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モダナイズの実現へ。データベースエンジニアが見据える、これからのシステムと組織
今回は、データベースエンジニア組織へのインタビュー記事です。
2022年に、ECサイト「monotaro.com」を支えるインフラ組織に関するブログをリリースしたところ社内でもインパクトがあり、特に「データベースエ
ンジニアが一人体制」という点に議論を呼びました。
そこから組織体制が変化し、
https://note.com/monotaro_note/n/n06d10c6a6e3b?magazine_key=m3b7d0c412556 で登場した中島さんをリーダーとしたチームが生まれています。そこで、これまでの変遷とこれからの展望をお聞きしてみました。(※当記事は2024年12月時点のインタビューをもとにしています)
中島さん
2020年10月入社。前職ではSIerにてネットワークエンジニアとして経験を積む。入社後はインフラエンジニアとして、ネットワークからサーバ、データベースまで幅広く活躍。
2年半で、個人も組織も進化した
ー前回のブログ記事がリリースされたタイミングでは、どのような状況だったのでしょうか。
落合さんと井上さんのインタビュー記事 が公開された2022年5月時点では、モノタロウのデータベースは主に井上さんが設計、構築、運用を担当している状況でした。私も簡単な運用や構築作業には入っていましたが、その当時はまだ1年ほどしか経験がなく、メインで担当しているとは言えませんでした。当時のモノタロウの年間売上が2,000億円に迫ろうという中で、それを支えるデータベースエンジニアがほぼ1人だけという状況は、社内でも大きな課題の1つになっていました。
ーなぜ中島さんはここにより深く携わることになったのでしょうか?
私自身は 前回のブログ でもお話しした通り「インフラを幅広く経験したい」と思っており、データベースについてもやってみたいと手を挙げて、2021年の4月頃から担当するようになりました。とはいえデータベースの設計や構築についてはほとんど知識や経験が無く、モノタロウでの業務や自宅での検証環境の構築を通じて徐々にキャッチアップしていった感じです。最初は技術的な興味からスタートしたので、この頃はまさかデータベースのチームリーダーになるとは思ってもいませんでした。
ー中島さんとしても意外な状況なのですね! モノタロウのインフラの現状と、当社システムが向かっている方向性との繋がりはどうなっているのでしょうか。
モノタロウのデータベースは主に MySQL を利用していて、現在約200台を運用しています。環境はオンプレと AWS (RDS/Aurora/EC2) が主で、データ量は数GB程度から、大きいデータベースでは数TBのものまであります。特に大きなデータベースは複数のシステムから利用されており、同じスキーマのレプリカが30台近くあったりします。
モノタロウのシステムは現在、ドメインごとの分割とモダナイズが進んでいるところです。詳しくはテックブログの 普川さんの記事 や 中尾さんの記事 を見ていただきたいのですが、組織やシステムがドメインごとに分かれたり、これまで VM 上で動いていたアプリがコンテナに移行したりしています。一方でインフラ側、特にデータベースに関してはまだモノリスな状態が続いていたり、EOL を迎えた MySQL が複数残っていたりします。今後のビジネスの成長や組織の拡大を考えた時に、データベースがボトルネックになって開発や成長が滞ってはいけないので、モノリスの解消やモダナイズ、開発しやすい仕組み作りは重要な課題だと認識しています。
ーモダナイズが進む中で、前回のブログの時点と現在と、おおよそ2年半ほどの間にどのような変化がありましたか。
アプリに関しては、当時はドメイン分割やモダナイズが本格的に始まる前で、既存環境とは別の開発用 AWS アカウントで EKS の検証をしていました。それから約2年経過し、今では複数のアプリが本番環境の EKS 上で稼働するようになっていて、インフラ担当としても変化の速さを実感しています。
データベースに関しては、現在 EOL を迎えている MySQL5.5, 5.6 を順次 8.0 に移行しているところです。これまでは「動いているものを変えるのは怖い」という漠然とした不安や、データベース担当が1人しかおらず工数が厳しいという状況があり、MySQL の EOL 対応はあまり進んでいませんでした。一方で、今はアプリのモダナイズがトップダウンで進み、データベース担当も私を含めて3人になったことで、データベース側もモダナイズに向けて進み始めたと感じています。
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データベース担当が支える、サービス成長
ー今後の方向性の中で、データベース担当としてはどのような位置づけで、どのように関わっていくのでしょうか?
