「高対称のi」の感想
こんにちは。フリーゲーム「高対称のi」の作者、冬至です。
こんなタイトルですが、プレイ日記ではなく、
これを作ってみた感想、もといエピローグです。
(ゲーム内容のネタバレがありますので、プレイ済みの方推奨です。)
同人ゲーム界ではおなじみイベントとなっているらしい、みなみ様の「同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー」2021で、「高対称のi」がロジック部門を受賞いたしました。
また、ティラノゲームフェス2021では、スポンサー賞を頂きました。
「ある個人」に何らかの感想を持って頂ける作品を作れたことが、とても嬉しいです。
これを機会に、ご覧になってくれる方が増えたので、区切りとして、覚えている内に所感などを残しておこうとおもいます。
はじめに
「地球上にいる、分かってくれる誰か」が一人遊んでくれるなら、その人のために公開しよう。と思って公開しました。
と同時に、門戸を広く開こうと心掛けました(前提知識をまったくといっていいほど問わない。小学生向けと言えるくらいの易しさ)。
それゆえ、思いがけずたくさんの方々に、そして数学が苦手な方にも遊んでもらい、楽しんでくれて、とっても嬉しかったです。
メッセージをくれた皆さま、ありがとうございます。作品のほのぼの感そのままに、爽やかなファンアートも頂きました。嬉しい限りです。
内容の概要は、作品ページに記載してあります。
ティラノビルダーをご提供されている方が同じく運営している、「ノベルゲームコレクション」で公開しております。
このゲームは九割、ノベコレさんのお力で成り立っていると言えます。携帯からでもPCからでも、ブラウザ上でお気軽に遊べます。ありがたいです。
制作も、ティラノビルダーという無料ツールが無ければ実現していなかったと思います。それくらい、自己満足の思い付きが出発点でした。趣味にお金かけたくない、と。かかるならやめようと(同人界に叩かれそうな文言ですが……他意はなく。)。
結果、逆に御布施したくなるくらい、素晴らしい、楽しいツールでした。
原点
これは、わるふざけといいますか、うちわの思い付きだったのです。
↑実家に居る時、なんとなく思いついて書いたもの。
完全にお遊びの落書きなので適当な文言です。
妹に見せて、笑ってもらった思い出がある。
「四角」の説明なんか特に変です。作品では、周りにされるがまま、って感じでもなくなりましたね。
変化が一番ないのは、「まる」ですね。
何があっても性格が変わらない、という設定は、(図形的に)色んな変換を施しても性質が変化しない、ということの現れです。つまり対称性がものすごく高いです。
なぜこれを思いついたのか、よくわかりません。既に、動機を忘れました。
最初に思い付いたのは、適当な画面です。お遊びです。
こういったシミュレーションゲーム。
この時も、実現させる気はありませんでした。
こうかんどの表記が微妙に違います。まぁ、あからさまな恋愛ゲームのつもりではなかったので、作品版の方が個人的に納得です。(高換°)
レピュニット数のくだり、作品の方で入れましたっけ?
レピュニット数というのは、「1」だけで出来ている数です。11,111,……。ここまでくると、「名付けたもん勝ち」という気もしてきます。
好感度(らしきもの)が目に見える、というのは分かりやすいでしょうが、システムの都合上、無くても良くなったのと、今回は試しに作ってみただけなので、こういった難しい仕様は入れませんでした。
素数の時に「○日目」の数字の色が変わる、というのは、確か作品の方でも引き継いだと思います。まぁ、三日しかないので、2と3だけです。
素数だけで光るなんて、何日まである予定だったの?と思われるかもしれません。
完成版ではもっと学園生活を過ごすつもりで、こんな構想をしていました。
しかし、もうなんか、いいかな。ってなったので、次回はありません。
当初、これはお試し版の積りで作っていたんです。そしてもっと長い完成版を作る予定でした。それが結果的に、ぎゅっとなって本作が完成しました。
次があるか本当には分からないんだから、やりたいことを詰めよう、……ということで、色々とネタを入れました。結果的に、良かったと思います。
これきりでしたし。
番外
乙女ゲーム(この時点ではお遊びだったので、乙女ゲームネタのつもり)だったら、やっぱり人間かなぁ。と思って人間化したものが下に描いてありました。一発描きで、描いた直後に「やっぱダメだ」って諦めたものです。
