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石塚・呪いの石
わたしの田舎は少し小高い丘の上にある
国の重要文化財がたくさんある土地で
国の重要文化財の周りを遊び場にして育った
そんな土地柄なのでよく「歴史研究」をしている人々が訪れる
知っている場所へ案内すると
「これはすごい!1人じゃ見つけられなかった ありがとう!」必ず言われた
実際わかりにくいのだ
当時は国の重要文化財とは思えない程「雑に」野晒しであったりして
こんなものが⁈と思うようなものだったり
他人の家の庭にあったり…
小学生の時のある日
その日も若い女性に声をかけられた
教師のたまごで実習生だと言っていた
「この辺にある遺跡を知らない⁈」
古代寺院跡や塔へ案内する
ふと もうひとつ街を見下ろす位置に「石塚」があることを思い出した
草が生い茂った空き地の角にそれはある
「これは何だろうね」
「知らんけどこれも遺跡やない⁈」
ふたりでグルグルとその石塚の周りを眺めていたその時
「○○(わたしの本名)!その石に触ったらいかん!」
近所に住んでいる知り合いの爺ちゃんだった
「あんた誰な⁈」怪訝な顔で聞いている
「学校の先生のたまごよ」
「先生やったらよう覚えとき
古いものにはそれなりの「念」が入っとる
むやみに触ったら祟られることもあるけんな」
𓈒𓏸┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❁𖥧ܾ☼
ある日の夜
わたしの部屋の窓が真っ赤になっていた
なんだろう⁈と思う間もなく
ドンドン!と台所のお勝手口の戸を叩く音
あの時の爺ちゃんだった
「S(父の名前)火事や!」
地元の消防団員だった父が慌てて飛び出す
爺ちゃんの家の離れの家だった
住んでいたのは娘さんとお孫さん2人
「窓から子ども投げろ!」と父が言ったのだけど投げられなくて
父が家に飛び込み子ども2人を救出
母親であるお姉さんも窓から飛び降りて無事だった
父は足に火傷を負っていた
その日からしばらくして
学校の帰り道に突如あの爺ちゃんに呼び止められた
「おまえのせいや
おまえがあの石を触ったせいや!」
衝撃だった
家に帰ってからも呆然としていた
仕事から帰った父に話すと父が飛び出して行き喧嘩になってしまった
どうしていいか判らずに泣いていたら
父が助けたお姉ちゃんが間に入ってくれて仲直り出来た
その爺ちゃん家の縁側でみんなでスイカを食べた
「お姉ちゃんの名前 愛ちゃんなの⁈
可愛い名前ーー♡ʾʾ」
洒落た名前だと思った
そんな会話をした記憶が蘇る
もうひとりお姉さんがいた
そしてひと言も喋らないお兄さんがひとりいた
ひと言も喋らないこのお兄さん
父が言うには5歳くらいまでは普通に喋っていたらしい
母親を亡くしたショックでおかしくなり
喋らなくなったのだという
ひと言も喋らないので声さえ聞いたことがないのだけど
いつもお洒落をして道で会えばニコニコして
なかなかハンサムな人だった
「東京に行く」
いつものことながら突然そう言って
父が東京へ行ってしまったのは
わたしが高校へ入学したばかりの頃だった
夏には母親と1番下の弟が
秋にはすぐ下の弟も東京へ
わたしひとり祖父宅に残った
そのお兄さん
そんなわたしを心配してくれていたのかも知れない
バイト先のお店に毎日のように来てくれて
毎日ソフトクリームだけ食べて帰る🍦
「いつも来てくれてありがとう」
そう言うとニコッとして帰っていく
その光景が忘れられない
𓈒𓏸┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❁𖥧ܾ☼
その恐ろしいニュースを聞いたのは
わたしが上京して数年経った頃のこと
一家無理心中
家中血だらけだったそうだ
お姉さんふたりとあのお兄さんの
きゃうだい3人が亡くなった
そして入院中だったあの爺ちゃんだけ生き残った
𓈒𓏸┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❁𖥧ܾ☼
あの時の石塚は呪いの石だったのでしょうか
いや…何かしらの封印がされていたのかも知れない
どうしてもそう思えて仕方がないのです
𓈒𓏸┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❁𖥧ܾ☼
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