「挑戦者の私たちは、もっと良くしていけることがたくさんある」新社長の田村が語る、モノタロウのこれから。
社長に就任し感じた「伸びしろしかない」ということ
ー 社長に就任されて半年が経ちました。現在の心境や考えについて教えてください。
非常に密度の高い半年でした。まず、就任初日に能登半島地震がありました。今でも被災され不便な生活を強いられている方も多くおり、改めてお見舞い申し上げます。社員の安全がいかに大切なものであるか、また、被災地の状況に対応するための物資供給をお正月休みからすぐに開始したのですが、状況を判断しての意思決定の責任とスピード感の重要性を実感しました。また、被災地への物資供給のために、自律的に改善をどんどん進める社員の姿が本当に頼もしかったです。
ー 周囲との関わり方には変化がありましたか?
就任以来、多くのお客様、国内外の取引先様や投資家、そして社員と話す機会を持つことができました。皆さんからは「当社の今後の展望はどうなっていくのか?」という点について大きな期待を込めたたくさんの質問をいただきました。これだけ多くの方にお会いできて期待をいただけるのは、当社が創業以来積み重ねてきた信頼があってこそです。社外的には、決算発表/株主総会/国内外IRなどの活動、社内的には取締役会、執行役会、タウンミーティングの取り仕切りなど、今まで経験してきたことのない世界をたくさん経験することができました。
ー 大きな変化があったのですね。それにより考え方に変化はありましたか?
会話や分析を通じて多くの質問をいただくことで、「モノタロウって改めてどういう会社なんだろう」「どうして成長を実現できたんだろう」「私たちの競争優位性は何だろう」と何度も自らに問い続けることにもつながり、その中で、今後の成長戦略である、顧客をMicro/Small/Mid/Largeと企業規模でセグメントして事業成長を目指すという方向性を示すことができました。
また、2023年はコロナ需要の反動等の影響もあり、それまでは15%以上あった売上前年比成長率が12.5%になったこともあり、今後の事業成長性について再度深く考える時期でもありました。その中で、モノタロウの今までの歴史を振り返ったり、事業成長サイクルと競争優位性の整理を行った上で市場シェアを改めて見てみると、まだまだこれから、伸びしろしかないことを確認できました。
また、社員の皆さんとは約350人くらいの方と1on1ができました。でも、まだ半分以下ですから、次の半年でもっと多くの皆さんと対話をしていきたいです。社員の皆さんと話をしていると、皆さんはモノタロウの企業文化、特に「他者への敬意」という部分をとても大事にしていることを改めて感じました。本当に、モノタロウは社内外に貢献できる意義ある仕事を、皆さんの力で実現している会社だと実感する半年でした。同時に、それはモノタロウが築いてきた貴重な財産であり、これをさらなる成長につなげていこうという、私の意志と感謝につながっています。
ー 社長の役割であるマーケットとの対話については、どう感じていますか?
一連の活動を通じて、経営実績や事業計画を自分の名前で公表し、それを自分の言葉で説明するというプロセスは、鈴木さん(現会長)が非常に重要と言われていたことなのですが、実際にやってみて、「なるほど、こういうことだったのか」と理解できました。投資家・マーケットからの質問は、時に厳しくはあるのですが、自分の言葉で回答することで、新たな視座を得られたり、逆に自分の中でストーリーができていく感覚も持つことができました。その中で、自分の知識があいまいなもの、経験がないような技術などにも何度も直面しましたが、それらのギャップをどうやって埋めて、正しい意思決定に活かすか、どのような情報を得て、どのような課題を解くべきなのかをよく考えました。今後は、情報収集のアンテナの感度を高め、しっかりと考え、行動に移すことが必要だと感じています。
「挑戦できることは何でもやろう」「小さく試してやっていこう」を、これからも
ー 創業メンバーではない初の社長として、「モノタロウ」という会社に対してはどういった気持ちをもっていますか?
