地球はごみ箱?40年目の夏服

 夏服が70着以上ある。そのうちの半数が30~40年目くらい。もちろん毎年1回は着ている。
 断捨離という言葉が席巻した時「3年着ない服は一生着ない」「1着買ったら1着捨てる」などのフレーズを目にしたが、私には刺さらなかった。服に限らず「物持ちがいいね」と言われ続けてきたが、世間の人があまりにも早く捨てているだけで、自分がフツーだと思っている。成長して着れなくなったら年下へ、のサイクルに売買はなかった。
 制服の時代が終わり服を自分で買うようになり、買い過ぎた服を母に「あげる」と言って恩着せがましく押し付けたが、母はアクセサリーを付けてハレの日に着てくれた。心に待ち針が刺さったような気分だった。
 そのせいか、迷ったらすぐには買わず、数日後に欲しい気持ちを確かめて買う。買ったお店やだいたいの金額を覚えている。色違いまで買ったものの手に入れたことに満足し、実際に着たのは10年後という服もある。そんな私でも衝動買いで後悔することもある。不覚をなかったことにするには手放すことだが、仕方なく着ていると慣れてくる。
 リサイクルという名の免罪符でリサイクルショップに持ち込んだとして、その先はどうだろう?地元のある業者は障がい者の方が仕分け、値札をつけて販売したり海外に寄付したりする。物理的に着られないものを無人収集所に入れられた服は、裁断し工場などでウエスになる。しかし、そういう業者ばかりではないし、ドキュメンタリー映画「ファッション・リイマジン」によると「1980年代と比較して人々は3倍以上の服を購入」「毎年、千億もの服が作られ、その5分の3が購入した年に捨てられる。」らしい。
 断捨離もリサイクルも、自分の部屋からなくなるだけ。自分の視界から消えるだけで保管場所の転換でしかない。部屋のゴミ箱は地球と繋がっていて、消えることはない。小学生の時「質量保存の法則」を習い衝撃を受けた。誤って解釈しているかも知れないが、捨てたつもりでもなくならないのは恐怖だ。
 内館牧子さんのドラマで、生きているのがイヤになったという娘に、母親が「女なんてね、洋服一枚で死ぬのやんなっちゃうもんなの」と言うセリフがあった。来年何を着ようかと思うだけで、もう少し生きてみようかと思う。
 服を長持ちさせる方法に時短はない。少しの工夫と経験で延命できるなら自分で修繕もする。人生のいろいろな場面に寄り添ったのだから。

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