本栖湖/ウインドサーフィンパラダイス
今年も本栖湖のシーズンがやってまいりました!
お盆よりも1週間はやいので、結構平日組みと顔をあわす。どの人も偶然ここで会った人達ばかりである。
しかし、数回本栖に行っていると、顔見知りになり、夜は飲み会になる。
月曜日のゲストは、今年独立して、店をだした
「パーマ屋小沢」さん、「福生のラーメン屋桜沢」さん、
「オーストラリアかぶれ増茂masimo」さん、他数名が僕達と一緒になった。
面白かったと言うか、興味深かったのは増茂さんである。50歳なのだが異常な健康おたく。
ウインドサーフィンをしに、わざわざ本栖湖まで来ているのに浜辺でうで立て伏せをはじめる。
そして、ベジタリアンのノースモーキングのちょっと内股である。
しかも酒も飲まないらしい。なにか土地成金のぼんぼんらしく、
仕事もせずに日本とオーストラリアを半年毎に遊び歩いているらしい。いわゆるヘンタイ君である。
煙草をくわえると「煙草は血圧を20%高くするからやめなしゃーーい!」と怒られる。
親切のつもりで「カップラーメン食べます!?」なんて言おうものなら、
「ラーメンなんて塩分が多いから良くない!」やらドータラコータラ、
「ボクは今日はこれだけで予定のカロリーは取ったよ!」
と、ごそごそとモモを取りだし、かぶりつく。
しばらくしてウインドが終わると、「ボク清里の別荘に帰るから又あさって来るね。
来る時にいつもボクのよっているマックでハンバーガー2個づつ差し入れるから、しーゆー!」
??あれっ?ベジタリアンじゃあなかったっけ?
彼はそう言い残して、異常に強い握力の握手を残し去って行った。
何か面白い生き物発見!みたいな気分である。
江口寿にでて来るモーホーズを想像していただければ良いと思う。
2日目の終了間際、俺のアメージングが鈍い音とともに、
岩場に乗りあげた。「あーーーーーーーーーーーーー!!」
もう後の祭りだ。エッジはがびがびにはげて、穴があいてしまった。
まるで骨折した気分で、とてもバッドな気分。ホテルでもらい湯してよっぱらってねよう。
でも、ランタンの火を細くして、夜空を見上げると、
満天の星空。富士山遊歩道の山小屋の明かりが、
空のてっぺんまで伸びていて、銀河鉄道333の駅みたいだ。しばらく星達とお話してから就寝。
3日目、朝からリペアーのため、サンドペーパー借りに歩く。
「サンドペーパー持ってましぇんか!?」
みんな本栖の人達は感じが良い。やっとのことでサンドペーパーゲット!
涙ながらのリペアー作業。けがで東京に残して来た彼女が、後から来るはずだったが、
経過があまり良くないようなので、今夜東京に帰ることにした。
増茂さんがこない・・・いや!ハンバーガーがこない。
来ないんだったら宅急便でもいいからハンバーガーだけでも送ってくでーーーー。
しかたがないので、飯にしよう。
今日は高級そばこ20%のそば追い鰹つゆ、ウィズシーチキン缶のままぞえ。
採れたてじゃがいもホクッとゆでた、メイドインロジャース。
である。デザートには、笑っちゃうほど美味しいキノコのソース、ウィズ残りのパスタ。
それと、賞味期限2年切れロイヤルミルクティー・・・豪華だ。
「うーーーー食い過ぎた。」きれいな空気のせいか、トイレに行きたくなって来た。
快食快眠快便である?
・・・マックが来ない・・・いや失礼増茂さんがこない。
まわりは仲のよさそうな若夫婦<若夫婦なんて言わないか>子供が1人。
「夕べのお星様本当にきれいだったわー」
「空気も良いから心が健康になるね。」なんて話しているんだろうか。
その横に会話のない派手目な夫婦。
どうみてもアウトドアに似合わない服装の女房にホスト系のだんんな。
だんな「ズズズゥーーーー」お茶をすする。
<どっか行きたいって言うから連れて来てやったんだろうが>
女房「ハーーーーーー」深いため息
<どこ連れて来てくれるのかと思ったら、こんな野原かよ。この唐変木が・・・>
だんな「ズズズゥーーーー」お茶をすする。
<そうだ、さっさと切りあげて明美ちゃんと出かけよう>
女房「ハーーーーーー」深いため息
<そうだ、早く帰って雄二くんとおしゃれして、ダイヤモンドホテルですごそうかしら>
言っておくが、これはまったくの勝手な想像である。
その下には、ずっとビーチベットで寝たきりの40代のホームレス風。
<家にいればじゃまにされるし、本栖きたって友達はいないし、とりあえずねよう>
私達はどう見えるのだろうか?
