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優しさに包まれて

1970年代。
田舎でも誕生日会が開かれるようになっていた。

2歳下の女の子の誕生日会にお呼ばれした。
彼女と仲良しではないけど、
その子のお兄ちゃんとは同級生。
だから誘われたんだろう。

どんなパーティーかなぁ。
プレゼントを準備しなくちゃ。
だけど、お小遣いなんてもらってない。
お母さんに聞いたら「大丈夫」と言われた。

数日後。
夕食が終わった後、テレビがあるの部屋で
お母さんが編み物をしだした。
見たことがない鮮やかなレモン色の毛糸。

「○○ちゃんへのプレゼントよ」

とお母さんは言った。

「ちょっと手を貸して。あんたよりも小さいから…」


まあるい黄色の毛糸玉が
こたつ布団の上にころんと転がっている。
中太の毛糸がお母さんの人差し指に引っ掛けられ
だんだんとミトン型に変わっていく。

誕生日の前夜に仕上がった。
茶色い紙袋に入れられた手編みのミトンが
なんだか悲しかった。
うちは貧乏だから
プレゼントが買えないんだ。
憂鬱な気持ちのままその紙袋を持って
お誕生日会に向った。


小学生の私が持った感情は、童謡『かあさんの歌』が大きく影響している。あの物悲しい曲調がさらに寂しさを増した。

1970年代ともなると、近所に囲炉裏がある家はなかったし、掘りごたつでさえも珍しいものになっていた。お年寄りがいる家にかろうじて火鉢が残っていたくらいなのに、歌の世界観を妄想し我が家と重ね合わせていた。
子供の想像力はすごい。自分の娘がそんなことを思っていたなんて、母もびっくりだろう。
その一方で、手編みの暖かさも知っていた。母が編んだ赤と白の複雑な模様のベストがお気に入りだった。

大量生産、大量消費のファストファッションとは正反対。
手編みってかっこいいね!






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#私と編み物


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