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そそのかしの波に乗る

そそのかしの波が来た時、人はどう振る舞うか。
素直にその波に乗っかるか、何かしら理由をつけて抵抗するか。

今年1月、「盛岡という星で」(通称:もりほし)第2期インターンシップの全プログラムを終えた。総勢20名のインターンシップ生が5つのゼミに別れてそれぞれのミッションを実行する。「盛岡という星で」は、盛岡市の関係人口促進のための事業として2018年からSNSを中心に盛岡の魅力を発信している。2021年には川徳cube-Ⅱの地下1階に「BASE STATION」と呼ばれるリアルに人が出会う交流拠点をつくった。インターンシッププログラムも「BASE STATION」を会場にレクチャー、ディスカッション、個別相談等を実施した。

桃生ゼミでは「これも盛岡?へんてこイベント」と題してゼミ生6名がそれぞれイベントを企画して実行するミッションが与えられた。詳しくは別の機会に改めて書くが、今回はインターンシッププログラムを通して起きた一人のゼミ生の変化を紹介したい。

大学1年生のYくんは、進学を期に地元の青森を離れ盛岡で新たな生活をスタートさせた。初めて会ったのは昨年8月下旬。桃生ゼミの初顔合わせの日だ。最初の印象はどこか緊張気味で、女性陣のパワーにやや押され気味だった。「盛岡について知りたい」と参加の動機をまじめに話すYくんだが、人の目を見て話せないぐらいの人見知り感が出ていた。

イベントを実施する上でゼミ生の特性を知るべく、趣味や好きなことを聞いたが、他の人に比べてなかなか出てこないYくん。あれこれ話を引き出すうちに趣味が少ないことや彼の性格を売りにして青森からやってきた青年が盛岡で趣味を探すという企画にしようと決まった。「盛岡で趣味を探す男」としてツイッターを開設。毎日投稿を条件として、盛岡市内の各地を巡って写真とともに短いレポートを挙げてもらった。

最初はあまり乗り気じゃなさそうだった本人も、投稿を重ねていくうちに周りからの反応をもらえるようになり、少しずつ自信をつけていった。その後、「自分は粘土が好きだった」ということ思い出し、SNSでリクエストを募集し盛岡の名物などを紙粘土でつくり展示する「粘土で作る盛岡」展を開催した。その後、インターンシップの最終日に自身の活動報告をしたYくんだが、本人のなんとも言えない達成感に浸る顔と会場に漂う異様な空気が今でも印象に残っている。「去年まで受験のための勉強ばかりしており、決まった答えを求めるために日々頭を働かせていた。しかし、インターンで正解のないものを手探りで進める経験を積むことができ、一皮剥けた気がする。おおおおおおお。」と充実感をテンション高めでツイッターに投稿をしていた。

展示の準備をするYくん

2月には交流会を開催し、Yくんには改めて「粘土で作る盛岡」展について、企画の背景や実践してみての感想を話してもらった。その時、書いてもらったフリップには昨年夏に会ってからの明らかな変化が見受けられた。

赤枠がYくんのフリップ

注目するポイントは3段目。「Q3.活動をはじめて変わったことは何ですか?」という質問にYくんは「行動力がついた。女性との会話が可能に。」と解答した。最初に会った人見知りのYくんからは想像できない解答だ。異性との会話もままならなかった彼が、インターンシップを通して、自分で企画を考え、実践し、他のゼミ生とのコミュニケーションを深めるうちにいつの間にか人と話すのも前ほど苦手意識がなくなったようだ。すごい進化だ!大きな拍手を送りたい。

Yくんの場合は自分の意志でインターシップに参加したものの、最初は、遠慮がちだった。しかし、ゼミ生や講師からの「やっちゃえ!やっちゃえ!」という半ば強引なそそのかしに身を委ねた。最初はやらされ感が出ていたが徐々に楽しめるようになって、最後には自分でも気づかないほど大きな変化が自身の中に起こった。それが良いか悪いかわからないが、時にそそのかしの波に乗るという素直な姿勢が思わぬ自体を巻き起こしたというとても印象深いエピソードである。

たらればを言えばきりがないが、人はそそのかせされて時にどう振る舞うか。そんなシチュエーションに出くわした時、Yくんの話を思い出してほしい。


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