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380【函館市が描く持続可能な地域づくり】
これまで記述してきた教育環境の整備、観光都市としての都市づくりに加えて、人口減少と高齢化への対応も急務です。函館市も全国的な少子高齢化の流れに直面しており、若年層の流出や高齢化の進行が進んでいます。これを克服するには、若い世代が地元に残りやすい環境を整えることが重要です。具体的には、雇用の創出や生活基盤の充実、子育て支援の強化を進める必要があります。また、函館市がもつ豊かな文化や自然環境を活用した地域の魅力づくりも、人口流出を防ぐ一助となるでしょう。
最後に、環境保全と持続可能な発展についてです。函館市の美しい自然環境を守りつつ活用するためには、観光や教育と結びつけた形での環境保全が重要です。特に、持続可能なエネルギーや循環型社会の実現を目指す取り組みを、地域全体で推進する必要があります。このような活動は、地域住民の意識向上にもつながります。具体的な施策をいくつか紹介します。
○再生可能エネルギーの導入促進
函館近郊の風況の良い地域に風力発電施設を設置。特に海上風力発電を検討すれば、漁業との共存も模索できます。湯の川温泉や大沼地域などの地熱資源を活用した発電事業を推進し、温泉地との連携で熱エネルギーを利用する地域暖房システムも構築可能です。公共施設や学校の屋根にソーラーパネルを設置し、エネルギーコスト削減と持続可能なエネルギー利用、地域住民や企業への補助金制度を導入し、家庭や事業所での太陽光発電システム導入を促進することも考えられます。
○地域循環型エネルギーシステムの構築
地域で発生する食品廃棄物や木材廃材をバイオマスエネルギーに転換する施設を導入。これにより、廃棄物処理費用の削減とエネルギー供給を両立。函館市内で生産した再生可能エネルギーを地域内で消費する仕組みを構築し、地域電力会社を設立することで、エネルギー収益を地域に還元することもできます。
○循環型社会の実現に向けた取り組み
生ごみを堆肥化する家庭用コンポストの普及や、自治体による堆肥化施設の導入を推進。例えば、函館の漁業廃棄物、大沼における大沼牛の糞尿と生ごみを組み合わせた堆肥を地元農業に還元。他にも、地域の飲食店や小売店にリユース可能な容器の導入を推進し、使い捨てプラスチックを削減する。函館の観光地でリユースカップを導入し、地域住民と観光客の双方が利用可能なシステムを整備することも考えられます。
○持続可能な都市交通システムの構築
函館市電やバスを電動化・水素化することで、二酸化炭素排出量を削減。自転車シェアリングや電動スクーターの導入で、観光客と地域住民が利用可能な新しい移動手段を整備。歴史的エリアや観光地を中心に車両進入を制限し、歩行者や自転車が利用しやすい環境を整備する。
○地域住民と観光客を巻き込む意識啓発
学校教育において、再生可能エネルギーや循環型社会の重要性を学ぶプログラムを導入。地元の自然やエネルギー資源を教材として活用。函館山や五稜郭などの観光地でエコツーリズムプログラムを提供し、観光客に持続可能性への理解を促す。
函館市は、自然資源や観光資源を活かした再生可能エネルギーの導入や循環型社会の実現を進めることで、地域経済と環境保護の両立が可能です。これらの施策は、地域住民の生活を豊かにすると同時に、観光客にとっても持続可能な都市としての魅力を高める重要な取り組みとなるでしょう。