お察しの通り、やっぱり人間に関心が無いため、人間を描けません。
(ただし故人は例外)
台詞
ほぼ初めに思い付いたのが、最後のシーンです。
この時点では、たしか現実的な制作に取りかかっています。ティラノビルダーもインストールした頃。
シャワーを浴びている時に思い付き、お風呂を出た後に、急いで適当な裏紙にメモしました。
何事も、思いついたうちに書かないと忘れるんです。作品のセリフは、ほぼここから一字一句変わっていません。
↓は、まる会長のセリフと(左)、さんかく先輩のラスト(右)のセリフ。
私の場合は、書きたいネタがあるからやりとりを書く、という順序でした。
それゆえ、ゲームを作るためにネタを絞る、というやり方ではありません。
逆にいうと、ネタが無ければ進まないので、いつ完成するか、自分でも予想が付きませんでした。
それを完成させようと思ったきっかけが、2021年に無料開催されたオンラインイベント、「自作ゲームオンリーおかわり」でした。5月だったかな。
偶然見つけ、参加無料だったので、それに申し込んで、イベント開催のギリギリに、ノベコレさんの方にアップロードしました。
それがなければ、この公開はだいぶ後になっていたかもしれません。
無料イベント、ありがとうございます。
※ここからは、とくにゲーム内容のネタバレに触れます。
アイディア
上にあげたメモに書いてある思い付きの中に、
「好感度がフィボナッチ数列で増えていく」というのがあります。
上がるたびに「+2」とか表示されますが、それを見て頂くとフィボナッチ数列になっています。
今回は短く、上がる回数も数回しかなかったので、気付かれない方のほうが多かったと思います。
が、この調子でいくとだんだんすごい速さで好感度が鰻上りしていくことが察せられます。笑 だからこの辺りで終わって良かったのかも。
取り上げなかったものを含め、手元のメモをそのまま拾ってみます。
「にっちゃん さけるチーズをキャッキャッ微分微分ーと言って遊ぶ」
↑これは作品に採用しなかったはず。
今、見返して、そんなこと考えてたんだな……、と、自分でも一歩引いて見ています。
さけるチーズは微分概念教育に使えると思いませんか。にんじんの千切りも。無限に裂いたらどうなるかな、って。そんなことないか。
あと、これ、作品に使った記憶があまりないのですが、さんかく先輩のセリフで、「もし、アンタが変わろうとしてるんなら、俺はアンタを否定しない」っていうメモがありました。あんたはそのままでいいよ、って言い掛けた後の、このセリフです。変わろうとする意志を含めて、主人公そのものだ、という解釈です。
・直角ちゃん(妹)
というメモもありました。さんかく先輩の妹でしょう。非登場でした。
それから大きな変更点は、さんかく先輩ENDです。メモでは「極座標形式」で表す予定でしたが、これを単に複素平面にしています。
これはイベントに合わせると時間がなかったからです。
加えて、小学生にも分かるように丁寧に説こうとすると、私の力量では冗長になり、飽きてしまわれるだろうからでした。
結果的に、たくさんのかたに遊んで頂いたことを顧みると、これでよかったなと思います。
(極座標形式は、馴染みのあるタテヨコのグラフと、そして三角関数と、虚数が上手く綺麗に絡んでいます。数3で出てきます。)
テーマに対する所感
実はわたし、幾何学が得意ではありません。比較的、代数学を好みました。
学生時代は空間図形の問題が苦手でした。
想像力が無い(加えて不器用。ゲームも苦手。)ので、なかなか図がイメージできなかったんです。
ですが今回、扱う相手が図形ということ、そして、いくら簡単なことであれ、かならず典拠を確かめる、という個人的スタンスにより、改めて幾何学を学びました。
みんなのアイドル・サイニ~ちゃんでも良いですが、私、素人趣味でやる時は、j-stage愛用です。なんか慣れているので。
ノベコレ用とDL用readmeの説明文にj-stageの名を出したのは、お世話になったからでもあります。
なんの資格もない一素人が、様々な分野の一流の論文を横断的に拝見できる。大感謝です。
あと勿論、紙の資料にもお世話になりました。図書館の存在に感謝。
この、「幾何学」を学んでいるとき、大人になって以来の「お勉強」で、とっても楽しかったです。
懐かしい単語を思い出したり。授業のちょっと先の雑学的な所を知ったり。
ゲーム制作の中で、一番楽しく、実りある時間だったかもしれません!
