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売上拡大と利便性向上の鍵は、深い顧客理解にあった。エンタープライズ向け事業のPdMが語る仕事の面白み‐前編‐

※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。

【プロフィール】
名前:ケビンさん
所属:エンタープライズビジネス部門 エンタープライズ プロダクトグループ グループ長
入社時期:2017年8月
職種:プロダクトマネージャー(PdM)

【ケビンさんのこれまでの仕事について】

モノタロウに入社されてから、どのようなお仕事をされて来られたのでしょうか。
もう6年ほど前の話ですが、実はフロントエンドエンジニアとして入社しました。当時は、エンジニアの仕事になるべく集中して経験を積んでいきたいというモチベーションが高かったんですが、徐々に「どう作るか」よりも「なにを作るか」を考えたい意欲が強くなりました。

モノタロウの社内では議論がいつも活発で、同僚も上司も新しい提案を前向きに検討してくれるので、私も周りの人と考えながらプロジェクトを考案しているうちに、フロントエンドと関連が強いということで、モノタロウのUI/UXデザインを担うデザイングループのマネージャーになる機会をもらいました。そこから4年ほどかけてデザイナーと一緒にデザインシステムを作ったり、UXリサーチの取り組みを立ち上げたりすると、次に「なにを作るか」を考えるためにもう一歩踏み込んだ立場である、プロダクトマネージャーに挑戦する機会をもらいました。

MonotaRO.comのサイト内におけるナビゲーション」を担当する組織として、デザイナー、エンジニア、アナリストが所属するCFT(クロスファンクショナルチーム)をプロダクトマネージャーとして初めて持ちました。ついに頭の中で思い描いていた仮説検証の実験や新しい機能をチームで開発できるようになり、その当時は難しさを感じながらも、それ以上に強いワクワクした気持ちがあったのをよく覚えています。

初めてプロダクトマネージャーになったとき、悩んだり迷ったりすることはありませんでしたか

最初はUIデザインシステムを導入するために、商品ページのデザインを刷新する案件を進めていました。テスト結果の定量データから課題を見つけることに当時の私は全然慣れていなくて、ABテストに負け続けていた時期がありました。何回か改修を重ねて、最後に新しいデザインが勝つ結果にはなりましたが、そこに至るまでの大変さと不安にかなり鍛えられたと思います(笑)

ただ、その中で大事な気付きがあって、なによりもよかったのはチームのみなさんに頼るやり方を見つけられたことです。それまでは案件を抱え込んで、一人でより完璧な企画立案を目指そうとしていましたが、自分一人ではうまくいかないので、少しずつそのときに考えることをオープンにしていきました。背景を説明したあとに「これどう思う?」とか「この課題があるけど、〇〇さんだったらどうする?」というようなコミュニケーションを続けているうちに、チームの仲間も「なにを作るか」に関心を持ってディスカッションに積極的に参加してくれたおかげで、なかなか思いつかないような観点が次々と見えてきました。

その観点を活かした仮説検証をして、チームの発見を踏まえてもう一度作り直すサイクルを経て、プラスの結果が伴う案件が少しずつ増え始めました。チームを巻き込んだときの案件はうまくいきやすいという学びが、私にとって非常に大きな刺激になって、次のステップに進むための原動力にもなったと思います。

【エンタープライズ プロダクトグループの立ち上げの経緯】

エンタープライズ プロダクトグループが出来るまではどのような体制だったのでしょうか?
エンタープライズビジネス部門は大企業向けサービスを管轄する部門なのですが、さかのぼって背景を説明すると、モノタロウが大企業にサービス提供を始めたのは2010年頃で、私が入社した2017年の時点では、もうすでにモノタロウ全体の成長率を上回る高い成長率を実現していました。それが年々続いた結果として当然、当社の売り上げ全体でのシェアも大きくなりました。

一方、その成長を作り続けるのに人もリソースもたくさん必要になるので、大企業ビジネスの体制も短期間に2度変化しました。2021年にエンタープライズビジネス部門が新しく設立され、翌年の2022年に当時のIT部門にあった大企業顧客を担当するエンジニア組織も、新しくエンタープライズビジネスエンジニアリング部門として独立しました。会社全体を見渡すと大企業向けビジネスにより注力できる組織づくりが、その時点である程度進んでいたと思います。

