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しまなみ海道を1日で往復するために必要な条件は?(実走編)

前提として私は本州に住む人間ゆえ、尾道起点での記述になります。
それと自分の過去の撮影した動画を基準に話を進めていくことになるので、ポイントになるところは時間を記載することとします。

基準にする動画

解説前に大事なこと

私は過去、2度ほど自転車専用区間の坂道で対向車線まではみ出してきた車両と接触事故を起こしたことがある。
1度目は左右で上り下りが線わけしているにも関わらず、3列に横に広がって登ってきた外国籍のサイクリストと下り道で正面衝突、2度目は私が登っている最中に速度を出し過ぎて中央より外寄りへはみ出してきた原付が私の側面にぶつかって来た。

いずれも私自身ではなく対向車側に非があったが、それでも巻き込まれるのは自分自身だ。なのでこれだけは十分に頭に入れておいて欲しい、安全に関わることを列挙しておく。

  • 自転車専用道といえども原付共用も多いので速度は出すべからず

  • ブラインドコーナーの先は障害物や対向車がいる可能性を常に意識せよ

  • 自動車よりも自転車や原付との事故確率が遥かに高い

  • 疲労は判断力を鈍らせるので無理するべからず

  • 暗くなる前に撤退する計画で走るべし(夜間走行は選ばれし人間の領域)

向島

さて本州から渡船を渡ると向島に入る。
渡船は複数あるが、一番観光客にメジャーな駅前渡船で向島に上陸したところからスタートする。スタート地点から道路にはブルーラインが引かれているのでほぼ迷うことはないはず。
大きめの交差点を右折し、信号をいくつか抜ければ信号がないエリアまで至るので、そこから海沿いまで3km程度。
ただしこのスタート地点付近で忘れ物がある場合は購入をしておかないと次の因島までコンビニはない。自販機くらいはあるものの、現金が必要になったりするので気をつけよう。

動画は 0:30 くらいまでの地点を過ぎるとお店らしいお店は無くなっていく。

140km往復的トレーニングな走り方を標榜する場合は、基本的に向島は橋への登り口までのおよそ7kmくらいはほとんどウォーミングアップでしかないだろう。体調やコンディションを確かめながら今日どんなペースになるかを想定しつつ走る方が良いかと思う。補給食買い忘れくらいならまだこの時点で焦ることはあまりない。

あと大事なことだが、向島の中では体がいくら軽く感じても逆に飛ばし過ぎないようにしよう。

因島大橋

4:00 あたりから。
しまなみ海道で最初の本格的な登り、と言いたいところだが斜度でいうと3-5%程度しかないため、緩斜面と言うべき上り坂になる。基本的にしまなみ海道の架橋への自転車用道は斜度3%で設計されているようなので、この程度の坂で息切れしているようでは、(パワーの出し方的に)走り方が悪いか体力が足らないかのどちらかと言わざるをえない。
ロングライド時に大切なのは以前の記事にも記載したが体から出すパワーを斜度変化に関わらず上げ過ぎないことなので、常にパワーメーターがある人は一定を心がける。パワーメーターがない人はケイデンスを一定に保つようにギアを軽くし、速度ではなく足への負担と回転数を一定に保つように意識して登る必要がある。
斜度が5%くらいまでならスポーツタイプのバイクは問題なくそれで登れる筈だ。

因島大橋に限らず、しまなみ海道に架っている橋は中間地点付近まで基本的には緩やかな登りが続く。橋の入り口にたどりついても平坦ではないので、平坦に見えても油断しないように、ギア選択を間違わないようにしよう。

因島大橋は構造的に車道の下、下層の専用空間を走ることになるが125cc以下の自動二輪(以下原付)と道は最初から最後まで共用になる。故に2列で走ったり、道の真ん中から右は対向車や追い越し車両が来て危険なので、一列縦隊を心掛けてキープレフトの意識で走ろう。これは他の場所でも常に気を付けるべき事項ではあるが、この場所は一番意識した方が良いポイントでもある。

因島

さて二つ目の島は因島。本因坊秀策や万田酵素やポルノグラフティが因島の代名詞になるところであろうか。特に万田酵素は春のライドイベントのメインスポンサーでもある。
しまなみ海道という括りで考えた時の因島は、決して走りやすい島とはいえない。

動画は 7:25 くらいで左に曲がるのが一応のメジャールートらしいので、それに従って走るとするとアップダウンが地味にあるのと、島の道の舗装が他の場所に比べると比較的荒れている。また次の生口橋までの距離が比較的長く、生口橋手前までの数キロは市街地付近を通ることになるのだが道幅が狭いので車に抜いてもらうのに気を遣う。

