2019/6/17 ピアノレコーディング&マイクテスト動画
6月17日、新作のためのピアノレコーディングをしてきました!場所は東戸塚にあるプライベートホールのSala MASAKAさん。天井が高く、響き的にもピアノ演奏に最適な空間です。オーナーさんこだわりのオーディオシステムやプロジェクターもあるので、アコースティックな演奏以外にも、3月末に開催したポスト・クラシカル的なコンサートも行えるな……と、いろいろ妄想しちゃいますね(笑)。録音したのは、前述のコンサートで初演した新曲3曲と、コンサートでは何度か演奏したものの未録音だったピアノ曲を1曲。これらはいずれリリース予定です!
さて、今回のレコーディングには、ずっと気になっていたマイクをメーカーさんや代理店さん、楽器店さんからお借りして使用したので、その記録と情報シェアを兼ねてマイクテスト動画を撮りました!
Mic Test with PETROF Piano
先入観を持って欲しくなかったので動画内でのレビューは避けましたが、ここでは各マイクや楽器の僕なりのインプレッションをまとめたので紹介しておきましょう!
Aston Microphones Spirit
・出力が大きくてセルフノイズが少ないのでS/N比が良い!
単一指向性では重心が低めで音が太く、中高域が少し明るめでボーカルやナレーションとの相性が良い。
・双指向性では単一指向性よりも中低域が少しスッキリし、音像も小さくなる印象。反響に気をつければボーカル等にも良い。
・無指向性も中低域はスッキリ整理されて明るめな印象。音像は大きく、空間的な広がりをしっかり感じられる。
・双指向性や無指向性の音色をボーカルなど声の収録に使いたい場合、同社のHalo(リフレクションフィルター)を使用すれば、部屋の反射を気にせずに録れそう。
・総じてオールマイティに使える音色だが、特に声や低音楽器に合いそう。
・カメラで例えると、JPEG撮って出しの画がすでにキレイなカメラ。
・吹かれに強く、一般的なボーカルRECならポップガード要らず。
・ローカットを入れても変に細くならない。
・オプションのサスペンションはとても使いやすく、これ単体でも欲しいくらい。(※現在は、より振動吸収性能を向上させた新型にモデルチェンジしている模様)
・クリーン系のマイクプリより、SSLやAPI、NEVE等のコンソール系マイクプリと相性が良さそう。
・RME Fireface UFXの内臓マイクプリでは、中高域がちょっとピーキーに感じた。
Aston Microphones Origin
※レコーディングでは使用したが、マイクテスト動画には未収録
・出力はSpiritよりも4〜5dBほど低いが、標準的ではある。
・セルフノイズに関してもSpiritよりやや多く、スモールダイヤフラムのマイクと同程度。
・Spiritよりも10kHzあたりの高域が張り出しているので、さらに明るく抜けの良い印象。
・抜けの良い音なので、初心者でもボーカルやナレーションをキレイに録れそう。
・Spiritよりもオンマイクで使用して近接効果(低域の増加)を利用すると良い。
・高域が目立つぶん、ローカットを入れると細く感じてしまうかも。
・ポップガード要らずなのはこちらも同様。特徴的なグリルのお陰だろう。
SONY ECM-100N
・S/N比はスモールダイヤフラムの中では優秀。
・とにかくフラットでナチュラルな印象。Astonのマイクと比べると地味に感じるかもしれないが、楽器の音を忠実に録るという用途にはかなり適している。
・スペクトラムアナライザーを使ってリアルタイムに周波数分析をしたところ、40kHz以上までしっかりと拾っている点は、他のマイクには見られないハイレゾ対応たる所以。
・カメラで例えると、RAWで撮っておいて、現像時に好みの質感に仕上げるタイプ。
・スペック上、50kHzまで拾えているようだが、前述の通り妙なハイ上がり感などは皆無で好印象!
・高精度で製造されているため、ステレオで使う場合、マッチドペアを意識する必要はない(らしい)。実際、お借りした個体に大きな差は感じなかった。
・今回は後述するPAU AUDIOのマイクプリを使用したが、RME Fireface UFX内蔵のマイクプリを使用すると、低域〜中低域がスッキリして高域が明るく感じるため、ハイファイな印象になる。オフマイクとして使う場合は、そういったクリーン系のプリアンプの方が良いかもしれない。
PAU AUDIO MODEL 805
※写真ラック内下段。上段はオーディオI/FのRME Fireface UFX
・密度感が高く、適度な太さと中高域のほのかなキャラ付けが印象的。メーカーが「クリーン系マイクプリとAPIの間」と表現するのも納得。今回使用したマイクに関しては、Spiritとの相性がとても良かった。
・原音忠実というよりは程よいキャラ付けがある感じなのでクラシック系の録音にはあまり使われないかもしれないが、かと言って癖が強すぎることもないので、いろいろなジャンルの録音でオールマイティに活躍してくれそう。
ペトロフ P194 Storm
ペトロフはチェコの歴史あるピアノメーカー。アルバム『Animo』収録の何曲かでアップライトを使いましたが、グランドでの録音は初めて!スタインウェイのパワフルなきらびやかさや、ベーゼンドルファーの繊細な華やかさとも違う、木の響きが感じられる優しく温かな音色が特徴でとても僕好みなんです。今回もペトロフの専門店 ピアノプレップさんによって、さらに僕好みに調整していただきました♪ 僕はここ数年でソフトペダル(ウナ・コルダ)を多用するようになったので、踏んだときの音色は重要!甘く柔らかな……けど、ぼやけすぎない感じに仕上げてもらってます。踏んでないときの音色も硬すぎない感じで(きらびや過ぎるのは苦手なので)、ウナ・コルダ時と合わせて音色のパレットが広く、かつ選びやすい感じで、ここまでしっかり調整してもらえると、こちらも表現欲を掻き立てられて、良いテイクが録れるってもんです!素晴らしい!!チェコのペトロフ本社をして「本国のピアノより音が良い!」と言わしめたのもうなずけますね(笑)。ピアノは鍵盤やアクションの狂いを整えたり、整音・調律によって驚くほど印象が変わります。演奏家がストレスなく音楽を表現できる状態を作り、時にはその表現の幅をさらに広げてくれるような音作りをしてくれるピアノ技術者という存在は、ピアノにとっても演奏家にとっても、とても重要な存在だなと痛感しました!!
【レコーディング機材一覧】
PC:MacBook Pro 15インチ(Early 2013)
DAW:Pro Tools 2019.5
オーディオI/F:RME Fireface UFX
マイクプリ:PAU AUDIO Model805
マイク:ASTON MICROPHONES Spirit ×2 , Origin ×1
SONY ECM-100N ×2
マイクとマイクプリを手配してくださった宮地楽器 RPMのSさん、Roland プロAV営業部のKさん、ありがとうございました♪
フォトギャラリー
最後にレコーディング時の写真をいくつか。曲によってマイクの立て方などを変えて、望む音が録れるようにいろいろ工夫するのは楽しいものです。ただ、エンジニアリングと演奏を自分でやると時間かかるし大変なんですけどね(汗)
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