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飛行

先日飛行機に乗った。一人で乗るのは初めて。滑走路で加速する瞬間がこわくて、いつも友だちに「こわいよこわいよ」と騒いでは鬱陶しがられていた。それも出来ず、一人で飛ぶ。

こわいと楽しいは紙一重というか表裏一体というか。こわいけど、楽しいなと思いながら飛んだ。地図上で見るととても遠い距離なのに、一時間足らずで目的地に着くことが不思議だった。飛行機という鉄の塊が飛ぶことだって考え始めたら不思議で仕方がない。だけど、飛ぶものは飛ぶのだ。

私は答えの出ないことを考え続けてしまう癖がある。そして苦しむ。答えの出ないものを追究するからこそ、小学校の頃から国語が好きだったし、今でも文学に触れることが好きだ。「本は心を豊かにする」と思うが、本は色んな感情を孕んでいて、時に鋭利だ。


目的地に近づくにつれ、空は快晴でわたがしみたいな雲がたくさんあった。下を向くと一面が緑で、どこを飛んでいるのかと思ったら「長野県松本市上空です」とアナウンスされる。今住んでいる都道府県はいわゆる「都会」に分類される。空から地上を見て、田畑の多さにびっくりする。飛行機の窓から見ると、それらはアイシャドウパレットのようだった。ブラウンのアイシャドウパレット。


なぜ飛行機が飛ぶのか理屈は分からぬまま、目的地に辿り着く。
帰りのフライトでは、機長さんの両親が初めて機長さんの操縦する飛行機に搭乗しているとアナウンスされ、両親への感謝の意が述べられた。乗客みんなで拍手した。良い機会に巡り会ったなと思った。

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