まず上記の動画の 7:25 付近からの上り坂だが斜度は一時的にとはいえ10%程度はある。無理せずもっとも軽いギアで登ろう。間違っても重いギアでトルクをかけながら登るような無駄な行為はしないように
繰り返すが、持てるパワーは全ての工程を走り切るために使われるべきで、1箇所を乗り越える為に力んで使うべきではない。

動画 8:45 付近にコンビニ(ローソン)があるので最初の休憩地点にはいいところかもしれない。生口橋付近に行くとファミリーマート、セブンイレブンなども出てくるので、因島のうちに補給物資や水分に不安を感じているなら追加購入しておくのが良いだろう。

生口橋

入り口にジュース屋さんがあるのだが、気になっているものの行ったことがないので、行ったことがある人は是非感想をおねがいします。
上りは比較的長いのだが、斜度は相変わらず緩めなので丁寧に登ればそこまでキツくはないはず。ただし距離は橋の高さに比例して長くなっているので油断しないように登っていく必要がある。途中までは原付と同じ道になるが、橋の上は自転車と原付は橋の両橋で別れるので、「歩行者と自転車」「原付」の二つに分かれることになるのだが、因島大橋は歩行者通行帯が設けられていたので車両と歩行者、という分け方ではあったがここでは自転車と歩行者が一緒の通行路になるため、歩行者優先で声かけをしながら進んでいこう。
間違っても無音で15km以上の速度で抜くような危険な真似はしないように。歩行者は気がついていないと突然斜行したりするため、しばらく手前からラチェット音を響かせて気づいてもらったり、「こんにちは」とか「抜きます!」と威嚇にならない程度に声掛けをして挨拶をしたりするのがとても大切だ。

生口橋を越えて坂を下り切ったところにセブンイレブンがあるが、ここは復路の場合に結構な頻度で立ち寄る最終休憩地点のコンビニになったりするので覚えておくと良い。

生口島

この島だけで10km以上を走ることになるので、しまなみ海道の中でもかなりの距離を走ることになる。それゆえ見所になるところも多々あるのだが、有名な場所といえば瀬戸田のしおまち商店街だろうか。いつ行っても観光客がいて、近くの耕三寺や平山郁夫美術館が名所になる。
あとはジェラートで有名なドルチェの瀬戸田本店などが人気の立ち寄りポイントだろうが、観光でなければ基本的にはスルーになる。

この島は橋と橋の距離がほぼ等間隔なので、私自身は行きと帰りで同じところを通らず時計回りで島を走ることにしている。つまり常に道の海岸線側、往路の時は島の東を、復路の時は島の西を走るようにしている。

東の特徴としては、特に観光地になるようなものはないのでひたすら走って距離を稼ぐことに向いている。信号も橋と橋の間に5箇所もないので、ストップアンドゴーもほぼない為、一定ペースを刻みやすい。
ちらほらと丘程度の登りはあるが、獲得標高もせいぜい20m程度しかないので難易度は高くないだろう。
その日その日で風向きが違うため、この島の難易度は風量と風向きに依存することになるが、往路の時に向かい風のほうが精神的には楽だろう。

島の西側がどちらかというとメインルートのため、サイクリストはとても多い。しかし瀬戸田を通るため自動車の通行量もそれなりにあり、路側帯も広く取られているが、ふらつかないように走ってもらいたい区間になる。特に前走の自転車を抜かすときなどは注意が必要だ。
その代わり休憩地点は瀬戸田サンセットビーチやコンビニなどがあるため、一気に一息にこの島を走るというのがしんどい、という人は西側ルートを通ると良いだろう。

多々羅大橋

日本一の距離を誇る斜張橋が多々羅大橋で、距離も長いが当然威容に違わぬ架橋の高さも伴っている。
生口島側の登りは通称レモン谷と呼ばれる、柑橘畑の中を縫って登るような道になっており、展望台もあるので歩行者やサイクリストも多く、途中で自転車が停まっていたりするので見通しが悪いコーナーには登りでも下りでも速度を上げて入ってくのはとても危険だと弁えておこう。

