。湖のほとりに住むのもいいなと思う。
そしてゆっくり帰路についた。今日はこのまま彼の家に向かう、うきうきの帰り道。
◇◆◇
次の日、お花見に出た。私のわがままに付き合ってくれた。ほんとにありがとう。ずっと桜が見たかったの。
気の向くままに歩く。歩きながらのお花見。
この気ままな散歩が結局1番楽しくて好きなんだと思う。
ふら〜と写真撮って、置いてかれて走って。と思ったら気になるものを見つけて今度は抜かす。さみしくなって手を繋ぐ。でもやっぱり写真を撮るために離す。そんなことの繰り返し。どこを切り取っても、私はずっと笑っていると思う。
ブラック企業の不満も溜まってた。
仕事のことも思い出したくなかった。
ふとした瞬間に、また明日から仕事に行くのかと思うと、行きたくなくて涙を溜めた。
でも、そんなこと考えていたらもったいないくらい、綺麗に咲き誇る花たち。これを今、楽しまないなんてありえない。結局、仕事なんて忘れながら楽しんだ。
枝の先でモコモコっとしている桜を撫でた。
薄い花弁の集まりに、その繊細さに少しだけ驚いた。触ったら散ってしまうような気さえする。でもそんなことはない。私が思っているよりずっと、植物たちは強い。
春ってなんでこんなに素敵なんだろう
鮮やかに咲く花たち、生き生きと伸びる野花も
花が咲き誇っているだけで明るくなれる
世界って鮮やかで明るいんだなと思う。
お気に入りのパン屋を見つけた。
これからきっと通ってしまう。彼の家の近くにまた、好きな場所が増えてしまいそうだ。好きなものが増えるって幸せだけど大変だよね。欲張りになってしまう。
来週も、お花見に来たいなと思う。
彼がいいなら来たい。
お花見でお酒を飲んで楽しむ雰囲気に釣られて、私も花見酒をしたくなった。来週どうか、また晴れてください。
いつまでも春が続けばいいのにと願うけど、一瞬で終わってしまうこの切なさがまた、魅力を引き立たせているんだろうね。この一瞬をお腹いっぱい楽しもう。