肉離れについて徹底解説してみた〜疫学編〜
◯肉離れとは?
肉離れとは、一般的に「スポーツ動作中に、急に筋肉が切れたように実感するとともに痛みを感じ、プレーの続行が困難となる状態」に対する通称です。正式には「筋挫傷(もしくは筋断裂)」と呼ばれます。
肉離れは、打撲等の直達外力による筋打撲傷とは異なり、自家筋力(拮抗筋の力)または介達外力によって、拮抗下に筋が過伸展されて発症するものです。介達外力によるものは、比較的大きな外力が加わりやすく、筋損傷の程度も大きくなりやすいです。瞬時に非常に大きな力が加わった場合には、筋や伳の骨への付着部で損傷することがあり、成長期では同様な受傷起点で剥離骨折となる場合もあります。
◯肉離れの疫学
JISS(国立スポーツ科学センター)の診療統計でみてみると、2001年10月~2008年7月まで「肉離れ」としてJISSを訪れたのは322例(全例MRIで部位確認)で、これは受診者全体の約4%に相当します。
○受傷しやすい競技
受傷した競技種目は、頻度の多い順に、サッカー、陸上競技、レスリング、体操、
フェンシング、水泳、ラグビー、ウェイトリフティング、スキー、バドミントン他、全部で27競技と多岐にわたっていました。
○受傷機転別分類
受傷機転別でみると、疾走中、ダッシュした時、ステップを切ったあるいは切り返した時など、自らの動作中に発生したものが263例(82%)ほとんどでした。
このような肉離れを起こしやすい競技種目は、走るスピードが速いものでした。スプリンターやハードラーのような陸上競技者、サッカー、フットボール、ラグビー、体操、アイスホッケーやバスケットボールの競技者が肉離れを起こしやすいグループと言われています。
残りの59例(18%)は、相手に押されて転倒した際や、ベンチプレスやスクワット中などの反動をつけた動作の際のように、明らかに強力な回達外力が加わって受傷したものです。
○受傷部位別分類
受傷部位をみると、ハムストリングスが132例(大腿二頭筋82、半膜様筋37、半腱様筋7、ハムストリングス付着部5)41%、ついで大腿四頭筋が41例(大腿直筋24、内側広筋10、外側広筋6、中間広筋1)13%、下腿三頭筋が37例(ヒラメ筋24、腓腹筋内側頭13)11%、股関節内転筋群が30例(長内転筋15、大内転筋12、短内転筋2、薄筋1)9%となっていました。その他48種類の筋に肉離れが起こっていました。
○まとめ
肉離れのリハビリをしていくうえで、ゴールや目標を立てていくためにも疫学の把握は欠かせません。
また、受傷機転も把握しておくことで再受傷防止のための方向性も見通すことができます。
詳しい数字までを把握する必要はありませんが、概要だけでもしっかりと押さえておきたいですね。