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コールセンターの担当者もSQLを叩く。モノタロウのデータドリブンな文化に惚れた
※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。
モノタロウの継続的なビジネス成長に伴い、月間セッション数や注文数は大幅な増加を続けています。指数関数的に増えるデータを扱いやすくするための技術的探求は尽きません。
なかでもデータハブの整理・構築を中心に技術開発・研究に携わるのが、エンジニアの中村さん(ECシステムエンジニアリング部門 EC基盤グループ コアロジックチーム)です。データ領域で「冒険したかった」という彼が、モノタロウを選んだ理由や技術的な面白さ、今後の展望について話を聞きました。
データが“いくらでも増え続ける”サービスでのチャレンジ
——はじめに、現在の業務について教えてください。
主にデータハブの整理や構築です。実際のデータからバッチ処理でデータを作り、API化していく手法を開発・研究しています。プラクティスを他の開発者に展開するなど、実践や発見を組織全体に広げています。
——前職でも、現在のようなデータ周りの技術に携わってきたのでしょうか?
そうですね。前職のSaaSベンチャー企業ではチャットサービスの開発・改善を担当しており、膨大なデータを扱うためのデータ変換の手法やAPI構成などを考えていました。
チャットサービスは、導入企業の数やユーザー数、メッセージ数がいくらでも増えていきます。その組み合わせパターンや数も増えていくので、処理にかかる時間を計測するのは非常に難しくなります。そうした状況にどう対処するかといった知見や経験は、現在の業務でも非常に活きていますね。
それ以外にもGoogleアナリティクスの埋め込みなど、フロント寄り、マーケティング寄りの開発にも関わっていました。
——SaaSベンチャー企業に入社する以前から、データエンジニアリングやマーケティング領域に関心があったのでしょうか?これまでのキャリアや技術的な変遷を教えてください。
大学院では統計の基礎理論や確率解析学を専門に学んでいまして、シミュレーション用にプログラムも書いていました。今ならデータサイエンスなどに活きる領域でもありますが、仕事でプログラムを書く方をもっとやりたいと思いました。そして、ITベンダーにプログラマーとして就職し、システム開発を担当していました。プログラミングは好きでしたし、顧客の求めている製品を開発するのは非常に楽しかったですね。
その後、慣れてくると自社サービスの開発にも興味が湧いてきて、P2Pのファイルシェアリングシステムを開発する企業に転職し設計や開発、サポートに携わりました。そこでもしばらく経つと新しい挑戦をしたくなって、より技術的に幅の広さが求められる前職のSaaSベンチャーに至ったという感じです。
技術的な変遷でいうと、最初はScalaやJava、その後AngularJSやReact、React-static、データやマーケティングの領域でPythonを触ってきました。
開発者以外もデータ処理を行うカルチャーに魅力を感じた
——モノタロウに入社したのはどのような理由があったのでしょうか?
前職でデータやマーケティング領域の一定の経験を積むことができたので次のチャレンジを探していました。
モノタロウは膨大なデータを持っているだけでなく、開発者以外もデータを扱える環境であると知り、興味を持ちました。
——なぜ「開発者以外もデータを扱える環境」に興味を持ったのでしょう?
開発や改善を効率的に進めるうえで、職種問わず同じデータを見て会話できることが非常に重要だと、前職の頃から感じていたからですね。
例えば、開発者の見ているデータをマーケターが見ていないといった場合、現状の認識が異なるため、戦略や施策を議論しようにも前提の共有から始める必要があります。
カジュアル面談で、CTOの久保さんと話し、モノタロウはあらゆるデータがオープンになっていること、開発者かどうかに関わらずデータを扱って意思決定をすることを知り、開発が進めやすそうだなと思いました。
実際に入社してからは、社内のデータがBigQueryに集約されていて、マーケターやコールセンターの担当者もSQLを叩いていたり、簡単なバッチを作って運用していたりして驚きましたね。
私の所属している部門ではPythonを広く使っていることもあって、「ここ自動化できそうじゃないですか?」といった提案やコーディングの相談も活発です。日頃のコミュニケーションからも、互いの職域や視点を理解しようとする姿勢を感じています。
——「開発者以外もデータを扱える環境」が整っていること以外に、転職の決め手になったポイントはありますか?
自分自身の経験や関心領域と、「データ処理の手法をこれから新しくしていく」というモノタロウの注力領域が、非常にマッチしていたのもありますね。
また、事業が成長してきてデータが貯まってきたフェーズだからこそ、データ周りで面白い研究が できそうな期待もありました。
実はデータ量の多さや当時のトレンドから、FinTech領域のスタートアップもいくつか検討していました。ただ、これから事業を伸ばし、データ量を増やしていくフェーズの企業が多く、そうした企業でデータ周りで面白い研究ができるまで待つよりも、今のモノタロウに入社するほうが、自分にとってはワクワクする冒険だなと感じました。
技術的な研究を通し、より良い顧客の体験に貢献する
——入社してから、ご自身が求めていたような技術的な挑戦、“冒険”はできていますか?
はい。入社時にはいくつかの候補から自分の関わりたいテーマを選ぶことができました。
現在は、バックエンドで新しい商品情報のデータを作ることと、そのデータをAPIに対してスムーズに届けること。二つを軸に、新たな手法を開発・研究しています。
モノタロウの商品点数は、今や1800万点を超え、属性も400万ほどに分かれています。それらの商品ごとに「倉庫にどれくらい在庫があるのか」「いつ頃から売り出すか」といった別のデータとの組み合わせが発生する。データや組み合わせの数が指数関数的に増えると予想されるなかで、どのようにデータを管理・整理していくかは冒険しがいのあるテーマです。
——「開発・研究」とのことですが、研究とは、具体的にどのくらいの期間で行われるものなのでしょうか?
期間は内容にもよりますね。今のテーマでの研究は1年ほどかけて取り組んでいます。昨年の3月くらいから試作兼プロトタイプの開発を進め、今は本番用に実証実験をしている最中です。次のステップで本番環境で使ってみることになるかなと思います。
こうした年単位の研究は比較的珍しく、大抵はもう少し短期の実践が多いです。モノタロウは開発が完全に内製化されているので、フロントエンドなどへの情報共有もスムーズで、実際にユーザーに使ってフィードバックを得られるまでが速い。スピード感をもって新しい手法を研究できる環境だと感じています。
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——最後に、今後モノタロウでチャレンジしていきたいことを教えてください。
お客様の体験をより良いものにするための施策へ貢献していけたらと考えています。
例えば、商品情報などのデータを更新したときにサイトへ反映するまでの時間の短縮に取り組みたいと思います。現在あるタイムラグによって、注文いただくお客様、商品の仕入元のお取引先様の両方に不便な思いをさせてしまっているところがあるからです。
今後は今までよりも更新頻度を上げていきたいと思っています。キャッシュするのも一つのやり方ですが、更新頻度を上げると、キャッシュが効きすぎて古い情報を呼び出してしまう可能性もあるので、高トラフィックな呼び出しに耐えうるAPIの構築が不可欠だと思っています。
こうした試行錯誤も含め、引き続き、開発・研究に尽力していきたいです。
——ありがとうございました!