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インタビュー田原町15 『対馬の海に沈む』を書いた窪田新之助さんにききます



2/15㈯19:00~21:00

浅草・Readin’Writin’ BOOK STOREにて
「インタビュー田原町15 『対馬の海に沈む』を書いた窪田新之助さんにきく」
 
ノンフィクションの書き手に「取材して書くこと」について訊いてきた「インタビュー田原町」の15人目のゲストは、『対馬の海に沈む』(集英社)で昨年第22回開高健ノンフィクション賞を受賞されたジャーナリストの窪田新之助さんです。
 
「後で分かったことですが、どうやら私の真後ろを走り抜けたようで、あやうくひかれるところだったとですよ」

課せられたノルマに四苦八苦する職員が多い中で、毎年全国一位の成績を維持。「俺の軍団」を率い、JAのトップセールスマンとして表彰されてきた男が、車ごと海に飛び込んだ。
2019年2月に起きた「事故」の背景を調べてゆくノンフィクションで、冒頭の証言は事故現場に居合わせたひとのものだ。「だけん、運転席にいた男性の顔がフロントガラス越しにはっきり見えたですよ」という。

『対馬の海に沈む』は映画の一場面をおもわす目撃者との会話から始まる。
序章から終章にいたるまで、窪田さん自身が取材し、目にしたものと、直に聞いた話で構成されている。証言から場面を視覚的に膨らませるという描写手法はストイックに避けられている。一方で、方言のイントネーションをいかした会話がいきいきとしていることが特色だ。
 
亡くなったのは、「JA対馬」の正職員で、共済保険などの販売をしていた西山義治(享年44歳)さん。人口3万あまりの島で、2位を圧倒的に引き離す全国トップの実績をあげ、プロ野球選手ほどの年収を得ていたという。
なぜ、過疎化の進む島で「JA全国一」の実績をあげることが可能だったのか?
死後に発覚した20億円を超える「不正」の実態とは?

何のツテもないまま、島をまわり、自死の背景を探りだしていく。窪田さんの武器は、フリーランスになる前職、JAの関連新聞社の記者としての蓄積だ。
オーソドックスな足を使った取材で驚かされるのは、故人の両親、妻やその両親をはじめ、島のひとたちが突然の来訪者によく話している。
母親は、西山さんが全国のJAの講演会に呼ばれるなどした際には欠かさず「とらやの羊かん」を土産に買ってくる優しい子で、「あん子は、とにかくあちこちの美味しいものを食べさせてくれましたよ」と話す。
読者として、些細だが人となりがわかるこうした声に耳を傾ける。

ある人は、フィギュアやウィスキーなどの「投資目的」のコレクターだった一面を「あいつの自宅は警備や防災のために、アルソックだったかセコムだったかに入っていたもん」と話す。
口を閉ざすものもいるが、なぜこうも取材で訪ねてきた著者に詳しく逸話を語るのか。不思議におもいながら頁を繰るのだが、疑問に対する答えらしきものが後半、見えはじめる。
とともに、すべてを抱え込んだまま亡くなったトップセールスマンの評伝ルポルタージュとして読めるのも特色だ。

私事ながら、本書を読み、JAに勤めていた学生時代からの友人が、毎年冬になると信州のりんごを贈ってくれていたのを思い出していた。いつしかわが家では「佐藤くんのりんご」と呼ぶようになっていたが、そもそも彼の郷里は四国。ミカンでなくなぜリンゴなのか。「いろいろ、あるんよ」というだけだったが、本書で遅まきながら長年のナゾが解けた。

インタビュー田原町では本書の取材現場の様子と、一種ミステリー的にも読める構成の仕方について具体的にきけたらと考えています。
ぜひぜひ。
 

■日時 2025年2月15日㈯ 18:30開場/19:00開演~21:00(質問タイムあります)
■会場 Readin’Writin’ BOOK STORE(東京都台東区寿2丁目4−7 地下鉄銀座線「田原」駅下車2分)
※会場参加のみ、オンライン配信はありません。
■チケット
〇一般参加券/1500円
〇リピーター割引券(会場参加したことのあるひと)/1200円
〇応援してやるぞ券(カンパ込み)/2000円
申し込みは↓

 
ゲスト
窪田新之助(くぼた・しんのすけ)さん
1978年福岡県生まれ。明治大学文学部卒。JAグループの「日本農業新聞」記者として農政や農業生産の現場を取材。2012年よりフリーランス。著書に『農協の闇(くらやみ)』(講談社現代新書)、『データ農業が日本を救う』(集英社インターナショナル)、山口亮子氏との共著に『人口減少時代の農業と食』(ちくま新書)、『誰が農業を殺すのか』(新潮新書)など。

聞き手
朝山実(あさやま・じつ)
1956年兵庫県生まれ。フリーランスのライター&編集者。著書に『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社)、『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店)、『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP)。編集本に『「私のはなし 部落のはなし」の話』(満若勇咲著・中央公論新社)、『きみが死んだあとで』(代島治彦著・晶文社)など。
 
 

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朝山実
脱落せずお読みいただき、ありがとうございます。 媒体を持たないフリーランス。次の取材のエネルギーとさせていただきます。