「モノタロウを通じて、日本、世界を変え、世の中を良くしていく。」副社長 甲田のキャリアストーリーと、今の想い。
今回の記事は、執行役副社長 甲田へのインタビュー記事です。弁護士、戦略コンサルタントを経験後、当社に入社。キャリアの裏側と、そこで感じたこと。そして今の考えや想いについて伺いたく、インタビューを実施しました。
モノタロウに入社するまで
世の中を変えていきたいと考えた弁護士時代
ーまずは、大学時代について教えてください。どのような学生だったのでしょうか?
大学では、体育会の合気道の主将をやっており、武道に明け暮れる毎日を送っていました。法学部に入ったものの、当初、司法試験を受けようとは思っていませんでした。大学3年生になり、周りが司法試験の勉強を始めたことをきっかけに、将来のことを考え始めました。そして、頭を鍛えなおす意味でも、やり遂げるという経験を得るためにも、司法試験に合格し、法律家を目指すことにしました。大学4年生の時に初めて司法試験を受け、その2年後に合格することができました。勉強がある程度進んでくると、一緒にやりませんかと声をかけてくれる人がいて、同じ目的を持つ人たちと勉強会をすることで実践的に準備を進めることができました。
ー最初は弁護士志望ではなかったのですね!合格後は、海外と関わりのある法律事務所に入られたそうですが、これはどういった背景がありましたか?
英語は特に得意ではありませんでしたが、仕事では英語も使っていきたいと思い、合格後は、渉外事務所として知られる法律事務所に入りました。当時は、弁護士としてオールラウンダーになりたいと思っており、まずは契約の落とし穴を理解し、生じた紛争を解決するスキルを身に着けようと考え、訴訟・紛争解決のチームに入りました。そこでは、M&A、資産証券化、システム開発など、企業間の様々な取引に関わる訴訟や紛争解決を担当しました。担当した案件の中で最も時間をかけたものの一つに、銀行の不良債権に関する紛争案件があり、案件に関わる中で、企業の業績を向上させていくことが経済にとってとても重要ということを強く思いました。
ーその後、どのような行動を取られたのでしょうか?
5年くらい東京で仕事をした後、アメリカのロースクールに留学しました。1年目は客員研究員として勉強し、2年目に別のロースクールで修士号をとりました。留学先の大学にはビジネススクールもあり、1年目は、ロースクールの授業に加え、ビジネススクールの授業も受けました。ロースクールのM&Aの授業とビジネススクールのM&Aの授業の両方に出席すると、ケースメソッドで解を導いていくビジネススクールの授業が面白く、自分の専門を法律分野以外にも広げると、世の中により貢献できるのではないかと考えるようになりました。法律は世の中がうまく回っているからこそ必要になってくるもの。世の中でうまく回っていないところがあれば、まずは、世の中をうまく回すための取り組みができないかと考えました。そして、ビジネススクールのケースに登場していた戦略コンサルタントという仕事に興味を持ち、帰国後に転身しました。
コンサルティング会社で鍛えられた5年間
ー大きな転身となったのではないかと拝察します。新たな仕事にはどのように向き合われたのでしょうか。
戦略コンサルティング会社には5年くらいいましたが、最初の2、3年は、ほとんどバリューを出せず(付加価値を生み出せず)、冴えない評価が続きました。入社した当時は、リーマンショック直後で、会社に依頼される案件よりもコンサルタントの方が多いのではないかという印象で、案件のメンバーに選ばれない期間もそれなりにあり、筋のいい仮説を立てた上で議論・検証を経て進化させるという、いわゆる仮説思考に慣れるまで、特に最初の1〜2年が厳しかったです。表計算ソフトやプレゼンテーションソフトもほとんど使ったことがなく最初は苦労しましたが、同じチームの人に横に付いて教えてもらったりしたおかげで、徐々に使いこなせるようになりました。
ー今となっては信じがたい話ですね。その後はどのような経験をされたのでしょうか?
2、3年経ったぐらいで、幾つかの海外案件を皮切りに徐々に成果に自信がもてるようになっていきました。クライアントからフィードバックを受けつつ国内外のコンサルタントと共同で案件を仕上げ、クライアントに解を提供してやる気になってもらう過程は楽しかったです。また、コンサルタントとして一生懸命取り組むことで、問題を構造化し、掘り下げて問題点を見つけ、打ち手を考えるというスキルを身につけることができたのも収穫でした。
モノタロウとの出会い
ーそこから、モノタロウへはどのように繋がっていくのでしょうか?