趣味で学ぶって、大変面白いものです。
ここからしか得られない楽しさがあります。
10を表現するには、100、1000を知らないといけない、という考えが常に背後にありました。使わなかったネタの方がいっぱいありますが、それも雰囲気となってにじみ出たのかな、と思ったり。(どうかしら)
結果的に、なぜか物理ネタが多くなっちゃったのは、ご愛敬……。
あと個人的に、数学者が好きだから、数行であれ言及できたのは満足……。
ネタ
今回、私のごちゃごちゃファイル発掘作業により、資料群から出て来たメモの一部です。捨てるに伴い抜粋。
作品に出て来たり、出てこなかったり。
作品で出て来た用語の意味など、ちょっと触れますので、アハ体験かも。
数学財産はロイヤリティフリーなので、使いたかったら使って下さい。笑。
オイラー……「グラフが手で書けるものはすべて関数とみなすべき」
↑これは使わなかったけど、面白いなと思ってメモったもの。完成版を出す時には、オイラーグラフの話を絶対挟んでいたと思う。出ないけど。
引力ポテンシャルが強い(束縛状態の数が多い)
というのは、にっちゃんのセリフで言わせました。にっちゃん、物理畑にいるので(?)、表現もそっち寄りになるのかもしれません。
「私達は居残りの係仕事として√3の近似値を小数点以下第十五位まで求めている。何だこの雑用。ものすごい新しいベクトルで来たな。」
これは、ちょっと小話に挟むかどうか、というネタだったと思うけど、すっかり忘れていたのか、採用しませんでした。放送係になったし。
っていうかどういう仕事だ。
女子生徒「○○さんって子供っぽい所あるんだ、自由粒子みたい」
↑これは別のファイルから出て来たメモ。追記しました。
なんか…ありそうな、なさそうなセリフ。
もちろん本編には出ませんでした。自分もすっかり忘れてたし。(メモが、ほんとうにそこら辺に取っ散らかっている。)
繊細の精神esprit de finesse…複雑な事象を、論証によらず直感的・全体的に把握する柔軟性に富む認識能力
←→
幾何学的精神esprit géométrique…人間精神の一類型。幾何学のように公理から定理を演繹する論理的・合理的な認識を行う精神態度
どちらもブレーズ・パスカルの用語です。
作中では、たしか、しかく君が使っていた気がします。
主人公は数学が苦手なのですが、上記で言うところの「繊細の精神」は持っているし、それは数学を考える上でも大事だよ、っていうことを彼に言ってもらっていた気がします。
実際、数学にはいわゆる「センス」も大事だと思うのです。
楽しめる心というのは、「数学嫌い」を自称するひとたちの中にも、多分にあるものだと私は考えております。
アフィン幾何学(射影対応を特殊化したアフィン対応によって構成)や、射影幾何学(ユークリッド幾何学よりはるかに少なく簡明な公理から出発)では「直交」座標という概念は意味をもたない。
→アフィン幾何学については、作品中でさっくり触れたので、細かい事はともかく。概念として面白いなと感じてくれれば幸いです。
この幾何学では、二等辺でも、どんな「形」をしていても、「三角形」はすべて同じものとみなされます。ふふふ。
三大作図問題
・角の三等分
・与えられた立方体の二倍の体積を持つ立方体を作図する
・円積問題(円と同じ面積をもつ正方形を作図)
→とくに円積問題について、しかく君パートに使いました。
作図では、コンパスと定規(まっすぐな線を引く用)だけしか使えません。
三大作図問題は、けっきょく不可能であることが証明されています。
座標を用いないで図形を直接考察する方法を総合幾何/純粋幾何学という
逆に座標を用いて考察する方法を座標幾何学、または解析幾何学と言います。
作品では、直接の言及はしませんでした。純粋幾何という名前が好きです。
クライン「エルランゲン目録」……幾何学が多数存在しうる理由を明らかにした。
・集合(空間)とその変換の群が与えられたときに、部分集合(図形)の性質のうち群の作用で不変なものを研究することが幾何学であると認識
(例:軽量のある平面と等長変換群を与えられたときの幾何学→ユークリッド幾何学)
→出発点の変換群をその部分群に置き換えるとまた別の幾何学が得られる
→多数の幾何学
ユークリッド幾何学はユークリッド的合同変換(アフィン対応をさらに特殊化した対応)で不変な図形の性質を研究する幾何学と見れる
等長変換(リーマン計量を変えない)の全体はリー群を作る(等長変換群)。=二点間の距離を変えない
えー、細かい事は、ともかく。雰囲気として、へぇ、というくらいで。
等長変換は、しかく君がひっそり言及していました。一緒に並んだまま平行に歩いているのを見て、これに思い当たったのでしょう。(?)
