はりがねの星座 荒井美波「行為の軌跡Ⅳ」@Medel Gallery Shu

 手書きの文字が立体へと翻訳される。薄い原稿用紙は革になり、インクの文字は針金で描かれる。それはたんに物体の異なる物体への翻訳であるのではなく、それが記された時間をふたたび可視のものとする移行でもある。

 光年という単位の距離をへて、この場所からだからそう見える星座のように、その文字は一画ごとにカンバスに刺さっている。先に書かれた線は奥に、後から書かれた線は手前に。だから正面から見たときの文字とくっきり革の上に落とされた影とはまるで様子が違う。その隙間、その差に時間、あるいは持続がある。

 針金による臨書にかけられた途方もない時間が、かつてその作品が書かれた時間に憑依する。その過程で、言われているのとは反対に、元の字を書いた人の身体性はそぎ落とされていくのではないかという気がした。あえて比喩を引きずるならば、星々の熱も個々の動きも届かないところにこの軌跡は辿り着いている。

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