小説「極楽浄土の音楽性は黄金色」
阿弥陀くじでお馴染みの阿弥陀如来は、最初からみんなのアイドルだったのではなく、もともとは普通の国王だったのだ。
自分の国の国民が色々なことに苦しんでいることに悩み、どうすればみんなをハッピーピーポーに出来るか探るために、世自在王仏というレジェンド級のアーティストのところで、法蔵菩薩というアーティスト名で弟子入りしたのである。そこで、世自在王仏は、宝蔵菩薩に向けて「よし、おれの周りのヤバいアーティストを紹介するぜ」っていう感じで、数え切れないぐらいのアーティストが入ったYouTubeプレイリストを宝蔵菩薩に見せた。そこには、色々なアーティストの生き様とライブハウスの姿が映されていた。観るだけでも疲れる量である。
そして、宝蔵菩薩は自身の音楽性を探るべく、深いthinking time入った。このthinking timeもかなり長い時間だ。そして、ついに「みんながハッピーになれるお願い事48(フォーティーエイト)」というアーティストステートメントを打ち出し、極楽浄土という名のライブハウスをデザインした。国民もこのライブハウスに来れば、オーディエンスとして黄金に輝けるように、照明から何から全て、ディテールまで細かくデザインされているのだ。しかも、このライブハウスにいるときは、寿命がなくなり、楽しいことが永遠に続いてしまうというヤバさ。
ここで、ようやくアーティスト名を阿弥陀如来へと変え、レジェンド級アーティスト兼アイドルとして、きらりんレボリューションを果たしたのだ。ちなみにアイドルは英語で仏像という意味もある。豆知識だよ。
極楽浄土はたちまち人気になり、行きたいという国民が殺到した。しかし、極楽浄土は国民の心の中にあるライブハウスであり、すぐに行ける訳ではないのだ。そして、不安が蔓延した。
「極楽浄土って敷居が高くて、ドレスコード厳しそう。私は普段悪いことをしているから、エントランスの時点で黒服に追い出されそう。」
「そもそも他の音楽性で活動しているし、世間は音楽性の違いによるディスり合いで忙しいからそれどころではない。」
ここで、レジェンド級アーティスト兼アイドル兼(そういえば国王だった)阿弥陀如来は、国民に向けて言い放った。
「悪いことをしている?大丈夫だ。心配いらない。皆それぞれバックグラウンドが違うから、環境がそうさせたのだろう。パーフェクトヒューマンなんていないから、善いことをするのは義務ではなく、努力義務と考えた方が気が楽だろう。まずは、善いことをして、極楽浄土に行きたいと想うことから始めよう。イメージしてごらん、極楽浄土を。」
「他の音楽性で活動している?当たり前だ。私の音楽性は正解だと思っていない。ディスり合いで忙しいかもしれないが、生きている間は自分の音楽性を貫いてみろ。極楽浄土は最後に行き着く場所、ファイナルファンタジーぐらいに想ってくれればおっけー。ファイナルファンタジーがあることで安心して、自分の音楽活動ができる。極楽浄土は言わばコンセプチュアル・アート作品だからな。」
ちなみに、私には阿弥陀如来先輩の黄金色に輝く音楽性は眩しすぎるので、いぶし銀ぐらいの光量がちょうどいいと思っている。俳優に例えるとモーガン・フリーマン、カメラに例えるとシグマのFoveonセンサーである。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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