
日本の自治体が行っているモノの図書館
こんにちは。モノの図書館研究所の佐藤です。
前回の記事(https://note.com/mononotoshokan/n/n7b2b209ae0d5)でも少し触れたのですが、実は自治体でも部分的にモノのレンタルを行っているという話を聞いていたので、この機会に日本の自治体で行われているモノの図書館(図書館とまで言えるか微妙であるが、、、)について調べてみました。
教育関連、福祉関連、スポーツ関連、選挙関連の4カテゴリ

調べてわかったことは、自治体が貸出を行うモノの種類は大別して教育関連、福祉関連、スポーツ関連、選挙関連であることがわかってきました。
とりわけ多くの自治体で提供しているのは、福祉関連で車椅子や介護用品、ベビー用品、子育て用品、イベント用品で、地元の社会福祉協議会が主体となって貸出を行っています。
調布社会福祉協議会
富津市社会福祉協議会
利府町
(他にも沢山あるのですが、今回は割愛します。)
教育関連は、スポーツ関連のモノと重複する部分もあるのですが、主に地元の地域の歴史的な教材(例えば出土品や、書物、昔の暮らしで使われていた道具etc)が多くの自治体で貸し出されているようです。あとは子どもの調理器具なんかも貸し出している自治体もあります。

春日部市
鳥取県
白山市
三田市(ペタンク、スラックライン、モルックなどニュースポーツの道具の貸し出し!)
(他にも沢山あるのですが、今回は割愛します。)
また、多くの自治体で選挙用品の貸出も行っているようです。これは教育関連に含めても良いかもしれませんが、学校などで教育の一環で使用されたりするのでしょう。
江東区
武蔵野市
たまに変わり種のモノの貸出を行っている自治体もある。キャンプ用品やレク用品など

多くの自治体は福祉的な意味合い、教育的な意味合いが強いモノの貸出なのですが、まれにキャンプ用品やレク用品などの特徴的なモノの貸出を行っている自治体もあります。
武蔵野市野外活動センター キャンプ用品
宜野湾市 レク用品
ただ、調べきれている訳ではないので、様々なテーマの第3セクターでの貸出も行われているのかもしれません。ここは追加でリサーチが必要そうです。
借りることのハードル
調べてみて総じて感じたのは、借りることのハードルの高さです。事前に申請書を記入し、何ヶ月も前から申し込みをする必要があること。取りに行くのも特定の場所に行く必要があること(借りたい人からしたら遠方の可能性がある)審査があること。抽選の場合もあること。など、取り決めが多く、借りてからするとハードルの高さは拭えないと感じました。
先行研究の中で、Ameli(2017)*1は道具を借りる時の提供者の信頼性が重要であることを述べています。”誰が”貸してくれるのか、です。その点において、自治体が貸してくれることへの信頼性は高く、住民も借りたいと思うと考えられます。しかし、同時に借りる際の利便性についても言及しています。品揃えがあること、簡単に借りられること、費用がかからないこと、アクセスしやすいこと、などの複数の利便性要件が必要であると述べています。これは私も同じ考えで、仮に無料で借りられるとしても、申請に手間がかかったり、遠方であったりしたら、自分だったら借りないと思うんですよね。借りざるを得ない場合を除いて、購入するなのか別の簡単な手段を選ぶのではと思います。(ここは実は私の本丸の研究領域で、実証研究を進めています。結果について後日どこかで公表できたらと思います。)
とはいえ、現時点で福祉の観点や教育の観点でモノの貸出が行われている受け皿があることが、モノの図書館を日本で導入する一つの手がかりになりそうにも思いました。福祉の観点で、モノの種類を拡張する。教育の観点で、モノの種類を拡張する。借りる手段を、図書館カードのような簡単な方法で、できれば住民が住んでいる近場で借りられるようなシステムにできれば、少しずつ浸透していけるのでは、と思いました。今回はここまで。
*1 Najine Ameli,Libraries of Things as a new form of sharing. Pushing the Sharing Economy,2017