コンサルタントとしての仕事は非常に充実していましたが、将来のことはいろいろと考えていました。ある日、ヘッドハンティング会社から電話があり、インターネットで製造業を元気にしようとしているモノタロウという会社がCFOを探しているという話をもらいました。インターネット業界は担当したことがなかったこともあり、モノタロウは当時知りませんでした。コンサルタントとして、世の中を変えていきたいという思いがあったので、インターネットで製造業を元気にしていくのは面白そうだと思い、入社するに至りました。
人事制度の改定・行動規範の策定など、モノタロウを強固にしてきた10年
まずは、業務の標準化から着手
ーコンサルから事業会社、またしても大きな転身だったと思います。モノタロウでの仕事を教えていただけますか。
モノタロウには、2014年に管理部(当時)部長として入社し、以降、モノタロウのCFO(Chief Financial Officer: 最高財務責任者)として、経営管理、会計、人事、法務などの領域を担当してきました。入社後、最初に取り組んだのは、業務の標準化と改善サイクル作りです。2014年時点では、属人化し色々な不都合を生んでいる業務が散見されたため、業務を洗い出し、各人のマニュアルを皆で共有したり、不足するマニュアルの作成を先導したりし、ある程度揃った段階で業務のローテーションを始め、皆で改善案を出し合えるようにしました。また、当社は2013年に韓国に子会社を立ち上げたばかりであったため、事業計画を組みなおし、実績管理ができるようにしました。
ー次に取り組まれた印象的な仕事はどのようなものでしょうか。
翌年の2015年には、人事制度の改定を行いました。当時は、職位が業務職・一般職・管理職に分かれていましたが、議論を重ね、一般職(総合職に名称変更)と管理職(現在はプロフェッショナル職)の中間に基幹職という職位を設け、ステップを明確化しました。また、評価についても各部門の裁量に依るところが大きかったため、評価項目を再構成の上、自身を含めた各部門長に仕事力の成長・貢献度段階の言語化案を出してもらい、それを集約・整理・昇華する形で全社的な評価基準を作成しました。その上で、100人くらい(当時の半数)に対して試験的に評価を行い、評価基準の問題点を洗い出し、それに対処する形の修正を加え最終化しました。人事制度については、公正さが重要と考えており、今でも人材組織開発部門のチームで基準へのあてはめと部門横断での水準感をレビューし、全社的な統一運用を心掛けています。
企業理念と行動規範の策定
ーその次に進められたものはどういったものだったのでしょうか。
2015年6月に、金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード(※)」を策定し、上場企業はそれに基づく報告書の開示が必要になりました。コードが定める原則の一つに、企業理念の公表があり、当社でも作成する機運が高まりました。入社して以来、企業理念が必要という声も出ていましたが、当時は「理念がないのが、自由度が高くてよい」という考え方もありました。国内外の企業を参考にして、企業理念と行動規範をセットで作ることにしました。
ー行動規範はこの時期にできたものだったのですね。実際はどのように進めていかれたのですか?
まず、部門長主導で、各部門で議論し、モノタロウと自部門の理念と行動規範を考えてもらいました。全社に加え自部門の理念と行動規範の検討もお願いしたのは、皆が自分事として考えるためのステップとして必要と考えたからです。また単に理想を掲げただけだと本来目指すことと離れてしまうことも起こり得ると考え、考え出した理念と規範に対して、達成できていることや課題として残っていることも書き出してもらいました。
このとき、「他者への敬意」については、創業者が創業時から大事にしてきた企業文化として社内にも定着していたため、多くの部門がこれを重要視していました。さらに、「変革する」や「便利にする」という言葉も出ていました。その後、当社の価値や目指すものなど各部門で議論したものを相互比較し、再整理の上、部門長合宿で議論を煮詰め、「モノタロウの企業理念と行動規範」を策定しました。「資材調達ネットワークを変革する」という企業理念は、部門長合宿中に皆で四苦八苦するなかで、最後に鈴木さんがひねり出したものでした。
(※)コーポレートガバナンスは、会社が株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。コーポレートガバナンス・コードは、、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの。
出典:東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コード
当社初となる大規模投資
ー拠点の立ち上げには、どのように関わられたのでしょうか。