橋梁に入るところにも展望台兼休憩所がある。
料金所付近の橋と地面の継ぎ目の部分にちょっとした段差があるのだが、スピードを上げて入るとリム打ちパンクしかねないので、荷重抜重ができる人は意識したら良い。
橋の中間地点に広島と愛媛の県境があり、橋桁は形状的に鳴き龍と呼ばれる現象が体験できるポイントがあるが、この3箇所はいずれも歩行者や自転車が停止していることが多く、なおかつ突然止まることもある。後ろから接近している場合は注意し、自分が停車する場合は前後を確認して速度を落とそう。

なおこの橋も原付と歩行者・自転車は分離して通行する橋である。(途中までは同一経路を通る)

橋を渡って大三島側に入ると一部区間だけ原付と合流するのだが、原付はすぐにわかれていく。自転車もそちらを通った方が最短ルートなのだが傾斜がきつい坂道なので大人しく自転車・歩行者のルートを通ったほうが良いだろう。原付ルートは基本的に自転車がくることを想定して運転していないので、ライダー達も油断していることが多い。

大三島

しまなみ海道としては通行する距離でいうと伯方島についで2番目に短い島なのだが、島の面積としては最大なのがこの大三島だ。有名な YouTuber が2024年の夏に合宿で走っていたのもこの島だ。

多々羅大橋から降りてきてすぐにある道の駅にサイクリストの聖地碑があるため、いつ行っても自転車で賑わっているのがこの付近なのだが、尾道出発でおおよそ40km地点になるので片道70kmのうち半分は過ぎていることになる。ちなみに中間地点の35kmは生口島で多々羅大橋の登り口付近だ。
100km走るのも難しいと感じる人にとっては、このあたりで引き返すのも勇気ある行動なので、己の体力とよく相談しよう。

ちなみにトータル走行距離 100km くらいにしたい、という人の折り返し地点は次の伯方島の道の駅付近になる。

大三島内を走る距離は5km程度なので、今までの島が長かった分、かなり短く感じることだろう。特にアップダウンもないので一気に走ってしまえるが、道の駅でレンタサイクルする人が多いので交通量が多い時は他の車両に気を配っておきたい。自動車の通行は限定的。

大三島橋

この橋自体は大きな登りがあるわけでもないのだが、途中から原付と道が合流するという少し変わった道になる。合流地点で勢いよく道に飛び出すと非常に危ない(見通しが悪い)ので、左右の安全は特に気をつけてもらいたい。なお、私は車道くらいの太さの道の一番左側を走っていたのに、対向車の原付軍団がイン側(=自分の通ってる側)に切れ込んできて最短距離を通ろうとしてきた連中に正面衝突しかけたことがあるため、ここでも危ない思いをしている。同行者が同じようなことをされてブチギレて大声を荒げていた場面にも遭遇している。
それくらい無謀な走り方をする人が多いことは繰りかえしにはなるが、頭に入れておかなければならないポイントだ。
(動画は25:28付近から)

橋の上では原付と自転車が同じ走行路を走ることにはなるが、道幅は他の端と比べると圧倒的に広いのでのんびりと走ろう。

伯方島

伯方の塩のCMで有名な伯方はこの島だ。
しまなみ海道を走る中で、島内最短距離もこの島になるが、道の駅とドラッグストアとコンビニ(ローソン)がインターチェンジ付近に固まっているので、休憩や補給するには向いている島でもある。
先述したが、尾道から約50kmの地点になるので、1日100kmが目標ならこの島で折り返すことになる。
尾道側からだと次の大島大橋の登り口は速度が出てないのであまり気にする必要がないが、降りてきた時に歩道と車道の境目のところに仕切りのブロックが新設されて、降りてきた自転車が勢いよく車道に飛び出すのを防止する位置に置かれているためぼんやりしていると、落車だけならともかく機材破損をしかねない乗り上げ方をするので注意が必要。(知り合いが一度突っ込んでこけた)
動画では28:33のシーン。

大島大橋

登りも下りも原付と道がほぼ分離されているのだが、橋の上では共用になっている。間違っても広いからと言って2列縦隊で走ったりはしないようにして、周りの交通の妨げはやめよう。
ちなみに2列以上で走る光景はレンタサイクルや外国人によくみられる。

大島

大三島のほうが大きいのだが大島である。
しまなみ海道を走るサイクリストの最難関もこの島であるといえよう。
単純な走行距離でいっても10kmを超え、それでいてちゃんとしたヒルクライムのレベルと言っても良い上り坂が2回登場し、最後の来島海峡大橋までのアプローチも高低差が海抜0m付近から見上げる高さまで駆け登ることになるので、耐性がない人にはキツさは相当なものになる。

