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モノの図書館の今。2024年時点の調査レポートをご紹介(後半)

こんにちは。モノの図書館研究所の佐藤です。
今回は、2024年時点のモノの図書館の現状に関して、Shareable(共有をテーマにした非営利のWebメディア)がまとめたレポートの紹介、後半です。ここで紹介されるデータは、11カ国82箇所のLoTを対象としたアンケートの結果です。前半はこちら

ソースはこちら
https://www.shareable.net/new-report-the-state-of-libraries-of-things-2024/

LoTの法的形態:NPO法人が最多(73%)、ついでその他(11%)

LoTの多くは、非営利団体として開始の後法人化する形態を取っているようです。その他としては、公共図書館の一部や法人化していない組織が含まれています。一方で、アイスランドには非営利組織というステータスがないようで、株式会社として登録されているとのこと。(Munasafn RVK Tool Library,Reykjavik, Iceland)

LoTの年間予算:$14,999未満が最多(55%)、ついで$30,000-49,999(18%)、$100,000以上(13%)

LoTの半数以上は、年間$50,000未満が8割を占めます。

LoTが契約する保険会社:地域によって異なる。アメリカはNonprofit Insurance Alliance、Philadelphia Insurance Company、Hiscox
が多く、イギリスではNaturesave、オーストラリアはQBE、LGIS

保険会社は地域ごとに異なり、ニュージーランド、チェコ、スロベニア、スイス、アイスランドのLoTは加入していないか加入手続き中とのこと。

United States:
• Nonprofit Insurance Alliance (x6)
• Philadelphia Insurance Company (x4)
• Hiscox (x2)
• State Farm
• Great American
• Philadelphia for Tool Library property and liability, Great American for Board policy. • Auto Owners (Liability), Superior Point (Workers Comp) in Saint Paul
• Cincinnati, Markel, and Auto-Owners
• Risk Placement Services, LLC
• Solomon Insurance
• Meaders, Adams & Lee (local provider in Little Rock)
• Mesa Underwriters Specialty
United Kingdom:
• Naturesave (x3)
• Keegan & Pennykid (x2)
• Victor - Third Sector Policy • Mid Cornwall Brokers Ltd
• Wessex Insurance
• Aviva
Australia:
• QBE (x2)
• LGIS (x2)
• Aon
• Keystone
• LCIS Australia - Insurance For Nonprofits
Canada:
• Co-operators • Intact
• SGI
France: • Maif

LoTの年間保険料:$1,500-2,000が最多(30%)、ついで$500以下(19%)

概ね年間$2,000以下が大半を占めるようである。

LoTの加入条件:一般公開が最多(68%)、ついで居住地ごと(15%)、組織ごと(5%)

LoTの大半は一般市民に開かれているが、15%は居住地や会社、学校などの他の組織への所属を条件にし、入会に何らかの制限を設けているようです。公共図書館の会員になっていることも条件に含まれます。

LoTのアクティブ会員の人数:250-499人が最多(20%)、ついで20-99人(19%)、100-249人(19%)、1,000人以上(17%)

LoTの会員数はばらつきがあり、概ね1,000人未満で8割を占める。

会員獲得の手段:口コミが最多(46%)、ついでSNS(24%)

口コミが主となるものの、SNSでの告知も次いで多い。facebookコミュニティに定期的に投稿を行っているとのこと。

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LoTへの金銭的な負担:年会費が最多(36%)、ついでその他(33%)

一部(19%)を除き、何かしらの金銭的負担は行われている。年会費や寄付などである。寄付の場合の多くは、$10-$40

LoTの年会費:段階的が最多(37%)、ついで$20未満(18%)、$20-$50(18%)

多くは段階的会費を設定している。また、奨学金や割引制度を設けている施設もあるようだ。

LoTの財政維持方法:会費が最多(26%)、ついで補助金(23%)、寄付(18%)

LoTは財政を維持するために、会費、補助金、寄付金に最も多く依存している。

LoTで取り扱う主なアイテムの種類:ツールが最多(42%)、ついで一般的なLoT(18%)、キッチン用品(11%)、アウトドア/スポーツ用品(9%)

LoTで最も多く取り扱われるのがツール(道具)である。主にはDIYで用いられるような道具が多い。その他には、園芸用品やパズル、ゲーム、教材、趣味の道具、耐久性のある医療機器、種子などがある。

LoTで提供するアイテムの選び方:個人からの寄付が最多(31%)、ついでスタッフやボランティアの選択(22%)、会員への調査(15%)

LoTで提供するアイテムの選び方としては、個人からの寄付が最多であるが、以下のような条件も加味される。
・人気アイテムや会員からのフィードバック、要望
・高価で保管が難しく、地元のレンタル会社と競合しないもの
・保険でカバーされるもの
・需要があるものの、これまで寄付されていないもの
・投票形式
など

LoTのアイテムの入手方法:個人からの寄付が最多(36%)、ついで購入(31%)、機関からの寄付(16%)

個人からの寄付が最多で、ついで中古品の購入が続く。または、修理のような形で廃棄物になってしまったものを転換する方法もある。
How do LoTs obtaion the items in their inventory?

LoTが取り扱うアイテム数:100-499が最多(39%)、ついで500-599(21%)、1,000-2,499(17%)、2,500以上(16%)

100-499が最多であるものの、1,000以上のアイテムを取り扱うLoTも30%近くあり、品数は豊富なLoTが多い。

LoTの平均的な貸出数/月:50件未満が最多(38%)、ついで100-249(16%)、250-499(13%)、50-99(13%)

50件未満が最多だが、50-1,000までの範囲が最もボリュームゾーンのようである。

在庫の管理方法:ボランティア技術者が最多(69%)、ついで有給技術者(19%)

多くのLoTがボランティア技術者によって、在庫の管理を行っている。

用いられるソフトウェア:myTurnが最多(79%)、ついでその他(11%)

myTurnが圧倒的に高いシェアのようである。その他では、内部で構築したシステムや図書館で用いられるシステムの改修などで行われている。

ソフトウェアのコスト/年間:$20未満が最多(39%)、ついで$200-$500(29%)、$500-$1,000(18%)

在庫管理・会員管理ソフトのコストとしては、年間$20未満が最多。一方半数程度は、$200/年以上は負担しているようである。

以上LoTの現状に関するレポートの紹介でした。LoTは小規模でスタートできるシステムである一方、大規模にも行えるシステムでもあるのですが、先行研究によれば財政問題はどのLoTでも課題とされています。*1 現状では補助金、会費、寄付に依存する形態での運営がほとんどであるため、拡大型のLoTのような形態や、新潟県三条市で行われているような公共型でも地域産業振興やシビックプライドの醸成などの別の文脈を組み合わせた新しいLoTの形が必要になってくるかもしれません。今後も追いかけていきたいと思います。

*1 Access Over Ownership: Case Studies of Libraries of Things,Denise Baden,Ken Peattie,Adekunle Oke


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