青木悠

2021年11月からブラジル人のパートナーと自転車で中南米を縦断中。 旅の写真や動画はインスタへどうぞ @monsters.journey @aokiyu_

青木悠

2021年11月からブラジル人のパートナーと自転車で中南米を縦断中。 旅の写真や動画はインスタへどうぞ @monsters.journey @aokiyu_

最近の記事

目にする景色の向こう側 後編

一夜明けて朝早く、子どもたちが登校してくる音が聞こえ始めた。バイクで大人に送ってもらっている子もいる。この小さな集落にしては大きい学校だと思っていたが、恐らく他の集落も含めた、辺り一体の子どもたちが皆この学校に通っているようだった。 テントを片付けて出発の準備をしていると、始業まで時間があるのか、子ども達が出てきた。一定の距離を保ちながら、塀の向こう側から私たちを観察している。何かを尋ねてくるわけでもなく、ヒソヒソと小さな声で何か話しながら、楽しそうに、不思議そうに、こちら

    • 目にする景色の向こう側 中編

      日が落ち始めていたため、野営する場所を探し始めたが、辺りは急な斜面の山あいの道。テントを張れるような平らな地形がなかなか見つからなかった。しばらくそのまま走り続けると、簡単な石垣で囲んだ大きな放牧場のような場所が見えてきた。囲いの中には数十匹の羊と、長くて黒い紐のようなものを手にした老人が1人。その敷地の少し先の方には、簡素な家がいくつか見える。どうやら地図にも載らないような、小さな集落みたいだった。そのまま進んでもしばらく地形は変わりそうにない。日が暮れて暗くなるのを避ける

      • 目にする景色の向こう側 前編

        普段なら人の気配が無い場所を選ぶが、その日は辺りの傾斜が急すぎて、テントを張れる場所が見つからなかった。ペルーのアンデス山脈西側にある国立公園を目指していた途中で、4000m前後の山脈の合間を進んでいた。山道を登っては降りてを繰り返す毎日で、平坦な道はほとんどなかったが、未舗装の砂利道は、よく整地されていて、走りやすかった。車は1日に1台通るか通らないか。時々、ロバに荷物を積んでどこかへ歩いて行く人とすれ違う。 鳥が遠くを飛ぶのが見える。風に乗りながらエサを探している。あた

        • ドミニクおじさん

          自転車での長期旅を目的とする人たちにとって、ユーラシア大陸横断や、アフリカ大陸縦断など、大陸を端から端まで走り切ってみたいと思う気持ちは、万国共通のようだ。 私たちが今いる、アメリカ大陸も、そんな旅人達にとって、憧れの地の一つ。アラスカから始める大陸縦断、メキシコから始める中南米縦断、コロンビアから始める南米縦断と、大きく分けると3つの目的に別れる。北から南へ向かい、大陸最南端の町、アルゼンチンはウシュアイアを目指すのが、定番のルート。 アメリカ大陸縦断と一口に言っても、

          チーノと呼ばれて

          チーノとは、スペイン語で中国人のこと。ちなみに日本人はハポネスと呼ばれます。中南米を自転車で旅していると、様々な場所で中国系らしいお店や人々を目にします。 ペルーでは、過去に政策として中国人を移民として受け入れたようで、その時から中華料理が各地に広まり、現在も小さな村に唯一あるレストランが中華料理屋だったりします。超大盛で薄味なペルー流の中華料理は、量とカロリーが欲しくなるような旅疲れした時にはとてもありがたいものです。パナマでは、スーパーのほとんどは中国系の人達が営んでお

          チーノと呼ばれて

          エクアドルの国立公園と火山を

          南北の距離8500kmに及ぶアンデス山脈の北部にある国、エクアドルに到着した。環太平洋火山帯の上に連なるこの山脈地帯では、地震も起きるし温泉も出る。 首都キトはアンデス山脈の中ほどの標高3000mの所にあり、農業が盛んでカカオやコーヒー、バナナがよくとれる赤道直下にある国エクアドル。東側は一部アマゾン地域となり、西側は太平洋に面している。 大きな街に行くと南欧系の見た目をしたメスティオが目に入るが、私が主に通過した名もないような小さな村々では、現住民であろうインディオたち

          エクアドルの国立公園と火山を

          コロンビアのコーヒー産地より

          パナマからヨットでダリエン地峡を抜けて、サンブラス諸島のヤニ島に寄り道し、コロンビア北部のネコクリに到着しました。メキシコで出会った同じように自転車旅をしてる犬連れのブラジル人、アラスカから下ってるカナダ人の2人の合計5人と1匹と自転車5台をパンパンに詰め込んだ船でした。コロンビア入りしてからは彼らとは別れ、各自好みの速度と手段で南下します。 コロンビアの北西部のコーヒーが有名な地域にあるカラフルな町ハルディンを訪ねました。アンデス山脈の山々に囲まれていて、尾根沿いの道を自

          コロンビアのコーヒー産地より

          グアテマラで涙

          フエフエテナンゴにある国境を超えて入国。山に囲まれた谷間の道が続く。車やバイクからなにやら大きな声で何か言われるけど、野次なのか挨拶なのか分からないほど語気が強い。バスはクラクションを鳴らしながら、すごい勢いで追い越していく。規制がない古いアメリカ仕様の日本車が、真っ黒な排気ガスを撒き散らしている。時々サブリナが排気ガスで見えなくなる。車の数も多い。それでも、山間部に抜け道や逃げ道はない。走り続けるしかない。 グアテマラ入国前に体調を崩して、1週間寝込んでいた。どうにかまた