エルランゲン目録という名前は作品中に出て来たかどうか……。どちらにせよ、ここまでは踏み込んでいなかったはず。
「変換」とか、「群」などが重要なキーワードになっています。
まぁ、そんなこんなで、先生を出すとしたらアーベルかガロアかなぁと思っていました。群といえば、ということで。
真円度(Out of roundness、Unrundheit)……真円(幾何学的に正しい円。理想円)からの狂い。半径の最大値と最小値との差であらわすのがふつう。
これは工学系の論文で出てきたはず。ただ丸を見ているだけでも、いろんな分野の論文に行き付くから面白いです。
作品では、ラストの方で出しました。
ミルククラウン現象…一様な液面から円形(無限対称性)の壁が立ち上がり、先端からいくつかのミルク玉が跳ね上がるとき有限な対称性へ低下
→「(対称性の)自発的破れ」と呼ばれる
これも身近でおもしろいので、まる会長にしゃべってもらいました。
けっこう、やさしくしゃべってくれているので、身の回りの対称性について、雰囲気が伝わったら嬉しいです。まる会長も私も。
二次元では円盤の中心を正三角形状格子点に配列したものが、密度ρ=π/√12=0.9068…で最密パッキングになる(ガウスらにより証明)
同種パッキング(homogeneous packing)という分野があるみたいです。
みんな一回考える問題ですよね。どう詰めたら、なるべくたくさんの枚数、おせんべいを箱に敷き詰められるかなぁとか。円の同種パッキングは11タイプあるそうです。
この話は、しかく君が、まる・さんかく先輩の話をしたときに出てきました。作品中では分かりやすい言葉で説明しています。
つまり、円を最密パッキングしたとき、円の中心同士を結ぶと正三角形が現れます。
オイラー先生の設定… スイスから招聘された。証明がワイルド(ギャップ)(乙女の視点ってわからない)
↑これは「証明がワイルド」部分だけ作品中で採用されています。まぁ、言及しなかっただけで、スイスから招聘されたのは裏設定としてアリですね。
にっちゃんが乙女モードを発揮するセリフ、そして冷静に観測する主人公のシーンも書いていて楽しかったところです。みんな楽しかったけど。
オイラーの証明は、現代の学生がやるとボコられるくらい勇敢で、それをさらっとやってしまって、しかも結果的に合っていて(!)、なおかつ得意気ではなく、分かりやすく書いてくれちゃうところが、カッコいいです。
番外
ここで、全然作品とは関係ないけど、ロマンを感じ、一部、メモから抜粋。
重い元素がゼロの恒星は未発見:種族Ⅲと仮称
炭素より重い元素が太陽より少ない:古い恒星
ダブレット 同一語源だが違うものと考えられているもの
例:殆ど と ほとほと コップとカップたくさん測定できたときの平均値……期待値
分散=不確定さ
実数の古典的物理量に対応する演算子は自己共役
状態空間は一般に無限次元
見つかっていないものでも名前があるっていいじゃないですか。
基本的に宇宙はテンション上がりますね。
上記のように、やさしい言葉で説明するとどうなるかな、というのもいくつかメモしていました。
それから、「八面玲瓏」と聞いた主人公が「1の八乗根!?」って聞き間違えるというメモが出てきました。これは使わなかった(忘れてた)はず…。累乗根って、虚数も関わってくるので、いいとは思いますが。
アーベル先生
彼は、わりと、出そうか、出すまいか迷いました。
ここまできたら、人間を一切出さないほうが統一性が出ますし…。
でも、これを逃したら次は無いし、やりたいことをやっておこう、ということで、あえて好きに出してみました。
結局次回作など無くなったので、いいかなと思っています。
アーベルは結構なさみしがりやで、友達が居ないとしょんぼりすること、屡々。
それでも、いろんな人に支えられたりして、逆境の中、彼らしい論文を完成させられました。もっとも、懐事情がきびしく、ページ節約のために十分な説明を尽くせなかったりしましたが・・・。
穏やかな感じですし(彼の毒舌もなかなかのものですが、それはおいといて)、ちょっとしたアドバイスをくれる脇役・先生役にぴったりかな、と思い付いて、出演してもらいました。
メモが発掘されたので以下。
↑を訳しますと、
・牧師の子として生まれる さみしがりや 経済的にも大変だった。
・数学上の知識はほとんど独学といってよい
・当時のクリスチァニア(オスロ)大学に数学の講義はなかったらしい
・1825.9~1826.2までベルリンに滞在。クレールの知遇を得る。
とのこと。以上、アーベル先生のモデルとなったニールス・ヘンリック・アーベルさんの情報でした。ノルウェーご出身です。
もっと彼について、昔に仕入れた情報はいっぱいありますが、省略…。
彼の書いたお手紙、面白いですよ。けっこう、ずばっと言っています。毒舌っちゃあ毒舌かも。でも基本的に優しくてユーモアあり。
放課後にアイス食べながら愚痴聞いたりしたいですねぇ。彼と学園生活、送りてぇ~。(どういう感想?)
