見出し画像

1%の改善が25億円のインパクトを生む世界 - モノタロウのデータサイエンティストならではの仕事の醍醐味とは

資材調達のプラットフォームとして年間売上2500億円を誇るMonotaRO(モノタロウ)。モノタロウの成長サイクルのなかでは、「データ・アルゴリズム」による改善は競争優位性・お客様への提供価値を高める上で非常に重要視しています。こうした世界で活躍しているのが、データサイエンスグループBのグループ長を務める青井です。大学院で物理学の研究に携わり、博士号を取得した後に企業のデータサイエンティストへキャリアチェンジした経験を持つ青井に、データサイエンスの力で産業界に変革をもたらす仕事の魅力について語っていただきました。
(※本記事の内容は2025年1月時点のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。)


モノタロウの推薦サービスの開発を担うデータサイエンス-Bグループ

――まずは、青井さんの現在の業務内容について教えていただけますか。

私が所属するデータサイエンス部門 データサイエンス-Bグループは、ECサイト 「モノタロウ」や大企業向け購買管理システムにおける推薦サービスの開発を担当しています。具体的には、サイトの利用状況などをもとにした推薦サービスの企画立案やサービス改善のためのアルゴリズム開発を行っています。また、エンジニアと連携をしてアルゴリズムを提供するためのシステムの開発やリリース後の性能評価を行っています。

グループ長としての役割は大きく3つあります。

1つ目は、中長期におけるグループの戦略立案や半期ごとの目標設定と評価です。推薦機能による利便性の向上に向けて中長期のロードマップを定めた上で、半期ごとのサービスや技術開発の目標を設定しています。モノタロウではGCP上でデータサイエンス関連の機能開発を行っていますが、そこにおけるシステム導入・機械学習システムの開発計画、予算の策定も行っています。これらの計画に沿って進行状況を管理しながら案件を推進していきます。

2つ目は、組織の運営・運用です。メンバーの業務上での課題の解決や成長を支援することを目的として1on1を実施しています。1on1にて課題解決のためのアドバイスや内省を支援するためのフィードバックを提供しています。また、今後の開発計画をもとにした採用計画の作成や面接も担当しています。

そして3つ目が、技術開発の推進です。データサイエンス部門では特に技術力の向上を重要視しており、論文のサーベイやイベントへの参加を通じて最新の技術情報を収集することを推奨しています。これまでにWSDMやRecSysなど国内外の学会への参加を行っており、検索・推薦の領域を中心にどのような技術発展があるのか最新動向をキャッチアップしています。最近では言語処理学会(NLP)やデータ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM)への論文投稿も行っています。また、これらの活動を通じて得た情報をもとにサービス提供に必要な技術の検証や開発を行っています。


アカデミアの研究経験は企業での仕事にも活きる

――博士号を取得してからデータサイエンティストとして民間企業へ就職するというキャリアは、当時としては珍しかったのではないでしょうか?

そうですね。大学院では高エネルギー天体現象の仕組みの解明に取り組んでいましたが、2011年に博士課程を修了する時点で、アカデミアで研究者としてのキャリアを続けるか、民間企業に就職するか悩みました。ただ、博士課程までで研究は一区切りついたと感じていたこともあり、民間企業でのキャリアを選択しました。

データサイエンスには物理学との共通性が多く、機械学習や統計解析において大学で身につけた専門性を活かすことができます。また、研究と企業での仕事にも共通点が多くあります。特にデータ活用の分野では、科学的にデータを分析してサービスに反映させていくという点で、研究で培った科学的な思考法が活きています。

実際に、1社目のネット広告企業では、データ活用を進めるにあたって、専門知識を持つ人材を必要としていました。博士号を持つ人材がWeb企業に入社するケースは、当時はまだ珍しかったと思いますが、データサイエンティストとして広告配信の最適化に携わらせてもらいました。科学的なアプローチを活かせる点を評価してもらえたと思います。

――実際にネット広告企業で働いてみて、いかがでしたか。

広告配信を最適化するアルゴリズム開発に7年間取り組みました。事業開発やマーケティングの知識をゼロベースで学びつつ、博士課程で培った専門性と掛け合わせることで価値を出せたと思います。アルゴリズムの改善が直接事業成果につながる実感があり、やりがいを感じていました。大学や企業との共同研究にも参加させていただき、大学での経験を直接活かす取り組みも行うことができました。

一方で、広告主のもとへ訪問してヒアリングする機会はあったものの、あくまでシステムやアルゴリズムの開発がメインだったため、お客様の本質的な課題を理解することの難しさを実感していました。広告主の抱える課題や広告を受け取るユーザーのニーズを理解することでデータサイエンティストとして提供できる価値を増やすことができるだろうと感じていました。

こうした経験を経て、よりお客様に近いところで仕事をすることで顧客理解を深めてより良いサービスを作っていきたいと思うようになりました。


多種多様なデータをサービス開発に活かせるデータサイエンスグループの魅力

――そして、モノタロウへの転職を決意されました。その理由を教えていただけますか?

