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66「カルタ詩」

あ 秋の粒子を手のひらで受け止める
い 歪な形の一面だけが陽射しを反射する
う 宇宙からやってきた響きが陽射しに残る
え 煙突からはまっすぐな煙が立ち昇る
お 丘の上の草原に一軒の風呂屋がある

か 身体を温め気持ちを温め
き 北向きの窓も開けてみようとふと思う
く 暗い道を歩いてみるのもいいもんだ
け 化粧してない顔でもバレはしない
こ 今夜は新月影のない夜がきた

た 退屈そうにあくびをしてみるけれど
ち 巷の嘘と噂に心はボロボロ傷だらけ
つ 月明かりがもどってくる前に傷を隠さなきゃ
て 手のひらに目をやると肉球の間に秋の粒子が
と ときめきながら残っている

な 難題は次々に降ってくる
に 似てるようでぜんぜん違う難題が
ぬ ぬすびとのように隙間からやってくる
ね 寝静まった家々を縫うように 
の のべつまくなしやってくる

は はみ出た道を歩いてみると
ひ ひとりぼっちだということ忘れてしまう
ふ 踏み外さないように足元だけを見て歩く
へ 塀にぶつかっても塀とは気付けない
ほ 他のだれかに気付けないように自分にも気
  付けない

ま 迷子になってることにも気付けない
み みんな同じ道を帰っていくと思っていたのに
む 群れが見つからない
め 目の前には1匹の猫が顔を洗っているだけ
も もう戻れる群れなどどこにもない

や 優しさなんてものは危ういものなんだ
ゆ 夢から覚めるように跡形もなく消えていく
よ 良かれと思ったことが重荷になることは
  よくあることなのだ

ら らいおんだったらカッコよかったのにさ
り 立派なヒゲをぴんとさせて猫が突然話した
る 瑠璃色の空にもうすぐ溶けてしまうんだよ僕
れ レモンを咥えたらきっと立髪ある月になれる
ろ 路地裏に猫は誇らしげに消えて行った

わ 分かってるよ 秋が手の中に残ってること
  種になって新しい季節
を を連れてくること
  新しい群れが両手を伸ばして迎えてくれる
ん ○○さーんこっちこっち。



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