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80「詩」働く


働くのを諦めていました
長いこと

やっと生まれてくれた息子は
毎月40度以上の熱をだしました
喘息で一晩中だっこする日が続いたり
生後半年から始まった夜泣きは
4歳になるまで毎晩
言葉の出ない子でした
知り合いも
親戚も
友も
いないこの土地で
この子と向き合っていこうと思いました

お金はありませんでした
遊園地に連れて行ってあげられなかった
その代わり
太陽が沈むまで土手に座って
雲を見ていることができました

いつも一緒でした

息子が中学生になる時
以前いた職場から
また戻ってこないかと連絡がきました
片道2時間半
帰りは走って駅まで行き
山手線に飛び乗りました

週3日のパート職
お給料はわずかでした
わずかでも貯金をしました


貯めたお金は
息子が
合唱団の演奏旅行に行く費用になりました

「お母さん
僕の声が3秒くらい響いて
そうして
教会の天井から降ってくるんだ。
みんな泣いてた。
人って心に強く感じると涙が出るもんなんだね。」
ポルトガルから帰って来たばかりで
声がうわずっていました

そうだよ
その一粒の涙のために
お母さんは働いてきたんだよ

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