モノタロウはお客様の資材調達を効率化することを目指して、ECサイトの開発や倉庫の運営など幅広い業務を行っています。入社を決める際に、当時の部門長とZoomで直接話す機会があり、モノタロウでは全社的にデータ活用を進めており、データサイエンスによって幅広い業務でサービス改善の余地が大きいことを知りました。ここであれば、ECサイトの利用状況や顧客属性など、詳細かつ多種多様なデータを活用してサービス開発ができると考えました。

また、分析やサービス開発に活用するためのシステム基盤の構築を進めていることも決め手になりました。入社当時の時点で全社のデータ集約のための基盤の構築ができており、データサイエンティストによる分析や開発の土台ができていました。また、データ基盤や機械学習基盤の構築に注力をしており、アルゴリズムとシステム基盤の双方に伸びしろがあると感じました。

当時のグループ長と論文についてディスカッションする機会を得たことも印象に残っています。彼も博士号を取得している方ですので、ディスカッションの雰囲気は、まるで大学の研究室のようでした。最新の研究成果を議論し、それをどうサービスに活かすかを考える。この姿勢が、モノタロウのサービスの競争優位性につながっているのだと実感しましたね。

――入社後の印象はいかがでしたか。

事業の成長スピードと、それに伴う組織の変化の速さには驚きました。データサイエンス組織も、入社時と今では構成が大きく変わっています。また、EC関連のデータだけでなく、物流や商品情報、カスタマーサポートなど、多種多様な領域のデータが存在することも印象的でした。これらのデータを理解し活用することの難しさも痛感しましたが、同時にその可能性にも魅力を感じました。

――モノタロウでの仕事で特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

モノタロウでは検索や推薦をパーソナライズした上で提供しています。お客様の商品探しをより効率化するため、リアルタイム行動をもとにしたパーソナライズ基盤を構築するプロジェクトが印象に残っています。当初、新しい基盤によるパーソナライズの有効性を検証するテストを実施しましたが、サービスの利用率向上を達成できずにプロジェクトの推進力を生むことに苦心をしていました。アルゴリズムやシステムの複雑性が高く、開発や検証に工数を要することが一つの課題となっていました。そこで、最も改善の見込みが高いサービスを定めた上で、提供機能も検証に必要なものに絞ることにしました。また、お客様の行動分析をもとにアルゴリズムをカスタマイズする取り組みを進めました。その結果、パーソナライズサービスの利用率の向上を達成することができました。このプロジェクトを通じて、アルゴリズムの高度化だけでなく、モノタロウの顧客特性に応じたアルゴリズムを提供することの重要性を改めて感じました。技術と顧客理解の両方が必要だということですね。


データに基づいた科学的なアプローチで、社会に貢献するサービスを

――青井さんが仕事をするうえで大切にしていることは何ですか。

科学的なアプローチで本質的な課題を理解し、解決していくことを大切にしています。モノタロウでは一貫して検索・推薦のパーソナライズに取り組むことに加えて、データ活用を通じてより良いサービスを作り出すことを常に意識しています。

――データを活用した課題解決を意識されているとのことですが、モノタロウでは具体的にどのようなインパクトがあるのでしょうか?

モノタロウでは「資材調達ネットワークを変革する」という企業理念を掲げて、現在は900万ユーザー以上の方々に利用していただいています。大きな法人ユーザーの場合は、その背後にさらに多くのエンドユーザーがいます。つまり、私たちの仕事は非常に広範囲に影響を与える可能性があるということです。

たとえば、検索機能の改善は、単なる利便性の向上だけでなく、お客様の時間節約にもつながります。多忙な製造業の現場で、必要な商品をすぐに見つけられるようになれば、そのぶん他の重要な仕事に時間を使えるようになる。つまり、私たちの仕事は、間接的にですが、日本の産業全体の生産性向上にも貢献していると言えます。

また、年間売上では2500億円規模のサービスに成長しており、1%の改善を行うことできれば25億円のインパクトに繋がります。データサイエンスによって、このような規模の事業貢献を行うことが可能です。

――最後に、青井さんの今後のキャリアビジョンについて教えてください。

データサイエンスやAI技術は日々めざましい発展を遂げています。この技術の進歩によって、私たちはより多くの社会的課題を解決できる可能性を秘めています。私自身、そのような課題解決に貢献していきたいという強い思いがあります。1人のデータサイエンティストとして、技術の進化に遅れをとらないよう、継続的に学習を重ね、最新の技術を効果的に活用できる人材であり続けたいと思っています。

また、グループ長としては、データサイエンティストがより良い環境で働き、チームとして成果を出せる組織づくりに力を入れていきたいですね。一人ひとりの力を最大限に引き出し、社会に貢献できるサービスを生み出す———。そんなチーム作りを目指しています。

私たちの仕事は、単なる数字の改善ではなく、実際の人々の生活や仕事を良くすることにつながっています。その責任と可能性を常に意識しながら、これからも挑戦を続けていきたいと考えています。


モノタロウでは、新たな仲間を募集しています!