2017年、茨城県笠間市に物流センター(現 笠間ディストリビューションセンター)を開設しました。85億円もの資金を投資して、自社で土地を購入し、倉庫を建設するのも初めてで、自動搬送型ロボットを導入するのも初めてのことでした。当初は、自社物件とするか、他社からリースするかの議論もありました。当社として大きな投資であったため、投資対効果も含めた投資の検討と承認のプロセスを取締役会で丁寧に踏んでいきました。
1on1ミーティングを制度化
ー1on1もこのころに導入されたのでしょうか。
はい、2017年には、1on1ミーティングの制度化を行いました。創業の頃より奨励されていたようですが、実際の実施と内容は部署に任されており、会社としての制度にはなっていませんでした。各従業員の成長支援の意味もあり、週報との違いも整理したうえで、全社の制度として定期的に実施することにしました。
前年比 売上高成長率が12.5%(連結)となった2023年
ー近年の大きな取り組みについても教えてください。
2023年の下半期は、売上高成長率が前年比12%台になりました。今まで20%前後で成長してきたので、社内にも動揺があったかもしれません。それと前後して、当社の親会社にあたる米国グレンジャー社が、市場規模を精緻に算定したうえで戦略を立てていると知りました。広大でつかみにくい市場を前に、あたかも飽和が始まった前提で様々なところに目移りして迷うより、市場の中身をしっかりと把握して事業を進めていくことで成長を加速していけると考えました。
当社が事業を行う間接資材の市場規模は5~10兆円と推定していて、当社の市場シェアは数%でまだまだ市場攻略の余地はあるはず、それを確認するためにもさらなる市場の理解が必要でした。当社の商品売上と顧客売上をマクロ経済データの粒度に紐づけたうえで、グレンジャー社の力を借りて、マクロ経済データを組み合わせて商品カテゴリーの軸と顧客の産業と規模の軸で市場規模を算出し、どこに当社の成長余地があるのかを分析しました。
管掌する商品・コーポレート領域の今後について
商品(商品部門、商品開発部門、デジタルマーチャンダイジング部門)領域の方向性
ーこれからの話についてもお聞かせください。まずは商品系の領域からお願いします。
更なる品揃えの拡充、探しやすく選びやすい売場作り、確実・早い納期への改善等を通じて、お客様への利便性を高める取り組みを行っています。現在、当社では約2,300万点の商品を取り扱っています。どこに品揃えを拡充する余地があるのか計画的に取り組んでいく必要があります。当社のお客様の大半は事業者ですので、事業者が必要とする商品をさらに分析して、品揃えを拡充していきます。データを見ると、売上が拡大する商材の傾向も変わってきています。当社の限られたリソースを効果的に投入し、品揃えの拡充を通じて、お客様の利便性を高め、当社の事業成長につなげていきます。
今後は、より詳細なお客様理解が必要だと感じています。各業界のそれぞれの立場のお客様の困りごとを当社が想像・理解して、どのような売り場作りをしたらお客様の困りごとを解決できるかを考え、売り場(ウェブサイト)を進化させていくことが必要です。プライベートブランド商品については、品質を作りこんだうえで、訴求ポイントや適正価格をしっかりと考え、ブランドの認知と全体の売り場作りに注力することで販売を伸ばして行きたいと考えています。近年は商品に加えて、新サービスの提供にも力を入れています。今年は、棚や作業台を組み立てるサービスやコンテナ・パレットへの社名等の印刷サービスの提供を開始しました。間接資材の購買に加え、その前後に必要となるサービスも提供していくことで、お客様の時間価値創出を拡大したいと考えています。カテゴリーごとの市場特性に合わせた商品やサービスを提供し、お客様に認知してもらえる施策を実行し、さらにそれらを改善していくことで、今後も力強く成長していけると考えています。
コーポレート(経営管理部門、人材組織開発部門)領域の方向性
ー管理系の領域についても、教えてください。
当社の今後の成長を考えたとき、利益・キャッシュを生み出していくための経営管理をしっかりと行っていくことに加え、生み出した利益・キャッシュを、世の中の変革とさらなる当社事業の成長、従業員の自己実現、当社に投資していただいている株主への還元への配分を含め、どう振り分けていくかを考え、実行していくことが非常に重要です。また、多様性から革新的・創造的な発想を得てイノベーションを起こし、さらなる会社の成長を実現し産業社会全体の発展に貢献していくため、人事制度なども当社の成長とともにアップデートし、従業員一人ひとりが今後も主体的に挑戦を続け活躍していける仕組み作りに取り組んでいきます。
最後に一言
ー今後モノタロウで働くことを検討されている方に向けて、一言メッセージをお願いできますか。
私は、弁護士、コンサルタントを経験する中で、日本、世界を変え、世の中を良くすることがやりたいと考え、当社に入社しました。売上規模としては、2,500億円を超える企業に成長しましたが、間接資材市場では当社のシェアはまだ数%ですし、海外事業もこれからで、お客様の本質的な課題解決に向けて取り組むべきことはたくさんあります。自身の強みを最大限に活かして、課題と向き合い、日本、世界を変え、社会の発展に貢献したい方と一緒に仕事をして、当社を通じて、世の中を変えていきたいと思います。