しかし、「なにを作るか」と「どう作るか」の話に戻ると、PdM(プロダクトマネージャー)がいない大企業ビジネス部門では、新しい組織ができてからも依頼ベースで個々の案件をこなすのに、関係者が手一杯だったと聞いています。例えば、新しく連携する企業が増えると、スピードを追求するあまり技術的な負担が増え、また、新規連携と顧客の要望への対応に追われていると、一歩引いた立場から開発戦略を練る余裕がなくなります。

専任のプロダクトマネージャーがいてもいいくらいの量でしたが、とりあえずMonotaRO.comとの兼任という形で、私が大企業のPdMにアサインされました。大企業ビジネスを詳しく知らない私にとっては、まずはキャッチアップをしないといけなかったので、顧客要望の理解とすでに動いているプロジェクトの整理から着手して、バックログにある案件候補の優先度を関係者と決めることに時間をかけました。その後、徐々に顧客理解と新しい案件の企画を行うための時間を確保でき、現在はその全体をPdMとして担当しています。


エンタープライズプロダクトグループの立ち上げの背景と今のグループの体制について教えてください。

大企業の売上比率が全体の25%を超えてきており、成長率を考えるとやはり専任としてプロダクト観点で見ることができるチームが必要になりました。これが、今いるエンタープライズ プロダクトグループを立ち上げることになった主な理由です。
私たちは5人の小さなチームで、プロダクトマネージャーのほかにマーケティングの企画担当とデータ分析に強いアナリストがいます。現在は人数が少ないので、あまり縦割り組織にしていなくて、むしろそれぞれの担当案件にチームワークで貢献してくれているのが、私たちの強い特徴だと思っています。

どのような人と関わることが多いですか?

いつも一緒にいるのはPdMの率いるCFT(クロスファンクショナルチーム)のデザイナー、エンジニア、そしてアナリストの人たちです。所属部門は違いますが、CFT専属の担当者としてジョインしてくれているので、とても心強いです。ほかにも、案件によってはカスタマーサポートが関わったり、顧客の連絡窓口である営業担当が参画したりすることもよくあります。

大企業ビジネスにおけるプロダクトマネージャーとはどんな役割を担われているのでしょうか?

ざっくりいうと、取り組む案件を選んで、やることの優先順位を決めて、エンジニア、デザイナー、アナリストと一緒に取り組みながら開発企画から評価と最終判断まで一貫して意思決定するのが大企業PdMの仕事です。ただし、思い付きで案件を選ぶわけではなく、全社目標のOKRや、部門のOKRを踏まえて重要度の高いものを選びますので、選んだ案件がよりハイレベルな目標の達成のためにある位置付けとなり、基本的に紐づいているようになっています。

この一連の流れを始めるために、まずは「なんのために、なにを作るか」を言語化してみて、背景を踏まえた目的を定義したアウトプットを出します。モノタロウでは数年前から「Design Doc」という、ある程度決まった形式の企画書を作る文化が定着しています。マーケティング施策でも、システム開発の伴う案件でも、Design DocをまずPdMが書き起こして、チームメイトと内容を練る作業からプロジェクトが始まります。

Design Docが仕上がれば、次は自分のクロスファンクショナルチーム(CFT)のみなさんに共有して、何度かのディスカッションを経て、やることが明確になれば開発と制作のフェーズに入ってもらいます。
ちなみに、モノタロウのPdMはプレイヤーにならないのが決まりなので、ここからは開発者やデザイナーに任せるのが基本です。というか、それが目指す理想ですが、先ほど言ったようにエンタープライズ プロダクトグループは人数が少ないので、私は未だにちょっとしたJavaScriptを書いたり、UIを作ったりする仕事も、たまにやってしまいます(笑)あまり良くないとわかっているのですが、目的達成に向けてそれがベストな方法なら、一時的にはOKだと考えてます。

ケビンさんありがとうございます。
後編では、PdM目線で「MonotaRO.comとの大企業ビジネスとの違い」をメインに、大切にしている考え方までお話いただきます。
後編もぜひお読み下さい!