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私はなんでしょう


私はイタリアで生まれ育ちました。

おととしの11月に強い風で飛ばされて、いくつかの仲間と一緒に川のそばに落ちてしまいました。

そのままイタリアで死んでしまうのかなと滅入っているところに、ベトナム人のある女性観光客が私のところにやって来ました。しばらく私を見ていました。かわいいと思ったらしく、そっと私を拾ってくれました。

川を背景にして私と写真を撮りました。ハートのアイコンも押してくれたので彼女は私と一緒に撮った写真が気に入ったようです。

写真を撮った後も、その場に捨て去ることなく大切に扱ってくれました。ホテルまで連れていって、一晩ホテルに泊めてくれました。生まれて初めていわゆる「部屋」にいました。正直に言うならホテルの部屋は閉ざされた空間で窮屈に感じましたが、新しい世界にいられてそれなりに嬉しかったです。
 
そして、なんと、次の日彼女に起されて、彼女と空港まで行って、飛行機に乗ってベトナムに来ました。
 
あれから彼女と一緒に暮らすことになりました。彼女の部屋にある鏡のところにいます。心地よくて穏やかなところです。

彼女が一日を始めるときと、夜一日を終えるときは、決まっているように鏡を眺めて来ていますが、その度に私の方も見つめてくれています。彼女の真剣な顔も時々見られていますが、彼女の微笑ましい姿が大好きです。

時々日本で私の仲間と出会った話を懐かしそうにしみじみ語ってくれます。赤ちゃんの手の形がするというところは同じだそうですが、日本にいた仲間たちより私の方がずっと大きくて強いそうです。彼女は日本にいた私の仲間のことがとても好きだったようですが、羨ましい気持ちは持つまでもありません。彼女は私のことも大切にしてくれると強い自信があるのです。

これからもずっと彼女といるつもりです。

さて、私はなんでしょう。

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