大島大橋から大島に入り、宮窪港までは平坦かつ道の舗装状態もいいため快走できるのだが、そこから信号を右折したところから雰囲気が変わる。
緩やかな登りがダラダラと続き、大島北IC付近から本格的な登りになる。宮窪峠は高速の真下まで続いているが、大雑把に1kmくらい、平均斜度も5%ない程度。見通しが良いので長く感じるかもしれないが、橋への登りの斜度が少し上がった程度なので実はそこまででもなく、今治側からのほうが3kmちかい登りになるので意外としんどかったりはする。逆に言えば帰りの鬼門は宮窪峠を南側から登る部分なので、補給をしっかり済ませてから挑みたい。

宮窪峠を越えて下り終わると店舗がいくつかとコンビニが数軒あるため、往路復路どちらも補給の必要性を感じたら寄っておこう。

大島は吉海まで行くと、途中で亀老山への分岐があるが、亀老山は本格的なヒルクライムになるので体力に余裕がない状態で挑むべきではない。ただし景色は絶景なので一度は行ってみた方がいいのも確かではある。
140kmを楽勝で走れるくらいの人であれば立ち寄っても良いとは思うが、あくまで自己責任で。平均斜度8%クラスになると10%を超える箇所が当たり前にあちこちで頻発するので、数字以上に厳しい戦いになることは覚悟しておいた方が良い。

亀老山のことはさておき、しまなみ海道をストレートに走る場合でも大島南IC付近はちょっとした登りがあるが、距離自体は大したことはないので最後の一踏ん張りと思って登るといいだろう。登り切って下に入ると来島海峡大橋の威容が目に飛び込んでくるようになるが、ここでも十分に絶景といえる。
海沿いまで行くといつでもいい匂いがしている道の駅(よしうみいきいき舘)がある。流石に海鮮を七輪でのんびり焼いて食べるような時間はないかもしれないが、ハンバーガーは結構なボリュームで味もオススメなので食欲が維持できていれば立ち寄ってみるのも良いだろう。

来島海峡大橋

ある意味、しまなみ海道のラスボスとも言える。
原付の通行量も他の橋の2〜4倍の200円、長さも登り始めから終わりまで走り切ると7kmもある。
そして難関たらしめる最大の問題が風と視差のある登りだ。
アプローチは途中まで原付と一緒で橋の上では分離するパターンなのだが、残念ながら橋上は通行帯の幅が広くはないので対向車はもちろん、歩行者もたくさんいるので注意されたい。

橋の上かつ海峡を越えるので、向かい風の場合は驚くほど前に進まない。
そして橋自体が長いので中間地点までは、3%近い登りを登り続けることになる。橋までのアプローチが3%の坂道で、橋に出ればフラットに見えてしまうのだが、実はかなり上っていると言える。そこに風が追加されるため、向かい風だと登りながら強風を浴びると、びっくりするくらい速度が出ない。
しかしパワーメーターを持っていない人は斜度も当然把握していないだろうから、速度を維持しようとしてエネルギーを一気に使い消耗することになるため、この橋で燃え尽きた人を大勢見ることになった。

ゆえにこの橋は向かい風の時は特にパワーメーターの数字を気にしながら走ることを薦める。もちろん前はよくみて走ろう。

また橋の上では歩行者や前走者を追い越すときは挨拶をしながらがベターなので、心がけていこう。
橋梁部分も3連吊り橋なので呆れるくらい長いのだが、終わるとついに四国に上陸なのだが、それでもまだ70km。四国に入ってすぐにあるサンライズ糸山で折り返し、ここまでのルートを折り返して走り切ってようやく140kmである。

まとめ

実は意外と気をつけて走らないといけないポイントは多かったかと思うが、それでも日本のナショナルサイクルルート。自転車での走りやすさは群を抜いていると個人的には感じている。
我々は地元民ではないので通らしてもらっている立場、という弁えを持ちながらも地元の人のために通行するだけではなく、地域のためにある程度以上のお金を落とすことも意識しながら普段から走っていきたいと改めて思った。

私個人でいえば、自転車のトレーニングと観光的な走り方をする時のメリハリはしっかりと分けて、原付で訪問するときはむしろ自転車よりも立ち寄りポイントは多くなるように心がけている。

これを読まれた読者諸氏も走り方や楽しみ方はそれぞれではあろうが、地元の方や交通弱者の歩行者を優先し、対向車(自転車や原付)がいるかもしれないという安全のための「だろう運転」で、安全に長距離を走れることを望んでやまない。

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