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pasteltime
ハイジにはなれないと知った日
高校生の時のこと。
生物の授業中、高山植物の話になった。
綺麗でかわいい花々を想像しながら、先生の話に耳を傾けていた。頭の中はすっかりアルプスの少女ハイジの世界。
高校生になっていたとはいえ、ハイジの話に出てくるとろけるチーズ、山羊のミルクや黒パン、白パンに興味があったし、お花畑で寝転んでみたかった。私の他にも同じ気持ちだった生徒がいたに違いない。
いつもなら盛り上がることがない生物の授業。この日は真剣に聞いている生徒が多かったのか、先生のテンションが高かった。
終盤を迎え、最後にひと言。
「ハイジの中にお花畑でぐるぐる寝転がるシーンが出てきますが、地面が
とても固いので実際にはあんなこと出来ません」
思わず「えーっ!」と叫んでしまった。
すると、私のほうをチラリと見て
「そんなことしたら痛いだけです」
と、とどめを刺された。
この瞬間、アルプスの山のお花畑でペーターと遊ぶ夢はあっけなく消えた。
高山植物の現実は、50代の今でもしっかりと記憶に残っている。最近まで残念な思い出として心にしまっていた。だけど、これまでの人生の中で
『高山植物の上で楽しくぐるぐる寝転がれない』という話をする人に出会ったことがない。先生を除いては。
そう考えると、高校生だったあの日あのタイミングで教えてもらってよかったのではという感謝の気持ちが湧いてくる。乙女心はちょっぴり傷ついたけれど、好奇心は充分に掻き立てられた。
ヨーロッパ旅行でアルプスの山を見た。フランクフルトに立ち寄った。
とろけるチーズ、山羊のミルク、干し肉、黒パンや白パンも食べた。
干草のベッドやお花畑を想像で補えば、ハイジの世界は堪能できる。
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