          グアテマラで涙

          5ヶ月5カ国5000キロ アメリカ編

          2021年11月23日に自転車旅を始めてから、5か月が過ぎた。走行距離5000キロを超えたところで、現在5カ国に入った。5が3つ。特に意味はないけど、ゾロ目になったところで、それぞれの国をざっくり振り返ってみることにする。まずはアメリカから。 羽田からロサンゼルス行きの飛行機に乗る。アメリカでは1週間かけてメキシコとの国境の町ティファナへ向かう予定だった。長期の自転車旅を計画し始めてから、3度の延期と、2年間の準備期間。長かった準備期間や慣れない自転車の梱包のせいか、出発直

          5ヶ月5カ国5000キロ アメリカ編

          ヒッチハイクで海渡る

           毎朝8時にマリーナへ。マリーナとはヨットやモーターボートを係留させて、船の保管や燃料の補給をすることができる基地のこと。ここラパツのマリーナには小さな商店、レストランや図書館やカフェまであり、観光客向けのダイビングやスノーケリング等の船を使ったアクティビティの集合場所として使われていたり、船で寝泊まりしている船乗りたちが、マリーナのカフェを社交場として使っている。ちなみにヨットと聞くと帆船全般を思い浮かべるが、英語でヨット(yacht)とは小型の競争用帆船やエンジン動力の豪

          ヒッチハイクで海渡る

          ランチョでキャンプ

           ランチョとは酪農を行う大型の農場や、農場内に併設された小屋の集落のことで、メキシコでは住居兼観光農場にしたり飲食店を併設したり、業態は各家族によって様々。メキシコ中の至る所に点在する。スペイン語 : rancho 英語 : ranch  メキシコはバハカリフォルニア半島の南端にある盆地のオアシス、サンティアゴから水路沿いに未舗装の山道を15kmほど北上した所で暮らす家族。総勢10人程で暮らしながら自分達用に牛や鶏や野菜や果物を育て、お父さんは近くのトレッキングコースのガイ

          ランチョでキャンプ

          自転車と道具の点検の話と、カンガのすすめ

          キャンプしながら3,4日自転車を漕いで宿にて1日休むというサイクルを1ヶ月半続け、2,000km走った所でいつもより少し細かい自転車整備をすることにした。 調理用の燃料を使ってチェーンを洗う。ガソリンをペットボトルに移してその中にチェーンを入れたら、シャカシャカ振って簡単お掃除。 ディレイラー、ペダルその他の駆動系パーツに付いた砂埃をブラシでゴシゴシ落として。 ブレーキディスクを雑巾で拭いて、すり減ったディスクパッドを1枚交換。 洗い終わって乾いたチェーンを元通りにし

          自転車と道具の点検の話と、カンガのすすめ

          自転車でのメキシコ旅日誌 / 2022年1月2日

          退屈な道が続いた。筋肉がついてきてスピードが上がり、相方を待つ事が増え、少しもどかしい。変哲のない工場や農地や投棄ゴミだらけで交通量の多いハイウェイの一本道は楽しい道ではないし、そもそも大晦日の大雨の時から気持ちが沈み気味で、景色を楽しむ精神状態でもない。しかもイヤホンが壊れて音楽も聴けなくなり、漕いでる時間がもはや修行だった。 水を補給するために寄った人口120人の小さな町で好物のスーパーフード、乾燥ナツメを見つけて購入。前回と比べると新鮮さに欠けるのか甘味が少ないが、食

          自転車でのメキシコ旅日誌 / 2022年1月2日

          自転車旅日誌 / 2021年12月29日

          キリスト教会の町San Javeirを越えると、そこからは砂地と丸石の入り混じる未舗装路になった。昨日キャンプした所が川縁の気持ち良い所だったため、昨日は遅めの出発で1日の走行距離27キロ。これじゃ遅すぎる。予定通り進まないと食料と水が足りなくなるからということで今日は早めに走り始めたけど、結局走行距離32km。時速約5kmで、さほど徒歩と変わらん。思っていたより進みの遅いオフロード。でかい石とか急な段差で何度も転倒して足をすりむくし打ち付けるから痛いし10ℓの水が容器の中で

          自転車旅日誌 / 2021年12月29日

          自転車旅見聞録メキシコ編 / 砂漠のヤシの木

          広大なサラサラの砂砂漠の中にポツンと現れる陸の孤島の街。そこは椰子の木が生い茂り鳥がたくさん鳴いていて、街のまんなかには立派な噴水がある。街の人たちは仲間たちとどこかの家の前に腰掛けて大きな声で喋り、行商人はラクダに果物やら荷物をたくさん乗せてなにやら口論している。 どこから来たのか私にとってのオアシスは、こんなイメージ。今回実際に訪れたオアシスは、メキシコはバハカリフォルニア半島にあるムレヘ(Mulege)という名の海沿いにあるオアシスだった。鉱山の町サンタロザリアを出て

          自転車旅見聞録メキシコ編 / 砂漠のヤシの木

          ひたすら直進、とにかくまっすぐ

          今日のおおよその目標は70km進む事だった。無風で平坦な道だったら時速約15kmで進んでるから、昼ごはんの時間を含めて5時間程かかる道のり。かすかに登り坂にはなっていたが、ほとんど気にならないくらい。地図で見てたから分かってはいたものの、本当に、本当にただひたすらずっと真っ直ぐな道だった。 交差点や信号は無し。民家や商店やガソリンスタンドも無し。唯一見た建物は、用途不明の小さな木造の小屋が6つ並んでただけ。その他に目に映る人工物といえば、道路と電柱と電線のみ。見渡す限り広大

          ひたすら直進、とにかくまっすぐ