私は、創業者メンバーではないこともあって、モノタロウの歴史の話を色々な方から聞くのが大好きです。瀬戸さん(創業者 名誉会長)や鈴木さん(代表執行役会長)や、当時の取引先様から話を聞くのも好きで、創業の地である立売堀(大阪市西区)や、本町(大阪市中央区)、尼崎(兵庫県)のオフィスには、実際にその地に行って歴史を感じたり、当時の座席表なども見せてもらったりしてイメージを膨らませています。これは当社らしいのですが、皆があまりに一生懸命働いていたので創業当時のオフィスで皆が働いている姿の写真はほとんどないのです。ただ、モノタロウには、社歴の長い人も沢山いるので、その人達にも沢山のエピソードを教えてもらいました。そうした話から、今では自分の頭の中でイキイキと、当時の社員の働く姿をイメージすることができています。
また、当社は創業期で資金が少なかった頃は、社員がチラシのモデルをして販促をしており、昔の社員の人のモデル姿を見ると、当時の空気を感じられるのも好きです。瀬戸さんは安全眼鏡や防護マスク、鈴木さんは作業着販促のためのモデル写真をしたチラシが残っています。
こうした話が好きなのは、皆が「昔はよかった」という感じではなく、「なんでもやれることは、なんでもやって、それで進化してきた」というカルチャーを感じられるからです。社歴の長い社員は、これからももっと色々変えたいという気持ちの方が多いです。「挑戦できることは何でもやろう」「小さく試してやっていこう」という積み重ねが当社の成長の強みであり、こうしたことが今につながっていると感謝の気持ちでいっぱいになりますし、この歴史を、今後につなげていきたいといつも思っています。
ー 正直なところ「これは大変だ」と感じた瞬間はありましたか?
6月に、社長面談(※)を実施して、重責を担っていることを改めて実感しました。いろいろな人の人生がかかっていることで、従業員の皆さんも相応の思いを持ってきてくれているので、全身で受け止めたいですし、面談がその人の人生にとって大きなものになるかもしれない。社長面談は、予想を超える大変さで1日分が3か月くらいに感じられるくらいの密度でした。業務上のことであれ、考え方であれ、おかしいと指摘してくれた時に、自分は今いろいろなことを変えられる立場にあるので、判断が必要になる。もし変えないとした場合でも、なぜ変えないのか、考えて真摯に説明していく責任があると考えています。
※社長面談:年に2回、一部の社員と面談を実施しています。賞与の時期に合わせて実施し、毎回150~200名程度の方が対象となります。現在の仕事の状況や今後のキャリアなどについてコミュニケーションを行います。
また、週報に関してよく質問されるのですが、部門長になって以来、週報は全社員分を金曜の夜や土曜日に読んでいます。2024年8月時点では、大体800通の週報が届きます。週報は、1通1通にある言葉やコメントで気持ちにグサっと刺さったり、ものすごい嬉しい気持ちになったりと読んでいるだけで多様な気持ちになります。AIなどでもっと良い読み方ができるのかもしれませんが、今のところは一件ずつ順番に読んでいくというやり方をしています。メールで届くのですが、後で返信しようと思うものには★(星)マークをつけて、まとめて返すようなやり方です。
私は担当者として入社したので、グループ長、部門長や執行役、社長などの上司が返信をくれると、とても励みになるのを実感してきました。なので、社長になって週報を読むときの責任感はより強くなったと感じていまして、読み方はかなり変わりました。大体週に20件くらい返信をしています。週報は当社の風通しの良い企業文化を体現していますし、会社の状況を一次情報で理解できる良さを感じています。何より週報の情報は会社の素晴らしい財産です。ただ、社員が増える中で、1通1通にかけられる時間がどうしても減ってしまう課題は感じており、この文化・資産をより活かしていく方法について考えていきたいと思っています。
前向きに学び続け、「敬意と挑戦」を力に、資材調達ネットワークの変革を進めていく
ー 田村さんは、モノタロウをどういう会社にしていきたいと考えていますか??
会社の規模は大きくなりましたが、現時点では、モノタロウが経営理念とする資材調達ネットワークを変革できたとは考えていません。市場規模から算出した市場シェアはまだまだ数パーセントです。まだまだ私たちは挑戦者で、もっと良くしていけることがたくさんあって、それを実現していくことができると思っています。モノタロウは、お客様から「助かっているよ、便利だよ」と言っていただけるようになってきていますが、間接資材購買の中でお客様にとっての「1番手」になりたい。現在は、間接資材購買がメインですが、購買の前後にある、企業における手間のかかるプロセスなどを我々のサービスで変えていけることがあるのではないかと考えています。例えば、商品設置に係るお客様の前後工程(工事会社を探したり、見積りを取ったり、商品を設置したり、入れ替え品を廃棄したり)を引き受けることで、今まで以上に時間価値を提供することができると考えています。他には、商品本体と備品を一緒にお届けできるように備品を過剰に在庫している企業もあり、そういう場合はモノタロウがきちんと納期通りに届けられれば、過剰在庫分のスペースや管理のオペレーションはモノタロウに丸投げできることと同じになります。そういったところにも入り込める余地はあると考えています。
また、これからも、敬意と挑戦を大事にしているカルチャーは大切にしていきたいです。このカルチャーを維持するためにも会社が成長していることが重要だと思います。会社が成長しているので失敗を恐れずに挑戦を続けられ、次のアクションを前向きに考えることができます。
ー テクノロジーを活かしたデータドリブンな企業という側面から見たときには、いかがでしょうか?