4日目。夕べ帰りそびれた私は本栖にいた。
今日は快晴・・・マックが・・・いや増茂さんが来ない。
しかたがないので、朝飯にする。
今朝のメニューは久しぶりにアルデンテパスタの塩コショウ味、デザートには小鳥のさえずり。・・・スパゲッティーだけかい。
午前中はセッティングしたり、本を読んだり、釣りをしたり、布団を干したりして過ごす。
午後は風が吹いて来るので夕方までセイリング、食事をしながら浜で知りあった人達と、ランタンの明かりの下で飲み始め、
遅くても、10時には就寝、とても、ピュアな時間だ。
それぞれ車は大体ワンボックスカーをとても器用に改造してある。
ボードとセイルが中にうまくおさまり、その下に布団を敷いたり、寝袋を広げたり出来るようにしてある。
食料とお酒はイカや肉をクーラーボックスに入れて来る人や、レトルト食品メインで構成して来るなど、様々だ。
テーブルや、ターフ、ビーチベットなどはみんな工夫がされていて、見ていて興味深い。
ここには、横暴に権力をかざしてくる者もいないし、不条理な命令をしてくるヤツもいない。
つまらなくても良いから売れるデザインなんて考えなくったっていいし、
マックのしすぎでマッサージにも通う必要すらない。
興味のない人には、ただの野原だが、俺にとってはかけがえのない楽園だ。
しかし、普通の人と付きあえなくなるのは少し考えものだけれど・・・。
10数年前初めてここに通い出したころの先輩達は元気だろうか?ふと思い出した。
「俺は休みの日は時計をしないぜベイベー。ところで吉岡君今何時!?」
とよく時間を聞いて来た吉田さん。
たしか、鳥取で36歳で21歳のキャバクラの女の子と結婚したと、風の噂で聞いた。
吉原のド真ん中に住んでいた松沢さんは、東村山にファミコンソフトの店を開いた。しかし、売り上げを持って、
上野のキャバクラに一人で行ってべろべろになり、おしっこ漏らしておもてにたたきだされたそうである。
葉山でスキンヘッドの白いスーツのやーさんに、ふくろにされたプログラマーの竹田さんは、
リストラにあって高田馬場の工事現場で監督をしているらしい。やっぱ、ウインド乗りは海に通わなくなると、
人生踏みはずしてしまうのかもしれない。
しつこいようだが、増茂さんはいったいいつ来るのだろう?
「プップーーー」あっ来たーーーー。
「やぁやぁやぁ、、天気図見たら、昨日はもうひとつだったから
1日遅らせたヨーーー。はい、ハンバーガー差し入れだよ。」
あっウィークデースマイルの80円バーガー1個だ!しかも、シェイクなし、
俺はチキンカツバーガーが好きなのに・・・。
あの、キャベツのサクサクッとした感じがたまらないのに・・・。
彼は、すぐ自分用だといってバナナを食べ出した。
「今日から天気も風も良いみたいだよ。エッ今日帰るの・・・あっそ!」
さっさと食事を済まし、セッティングを開始。俺もすぐ海に出た。
今日は、本当にばっちりのコンディションである。
ややガスティーだが、比較的コンスタントに6、0が吹きつづける。
佐藤君はすごい進歩をとげて、すばらしいジャイブをきめた。その後ろから吉岡も、ジャイブを仕掛ける。
きれいなマニューバーをえがき、アメイジングはジャイブした。前を増茂さんが走っている。
「風がもう一つだし、沖に何たらヘクトパスカルがどうたらこうたら、、、」
言っていたみたいだけど、「かっ、、、!」しか聞こえなかった。
あれから1時間、そういえば増茂さんを見かけない、オーストラリアまでながされたんだろうか!?
だんだんと6.0オーバーのコンディションになってきた。
7.5の俺は、オーバーパワーですっ飛ばされそうなのを必死でこらえる。
「ウワァーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
すざまじいしぶきをあげて、大沈をしてしまった。そのひょうしに、全体重をかけてブームに腕をぶっつけた。
「いでぇーーーー!!」、、、しばらく動けない。「やべえ、やっちまった。ここまでか、、、」
人生走馬灯状態である。「死ぬ前にチキンカツバーガーくいてーなー、、、●ちゃんとチュー出来なくなるなぁ」
吹きつづける風の中、本栖湖の真ん中で、水面に浮かぶ。
ゆらゆらゆら。しばらく水で腕を冷やすと、痛みはだんだんと引いて来た。
「なんの男の子ーーー!<って歳でもないか>」
セイルアップしている力はもうない。必死のウォーターで最後のプレーニング。
やっとのことで生還した。帰って来ると、7、0の佐藤君が、6.0にチェンジしていた。
こうしてミレニアム本栖湖ツアーは幕をとじた。
アジアのビーチを中心に、ウインドサーフィントリップで世界をめぐる。