【WSET diploma対策】WSET diplomaは難しいの?(内容から考える)
Theoryの難易度(量から考える)
WSET Level 3は、テキストのページ数からすると200ページ。Specificationによると学習時間は84時間となっています。
一方、WSET Level 4は、
D1 229ページ
D2 110ページ
D3 596ページ
D4 120ページ
D5 68ページ
で、合計1,123ページとなります。ページ数だけで、Level 3の5.6倍になります。D6は教科書がないので、Level 4の分量はLevel 3の約6倍と考えてもいいでしょう。Specificationによる学習時間は500時間で、時間としても約6倍です。
ということで、Level 4はLevel 3の6倍のボリュームがあることになります。
Theoryの難易度(質から考える)
新しい学習内容
Level 4のD1, D3, D4, D5は、Level 3の内容を深掘りしていく感じですが、D2のビジネス、D6のリサーチアサインメントはまったく新しい分野になります。
D2はワインビジネスに特化したユニットですが、それぞれの産地のマーケティングや、管理団体など、D3、D4、 D5でもビジネスに関する扱いが大きいです。苦手としている方も多い分野です。
JSAで求められていることとの違い
WSET Level 4では、JSAのような細かい原産地呼称のルールなどを覚えることはありません。たとえば、Gevrey ChambertinのGrand Cruの名前を全部覚えることは不要です。ボルドーの格付けも覚える必要がありません。ですが、プリムールについては、非常によく聞かれA4用紙数枚分で説明できなければいけません。
Level 4はLevel 3に引き続いて、その地域を代表する産地にフォーカスを当てて、自然要因、栽培、醸造方法、ワインのスタイルをつなげていくことを、徹底的に行います。たとえば、南フランスのジュランソンは、JSA的にはマイナー産地の扱いですが、自然要因、プチマンサン、グロマンサンという品種、甘口ワインという特殊なワインスタイルであり、産地としてかなり特殊な産地なので、数ページを割いて、解説されており、WSET Level 4では、とても重要な産地です。
試験で求められること
Level3では、英語で受けたとしても、求められるのが、単語からせいぜい数行程度の解答ですが、Level4では2時間の試験でA4で10枚近くの解答が求められます。また、解答の構成力も求められています。たとえば、2022年のD3で「ワイン生産国としてポルトガルの強みと弱みを評価せよ」という問題が出題されました。こういった問題では単に知っていることをまとめるのではなく、どのような答案構成にするのかしっかり計画して書ききる必要があります。きちんとした知識をベースにして、気候、栽培、品種、ワインメイキング、ビジネスの各レイヤーにおいて長所短所を考え、特に、土着品種の多様性が重要な強みであることが期待されています。試験が短文ではなく長文の英語となることで、英語が苦手な人には圧倒的な難しさがあります。
WSETの提供するTheoryのリソース
Specificationというシラバスが明確に、学修すべき内容を明示していて、かつ、試験はテキスト以外からは出ません。このテキストがものすごくよく出来ていますから、テキストをしっかりマスターしていけば、決して超難関という訳ではないのですが、逆に言うと、テキストの中からは、どんなマイナーな部分でも出題されると言う意味では気を抜けません。
また、オンラインコースも整備されていますが、僕はD1の途中でオンラインコースは脱落して、ほとんど使っていないので、コメントは控えます。
Tastingの難易度
Tastingで求められていること
Tastingがあるユニットは、D3(スティルワイン)、D4(スパークリング)、D5(酒精強化)の3つです。それぞれの試験では、12アイテム、3アイテム、3アイテムがブラインドで出題されます。最終的に品種や生産地、D4やD5では製造方法などが聞かれますが、多くの配点は、テイスティングコメントに配分されていますので、必ずしもピタリと当てなくても合格することはできます。とは言え、ある程度は、この品種だなと言うのがわからないとテイスティングコメントもぶれますので、半分以上は品種がわからないと厳しいです。特に、D5はアイテムそのものがあてられないテイスティングコメントが大きくずれるので、あてにかかる必要があります。
D3に関しては、品種が一緒、国が一緒、リージョンが一緒という3つのフライトが特徴的です。単にテイスティング能力を磨くのではなく、この国を代表する品種は何かという知識も入れながら、長い時間をかけて、WSETが出題する可能性があるワインをテイスティングしていく必要があります。
僕が受けた試験でお手上げだったのは、アルゼンチンのボナルダくらいです。ですが、それ以外は、そんなに特殊な品種は出ません。ただ、ホワイトジンファンデル、スパークリングシラーズなどは日本ではあまり目にかからないですが、WSETが大好きなアイテムです。
僕は2020年の秋からワインを飲み始めました、決してブラインドが得意なわけではありませんが、3年間のトレーニングで、テイスティング試験は比較的よい成績で合格することができました。
Tastingは放置プレー
TastingはLevel 3とほぼ同じSATを用います。「タンニンの質」などが加わっていますが、ほぼ同じSATを用いてテイスティングします。Level 3でしっかりSATを用いたテイスティングができることが必要です。D4で扱う泡とD5で扱う酒精強化は、Level 3でも授業で数アイテムテイスティングしますが、試験に出ないこともあって、おそらく、きちんとしたTastingの練習はしていないと思います。
Caplanでは、D1試験の試験直後と翌日に一気にD3とD4とD5のテイスティングを行います(これは全員が受けなければいけません。初期費用にこのお金が含まれています)が、D1試験で疲れているし、一気に20アイテム以上のテイスティングを行うので、ほとんど記憶に残りません。そもそもはしっかりセオリーで学んだ上でTastingを行うべきで、勉強にならないというのが正直な感想です。
Tasting Guideという30ページくらいの小冊子が配られ、飲んでおくべき(試験に出る可能性がある)ワインがSpecificationで指定されています。たとえば、Burdandyの赤であれば、以下の様に指定されています。
あとは、自分で飲んで勉強しろということです。海外のワインスクールでは、小瓶でテイスティングアイテムを配って、授業があるスクールもあるようで、うらやましいです。
オンラインコースでも、アイテムが指定されてテイスティングコメントを提出すると先生が添削してくれるようですが、僕は一度も添削をお願いしませんでした。
Caplanも、時々、Tastingの直前講習をやってくれます。D4とD5はCaplanの直前講習に出ましたが、これが素晴らしくよかったです。ただし、値段は1日で4万円くらいしましたが。
ということで、Tastingに関しては、Level 3をベースにして、あとは自分で勉強しなさいという感じです。でも、正直、これでテイスティング能力を上げていくのは難しいです。僕は、好きなブルゴーニュピノノワールは封印して、できるだけ、世界中のあらゆるワインを飲むようにしていました。また、ありがたいことに、東京では、いくつかのDiplomaのTasting勉強会が行われていて、それに助けられ、Tastingを乗り越えられました。
まとめ
Theoryの量は、ページ数、想定学習時間で見るとLevel 3の6倍。Level 3で扱わないビジネスとリサーチアサインメントが追加されます。質の面では、より深掘りした内容になりますが、試験が短文ではなく長文の英語となることで、英語が苦手な人には圧倒的な難しさがあります。
Tastingでは、Level 3のSATとほぼ同じですが、学習アイテムが示されているだけで、ほぼ自己学習となります。勉強仲間を見つけて、一緒にTastingの勉強をする必要があります。