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猫の争う声がする夜に
今の家に引っ越してちょうど1年が経つ。
すぐ手の届きそうな距離にある川、そして遠くの山々に掛かる夕日を背景にして競うようにダッシュする新幹線と飛行機が見えるこの眺めがとても好きだ。
もう一つこの町が好きな理由は「猫」である。
確か以前住んでいたところも、近所で猫の集会が開かれるほど猫天国だったな。
人が座っているベンチの横、等間隔に連なるベンチのほとんどを占領した猫自治会の異様な光景は、きっと一生忘れることはないと思う。
今住んでいるとこもそれに勝るとも劣らないくらい、実に色々な猫の声が聞こえてくる町だ。
向かいの一軒家のベランダや屋根でじゃれあっている猫の声、
思わずマンションの廊下に入ってしまい戸惑いを禁じ得ない猫の声、
蒸し暑い夜に響き渡る、まるで人の子供が泣くかのような声。
なぜか近頃はやたらと「シャー」と尋常ではない威嚇の声がすることも増えてきた。
この町にも大分慣れてきたのだろうか。
きっとこの辺って猫に厳しい環境だろうなと思いながらも、いつの間にかその猫の争う声がする夜に安心している自分がいる。