おわりに
同人ゲームオブザイヤー2021では、ノミネート作品作者からということで、一言コメントを差し上げました。
一言コメントというくらいですから、一言にしようと思ったのですが(ほんとです)。初稿の時点で1500字を超えてしまい。がんばって削りました。
録画や当日ご覧になった方は分かると思いますが、それでも軽く1000字を超えてしまいました。すごく、がんばったんです。これでも、とても推敲して、何回も見直し、だいぶ削ったんです……。
読み上げて頂く主催者さんに、長くなってすみません……って申上げた所、「全然大丈夫ですが、よければ会場で直接コメント頂いてもいいんですよ(意訳)」と仰っていただき、会場に足を運ぶことになった次第です。
会場の方々がお優しくて、聞きながら笑ってくれたのが幸いです。意外なことに一番大きな笑い声が上がったのは、マスターデータを消したという一文です。
さすが、クリエイターの方々なので、消去するという事がどういうことか分かっておられたのでしょう……、想定外でしたが。むしろ通じなくてもいいやと思って入れた所です。これで帰らぬデータも浮かばれることでしょう。
そんなこんなでしたが、おかげ様で、いろんな方に御目に掛かれましたし、お祝いのお言葉を直接みなさんにいただけたりして、結果オーライでした。
コメントでも申し上げましたが、せっかくお呼ばれ頂きましたので、他のノミネート作品を予習して参加しました。
こんなにもひとつひとつの作品にパッションが存在するとは思わず、びっくりしました。まず、込められる思いが濃厚であることに驚き(私の作品がライトだったから余計に)。
これ、どうやってるのかなぁ。とか、大変そうだなぁ、すごいエフェクトだなぁ、あのサイトの素材かしら、使い方が上手いなぁなんて、一回自分が作ってみたことで、研究みたいな視点からも楽しめたのが新鮮です。
普段、本当にゲームもやらなければ音楽もほとんど聞かない、書類と向き合うばかりの生活を続けていたものですから、新鮮で新鮮で。
最近は原点回帰して、小学生の時に好きだったゲームをやってみたりしていますが、それもここ一年くらいの話です。遊びに関しては世間知らずです。
世の中には様々な娯楽があるなぁと思わされた次第でございます。
それでもj-stageと図書館娯楽は止められねえ!一生、本と論文を摂取して生きていくのでしょう、私は。
そこからもしかするとまた変なものの案が出てくるかもしれません。それは私にもよくわかりませんが、その際は相変わらず自己満足の、私のためのものを好きに作ることでしょう。
次回もそうなるとは限りませんが、今作のように、思いがけず、ほかの誰かにも楽しんで頂く羽目になれば、とても幸いです。どうなることやら。
資料を元にして、自然と思われる物語にして、言葉にして、繋げていく。
今回のゲーム作りのプロセスは、普段やっているプロセスとほとんど同じでした。
論文も、元となる素材があり、それを「軸」をもとにプロットするようなものです(私個人の感想)。創作、執筆というくくりに入ると思います。
やってみると、軌道に乗ると、とっても楽しいものです。
ありがとうございました。
あとがきを書きましたので、この「高対称のi」は、私の中で一区切りです。
私の手を離れ、アップデートなどはしません(どうせマスターデータが無いので不可能ですが)。アニメ化しねえかなぁ。
遊んでくれたひとたち、感想をくださった人たち、素敵な素材を配布していらっしゃるHPたち、数学を積み上げたたくさんのひとたち、たくさんの御縁をくれた境遇に感謝の至りです。
みなさまどうか御身体にお気を付けて。
もし会えるのであれば、またどこかで、お会いできれば幸いです。
以上、冬至でした。