お題「サッカー、プロ、名前忘れた」vol.2完全版
○木造作りの一軒家
ガラガラと戸を引く高校生の男。
男「ただいまー。…はぁ。」
戸を締めながらため息をつく。
一回の居間に、バックを下ろし
腰を下ろしてからテレビをつける。
テレビ「今日はバレンタインデー。チョコレート専門店は賑わいを見せています。」
テレビからニュース番組が流れる。
男「ちっ、どいつもこいつもバレンタインデー一色かよ…」
テレビのチャンネルを変えるもバレンタインデーの特集ばかり。
テレビ「2月21日よりj1開幕戦から2020年jリーグが開幕します。今年の注目選手はー。」
スポーツ番組にチャンネルを変えた。
母「はは、今年もまた、貰えなかったんかい」
男「うるへー。」
涙目の男。
母「そんな落ち込まなくても、おばあちゃんから毎年貰ってるやない」
男「それを世間一般ではカウントしないんです」
男「あーあ、ちくしょう!バレンタインデーなんて悪習滅んじまえばいいんやー!!」
母「あ、そういえば、さっき、あんたに用があるって玄関先に女子が訪ねて来てたよ」
男「ええっ!!まじで?!!それ早くいってや!どんな子やった?」
母「ええっと、確かねー…。」
ーーーーーーーー
○翌日、学校の教室(昼休み)
男「それでな、うちのおかんがその子の名前忘れてもたらしいねん。色々聞くんやけど、全然分からへんくてさぁ〜」
昼休みの時間。男が友人に弁当を食べながら相談している。
友「ふーん?ほな、おかんが忘れたその子の名前一緒に考えたるから、どんな特徴言ってたか、教えてみ?」
男「えっとな、おかんが言うには、夏の大会で優勝したサッカー部のメンバーでプロからスカウトが来たっていう、ここらで有名な子やっていうねんな」
友「ああ〜、3年のサッカー部エースの京子さんやろ、その特徴は完全に京子さんやわ
学年一のマドンナやん、よかったな〜」
驚いた様子で飲んでいたお茶のペットボトルを置く友人。
男「いや、でもな、俺も京子さん思ってんけどな、おかんが言うには、その子、玄関前で1時間ぐらいウロウロしてたらしいねん」
友「お、おお…、じゃあ、京子さんと違うか〜サッカー部エースの京子さんがそんな優柔不断なわけないもんなぁ、夏の決勝点決めた時みたく、真っ向勝負で向かってくるばずやよ」
男「やろ?」
友「京子さんは女の子やけど、男気の塊みたいな人やから。じゃあ、京子さんちゃうわ。
もう一度、詳しく教えてくれる?」
腕をくみ、考える仕草をする男。
男「おかんが言うには、才色兼備で、定期テストでも学年一位取り続けてる完璧超人で人当たりもめっちゃいいらしいねん」
友「京子さんやわ!そんだけ出来るのは名前に出来過ぎってついてる出木杉くんか京子さんぐらいなもんやからな!それはもう京子さんに決まりやろ!」
男の顔を指差す友人。
男「でもな、おかんが言うにはな、そんなに器用な癖して、緊張で家を間違えて、インターホンしてまうぐらい天然なとこあるらしいねん」
友「…ぶふおっ!な、なんやそれ。ほな、京子さんちゃうわ」
男「そうやろぉ〜、だから俺もいくにいけへんねん」
うーんと2人とも黙り込み、一瞬の沈黙が流れる。
友「…いや、…てかそれ言い訳にしてへん?
いく勇気がないだけちゃう?そんな受け身やから彼女出来ひんねん」
男「なっ…?!はぁ…?!べつに彼女作ろうとしなかっただけだしっ!作ろうと思えばすぐ作れるし!」
友「ほぉ?じゃあ、作れるって証明してきいや」
腕組みをして、挑発する友人。
男「いや、でもさ、それとこれとはさ…」
はぁ。とため息をつく友人。
友「…あんたさ、アホやけどさ、いい奴やし…。京子さんの事少しでも気になってるんやったら、自分から行かんと後悔すると思うで」
男「…」
男「よし…、おれ京子さんとこ行ってくるわ!」
友「おお!行ってこい!ぶちかましてこい!」
ガッと手を握り合う男と友。
ーーーーーーーー
○校門
京子が校門で門に背中をかけて誰かを待っている。そこに男が歩みよる。
男「あの!!京子さん!!」
ーーーーーーーー
○翌日学校の門〜靴箱
男「昨日聞いたんやけど、おかんが言うには、京子さんではないらしいわ…」
涙目てどんより落ち込む男と友が並んで歩いている。
友「うん、そうやと思ってたわ。京子さん彼氏おるもん」
男「はぁ?!じゃあ、俺が告ろうとしとった時、お前どう思ってたんや?!」
友「いや、申し訳ないなって…」
そんなに悪びれてない感じであやまる友人。
びっくりして驚く男を横目に、友人が先に靴箱に入っている靴をとる。友人に続いて靴箱を開ける男。するとそこにはチョコレートが入ってる。
男「え?!うお!まじかよ!?チョコや!!!誰や?!一昨日の子か?!」
と横で男がチョコを持ち、はしゃいでいる。
それを横目でこっそり見る友人はフフッと笑う。
男「なんだ?やけに上機嫌やん」
友「っ!…別に〜。早よ部活行こっと。あんたと話してるほどあたし暇ちゃうねん」
男「はよいけ、はよいけ。この練習の虫め。俺は無理だね練習ばっかの青春なんて〜。
まあ、あんま無茶すんなよ次期エース様」
友「そ、あたし、“次期”エースやよ」
友人は男を見て笑う。
男「?…なんだ?自慢か?」
友「…バーカ。そんなんやから彼女出来ひんねん」
男「関係ねぇだろそれは!💢」
二人は靴を履き、校庭の方へ向かった。
空は青空から夕空へと移り変わり始めていた。
END