普川さんの記事 にもある通り、全社の方向性としてはシステムをドメインごとに分割し、データベースもそれに合わせて分割して、異なるドメインからのアクセス方法は API として提供するという構想があります。データベースでいうと、まずは先ほどお話しした EOL 対応を全台完了させることが必要だと思っています。サポートの問題もありますが、AWS 等のマネージドサービスや運用で利用しているツール類も MySQL8.0 以上が前提になってきており、バージョンが古いとできることが大幅に限られてしまうためです。データベースのバージョンを上げるにはアプリ側の改修が必要になることも多いため、多くのチームと協力して準備していく必要があります。
次にデータベースの分割については、どのように分割するのか、分割して移行する先のデータベースの構築や運用はどうするのか、といった点が課題だと考えています。ここはインフラだけでなく、アプリ開発者とも連携しながら取り組んでいくことが必要です。例えば各テーブルをどのように利用しているかはアプリ側の要件なので、インフラだけでは整理することができません。また、単純に分割するだけだとサーバ数が増える一方なので、今の体制では運用が難しくなる可能性が出てきます。そのため、EOL 対応と並行してデータ量を削減したり、アプリ開発者にも一部権限や作業を移譲できないかといった検討をしています。
ー中島さん個人としては、そうした動きを主導する立場としてどのように感じていますか?
私としては10月からデータベースチームのリーダーになったこともあり、モノタロウの成長をデータベースの面から支えることが重要な役割だと思っています。モノタロウは現在、売上規模2,500億円で毎年10%以上成長しており、事業も組織も大きくなっていく中で、データベースの重要性も高くなっています。これだけ世の中に求められている事業で、急速に成長する環境に関われることは、エンジニアとしては大きなやりがいです。また、新しい仕組みや改善のアイデアがあれば柔軟に取り入れられるということも、やりがいに繋がっています。例えば、バックアップ/リストアの仕組みの変更や各種設定/メトリクスの可視化、新規ツールの検証~導入等、この1年程で大小さまざまな改善がありました。
ー今後の目指す姿も教えてください
データベースもモダナイズを進め、アプリとインフラの双方にとってより良いデータベースを実現することです。そのためにまずは、 MySQL の EOL 対応を2026年前半くらいまでに完了させたいです。並行してデータ量の削減、今後の構築や運用の検討を進め、その後のデータベースの分割の準備をしていきます。ここはまだ検討段階なので、実現までにどのくらいの期間がかかるかは分からないです。ただ、今後のモノタロウの成長を考えると、遅くとも EOL 対応の完了までには構想ができて、実現可能性も十分な状態にしたいと思っています。
仕事としての面白さとは
ー中島さんが、モノタロウで働くことで面白い、ユニークだと感じる点はどういったところでしょうか?
売上規模2,500億円のサービスを支える、全国でも有数の規模を持つシステムに、手を挙げれば何でも関われるところです。私が住む関西では、相当貴重な環境だと思います。
組織が大きくなると分業が進んでいくことが多いと思いますが、モノタロウでは自分のこれまでの専門性を活かすことも、全く異なる分野に挑戦することも、どちらもできます。実はデータベースチームのメンバーは全員、他のチームと兼務しているのですが、これも「手を挙げれば何でも関われる」という面がよく出ていると思います。
データベースの観点では、先ほどお話ししたとおりまだまだモダナイズや改善の真っ只中で、自分たちの手でより良いものを作っていけるところが面白いと思います。他社さんの事例を見ていると、データベースに関して高度な自動化やそれを支える組織作り等を見ることがありますが、例えばモノタロウでならどう取り組んでいくか?を考えるだけでも夢が広がります。また、現状データベースチームは3人なので、組織として今後どのように成長していくか?という面でも試行錯誤しており、技術だけでなく組織作りでも、大変ですが面白い段階だと思います。
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ー現状まだまだ3名なのですね。
はい、組織もデータベースもまだまだ発展途上といえます。どのように取り組むかを議論し、改善を実行する中で、現在の体制では十分ではない瞬間も出てくると思いますし、新たな仲間に加わっていただいたら、経験を活かしながら多くのチャレンジを共に実行いただけると思っています。
ーどういう人に仲間になってほしいですか?
最近、データベースエンジニア(MySQL)の募集要項の記載内容を更新したのですが、現状の課題を見つけて主体的に解決策を提案・実行できる、かつそれを楽しめる方に仲間になってほしいです。一方で、データベースは1つ間違えるとサービス停止やデータのロストに繋がる可能性があるため、インフラの中でも特に慎重さが求められる領域だと思います。なので、大胆さと慎重さをバランス良く兼ね備えた人が向いていると思います。
モノタロウは現在年間2,500億円以上の売上があり、それを支えるデータベースに携わることはプレッシャーもありますが、エンジニアとしては貴重な経験であり、やりがいがあります。モノタロウのデータベースについて興味を持っていただけましたら、ぜひ応募を検討いただけますと幸いです。
モノタロウでは、新たな仲間を募集しています!