モノタロウに入社して感動したのはデータがきれいであることでした。私はコンサルティング会社で複数の企業様を担当させていただいたり、前職などの経験から、様々な会社のデータは見てきたと思います。ですので、このようにデータが綺麗な状態であることは凄いと入社初日に感じたことです。これは、当社が組織として、正しい現状分析と次なる改善をする上で、その重要性がわかった上で投資とデータドリブンな文化を築いてきたからです。データを整備・メンテナンスするグループがあって、扱いやすい基盤が作ってある。それによって、本業に集中できるし、データに基づいた判断をすることができています。また、データが整備されていることで、機械学習などのテクノロジーの実用範囲が高まります。データが使いやすいことは、企業文化や仕組みとして実現されています。ただ、事業規模や組織が大きくなったり、機械学習も新たな技術がどんどんでてきたり、新たな顧客セグメントという方向性のもとで、また新しいデータ基盤の整備の必要が高まっていますので、データ基盤の構築には今後も期待しています。
ー これからの成長に向けて、大事にしていきたい考え方などは、ありますか?
「Keep Young ~学び続けることで若さ、前向きな気持ちを持ち続ける~」
この言葉は、当社が経営陣を約10年単位で交代する際にも使った言葉ですが、一部の人から「Young」ということで、年齢が上がった人は”若い人に引き継ぎ業務を中心にしていくべきだろうか”という年齢面を気にする声があがりました。
そこで、タウンミーティング(※)、また当社の学びのイベントでもあるManabi Con(マナビコン)(※)で、以下の言葉を説明した後、年齢を問わず皆さんからの週報でポジティブな反応が沢山ありました。
学び続けることで、若さ、前向きな気持ちを持ち続ける。この会社はまだまだ変革できることがある、Keep Young、その気持ちをみんなが持ち続けることで、成長ができ、自律的な行動ができると信じていますし、それに多くの人が共感してくれたことは嬉しかったです。
事実、創業者の瀬戸さん、そして鈴木さんは社長退任後も、新たな環境のもとで常に誰よりも学び続けています。瀬戸さんは株式会社LIXILのCEOとして、鈴木さんは、月の半分はシカゴで親会社であるGrainger社での仕事をされていて、そこでの新たな学びの量は物凄いです。そうした二人の学び続ける姿は常に若く、だからこそ私も学び続けなければと刺激を受けています。
※タウンミーティング:月に1回、全社員に対して、社長から現状や今後の方向性、共有事項等を説明しています。
※Manabi Con (マナビコン):業務を通じて得た学び(Manabi)を、各プロジェクト内で振り返るだけでなく社内の公式な発表の場(Conference)で部門・職種を越えて共有するというコンセプトで実施している社内カンファレンスです。
ー より一層の変革を進めていくために、社内の各組織にはどういった期待をもっているのでしょうか?
モノタロウは、会社の成長戦略を進めるためにOKR(※)を導入しています。2019年頃に、1部門からパイロット的に取り入れ、今は成長戦略に結びつく半期ごとの目標を全社OKRとして運用しています。これはよく機能しているのですが、最近の課題は、ちょっとOKRの存在感が強くなりすぎているようにも感じています。OKRは重要なんですが、それだけをしていれば良いというものでもなく、OKRにとらわれない日々の試行錯誤や情報収集、仮説検証など、小さくチャレンジし、兆しや気付きを得ていくことも大切だと思います。そういった皆さんのアクションの中から発見が生まれて、さらに意義があることがOKRになると楽しいですよね。私は来期のOKRは何をしようかと考えることが楽しいです。グループ長になって以降は来期のOKRは自分が考えてきたネタをやりたいと考えながら、その期のOKRに取り組んでいます。
※:OKRとは、Objectives and Key Resultsの略で、目標設定や目標管理の手法のことです。モノタロウでは、半期ごとにOKRを定めて、成長に向けた取り組みを進めています。
ー 最後に、今後モノタロウで働きたい方に向けて、メッセージをお願いします!
会社の規模は大きくなり、売上高は連結で2500億円を超えましたが、モノタロウは今も挑戦者だと考えています。そして、企業理念である「資材調達ネットワークを変革する」という変革に向けた旅路は始まったばかりで、伸びしろしかないと考えています。モノタロウでは、まだまだ取り組めること、世の中に貢献できることががたくさんあります。
私は、挑戦と敬意をもって仕事がしたいと思いますし、挑戦者として一緒にやっていきたいという方に、仲間に入っていただきたいと考えています。ぜひ、一緒に成長していきましょう。
モノタロウでは、「敬意と挑戦」をもち、資材調達ネットワークの変革を進めていく仲間を募集しています!